マンションは一戸建てより固定資産税が高い傾向がありますが、いくつかの軽減措置が設けられ、適用されれば一定の期間にわたり固定資産税が軽減されます。
新築のマンションと中古マンション、現在居住中のマンションの固定資産税が軽減される措置をご紹介し、主な適用条件を解説しましょう。
新築のマンションには「新築された住宅に対する固定資産税の減額」が適用される
はじめに、新築のマンションに適用される固定資産税の軽減措置をご紹介しましょう。
一定の条件を満たす新築のマンションを購入すると「新築された住宅に対する固定資産税の減額」という軽減措置が適用されます。
同軽減措置が適用されれば、はじめて固定資産税が課されることとなった年度から5年度にわたり、一戸部分の床面積の120㎡までの部分にかかる固定資産税が2分の1に軽減されます。
マンションを購入すると、借地権などではない限り「一戸部分」と「土地の持ち分」を所有することとなり、それぞれに固定資産税が課されますが、同軽減措置が適用されることにより軽減されるのは一戸部分の税額のみです。
「新築された住宅に対する固定資産税の減額」の主な適用要件は、以下のとおりです。
- 令和四年四月一日から令和六年三月三十一日までの間に新築されたマンションを取得した
- 「取得した一戸部分の床面積」と「そのマンションの共用部分の床面積を、そのマンションの専有部分の床面積の合計に占める取得した一戸部分の床面積の割合で按分した面積」の合計が、50㎡以上280㎡以下である
2番目の条件が難解ですが、床面積が50㎡を超える一般的なファミリー向けのマンションを購入すればおおむね満たします。
反対に、「戸数が少なくエントランスや廊下が広い超高級マンション」や、「単身者向けのワンルームマンション」を購入した場合は満たさない可能性があります。
2番目の条件を満たすか正確に計算するには、以下の3つのデータを揃えなければなりません。
- 取得した一戸部分の床面積
- そのマンションの専有部分の面積(各戸内の床面積)の合計
- そのマンションの共用部分(廊下や階段、エレベーターホール、バルコニーなどの部分)の床面積の合計
上記の3つのデータが揃えば、「2(そのマンションの専有部分の面積の合計)」に占める、「1(取得した一戸部分の床面積)」の割合を求めます。
たとえば、「2(そのマンションの専有部分の面積の合計)」が1,500㎡、「1(取得した一戸部分の床面積)」が70㎡であれば以下のように計算し、その答えは4.6%です。
70㎡÷1,500㎡×100=4.6%
上記の答えを、これ以降「A%」とします。
つぎに、「3(そのマンションの共用部分の床面積の合計)」の「A%」を計算します。
例を挙げると「3(そのマンションの共用部分の床面積の合計)」が250㎡、「A%」が4.6%であれば以下のように計算し、その答えは「11.5㎡」です。
250㎡×4.6%=11.5㎡
上記の答えを、これ以降「B㎡」とします。
最後に、「1(取得した一戸部分の床面積)」と「B㎡」を合計します。
計算例を挙げると、「1(取得した一戸部分の床面積)」が70㎡、「B㎡」が11.5㎡であれば以下のように計算し、答えは「81.5㎡」です。
70㎡+11.5㎡=81.5㎡
上記の答えが「50㎡以上280㎡以下」であれば、先にご紹介した2番目の条件を満たします。
難解ですが、「取得した一戸部分の床面積と、そのマンションの共用部分に占める自分の持ち分の合計が、50㎡以上280㎡以下であれば条件を満たす」などとお考えになれば良いでしょう。
なお、「新築された住宅に対する固定資産税の減額」は、申告をせずとも適用されます。
ただし、認定長期優良住宅に該当する新築のマンションは、申告をすることにより軽減措置の適用期間が7年に延長されるため留意してください。
認定長期優良住宅とは、75年から90年の耐久性があるように設計された住宅であり、市町村役場などの所管行政庁から「認定長期優良住宅であることの認定通知書」の交付を受けた住宅を指します。
中古マンションや現在居住中のマンションには「リフォーム減税」が適用される
つづいて、中古マンションや現在お住まいのマンションの固定資産税が軽減される措置をご紹介しましょう。
中古マンションや現在居住中のマンションの固定資産税が軽減される主な措置は、「リフォーム減税」です。
リフォーム減税とは、一定の条件を満たす耐震リフォーム、省エネリフォーム、バリアフリーリフォーム、長期優良住宅化リフォームなどを行うことにより、最大140万円の所得税が軽減される制度であり、極わずかですが固定資産税も軽減されます。
各リフォームを行いつつ固定資産税が軽減される条件を簡単にご紹介すると、以下のとおりです。
昭和57年1月1日以前に新築されたマンションに、現行の耐震基準を満たすようにする耐震リフォームを実施した
省エネリフォーム
平成26年4月1日以前に新築されたマンションに、既存の窓を断熱性の高い窓と交換するなどの省エネリフォームを実施した
バリアフリーリフォーム
65歳以上の方や、要介護認定を受けている方がお住まいの築10年以上のマンションにバリアフリーリフォームを実施した
長期優良住宅化リフォーム
耐震リフォームまたは省エネリフォームと共に、スラブ部分(コンクリートの床部分)に埋設されている給排水管を容易に交換できるようにするなどのリフォームを実施した
上記などの条件を満たすリフォームを実施し、市町村役場に必要書類を添付した申告書を提出すればリフォーム減税が適用され、リフォームが完了した年の翌年の固定資産税が2分の1や3分の2などに軽減されます。
軽減されるのは、一戸部分の床面積に占める100㎡や120㎡までの部分の固定資産税のみであり、土地の持ち分の固定資産税は軽減されません。
なお、リフォーム減税には、注意すべき点があります。
先にご紹介した一定の条件を満たすリフォームを行えば、リフォーム減税により固定資産税が軽減されますが、軽減される額は極わずかであり、リフォーム費用に見合いません。
たとえば、マンションに耐震リフォームを実施するためには、一棟全体に耐震補強工事を行う必要があり、数千万円などの高額な費用がかかりますが、固定資産税の軽減額は、多く見積もっても一戸あたりにつき数万円程度です。
さらに、耐震リフォームを実施すれば、市町村役場からマンションの時価が上がったとみなされ、リフォーム前より固定資産税が増額する可能性があります。
よって、リフォーム減税の活用を検討する際は、固定資産税より所得税を軽減することを目的として制度をご利用ください。
リフォーム減税を活用すれば、先述のとおり最大140万円の所得税が軽減されます。
マンションの土地の持ち分には「住宅用地の特例」が適用される
おわりに、新築のマンション、中古マンション、現在お住まいのマンションの土地の持ち分の固定資産税が軽減される措置をご紹介しましょう。
マンションの土地の持ち分には、「住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例」という軽減措置が適用されます。
同軽減措置は「住宅用地の特例」などと呼ばれる措置であり、マンションを含む住宅が建つ土地に適用され、適用されればその土地の固定資産税が大きく軽減されます。
ここで、土地(マンションの土地の持ち分を含む)の固定資産税の計算式をご紹介します。
課税標準×固定資産税の税率(主に1.4%)=固定資産税
式に含まれる課税標準とは、なにかしらの税金が課される状況において税率を掛け算する基となる額であり、課される税金によって意味が異なります。
土地の固定資産税の計算式に含まれる課税標準は、「その土地の固定資産税評価額」です。
「その土地の固定資産税評価額」とは、市町村によって評価された「その土地の適正な時価」であり、土地の固定資産税評価額は実勢価格の70%程度になるのが通例となっています。
たとえば、実勢価格が1,500万円の土地であれば「1,500万円×70%=1,050万円」と計算し、1,050万円が固定資産税評価額になるといった具合です。
固定資産税評価額が1,050万円の土地であれば以下のように計算し、その土地に「住宅用地の特例」が適用されなければ、固定資産税は14万7,000円です。
課税標準(固定資産税評価額である1,050万円)×固定資産税の税率(主に1.4%)=14万7,000円
これに対して、同じく固定資産税評価額が1,050万円の土地に「住宅用地の特例」が適用されれば、その課税標準は固定資産税評価額の6分の1などとなり、以下のように計算しつつ固定資産税は2万4,500円となります。
課税標準(固定資産税評価額である1,050万円の6分の1の175万円)×固定資産税の税率(主に1.4%)=2万4,500円
住宅用地の特例が適用されれば、課税標準が固定資産税評価額の6分の1などに軽減され、固定資産税が大きく減額されます。
そして、マンションの土地の持ち分は、申告をせずとも住宅用地の特例が適用され、新築マンション、中古マンション、現在お住まいのマンションを問わず、全てのマンションの土地の持ち分にかかる固定資産税は軽減されます。
ちなみに、私が運営するサイト「固定資産税をパパッと解説」では、建物の固定資産税が軽減される措置ばかりをご紹介するコンテンツ「建物の固定資産税の軽減措置を紹介」を公開中です。
同コンテンツでは、令和5年4月1日から令和7年3月31日の2年間に限り適用される、「大規模修繕を実施したマンションの固定資産税が軽減される措置」などもご紹介しています。
固定資産税の軽減措置をお調べの方がいらっしゃいましたら、ぜひご覧ください。それではまた次回の更新でお会いしましょう。不動産のあいうえおでした。