誰かがやらなければならない仕事、人は使命をもって立ち向かわなければならない仕事があります。
「特捜最前線」とは、テレビ朝日・東映の製作によりテレビ朝日系列で1977年4月6日~1987年3月26日まで全509話放送されていました。
東京総合ビル33階の一室に置かれた警視庁特命捜査課(通称「特命課」。架空の部署)に所属する、刑事たちの捜査活動と人間ドラマを二谷英明さん主演で描き、取り上げられる事件は「行方不明になった子どもの捜索」から「特殊爆弾によるテロ」まで幅が広いものです。
ファンからは「特捜」と呼ばれています。
さて、新型コロナウイルスの感染拡大防止と除染において、「特殊清掃」と呼ばれる業者の技術が注目されています。
特に多くの感染者を出したクルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号。すでに乗客は全員が下船していますが、今でも横浜・大黒埠頭に停泊したままになっています。その船内では24時間体制で清掃・消毒作業が実施されているとのことです。
清掃作業の請け負っているのは米国ベルフォア社。2011年の東日本大震災での活動など世界各地で災害復旧作業を専門に扱うグローバル企業です。日本国内からも、除菌作業・特殊清掃作業を行なっている企業や派遣会社などからスタッフも参加して、約150人体制で作業に当たっているとのことです。なお、今回の除染作業に参加している日本企業は新型コロナウイルス感染者を出した商業施設の除染作業も、すでに2例実施した実績を持っているそうです。
ダイヤモンド・プリンセス号は全長290m、総客数1337室、16階建て。船内のタオル類、寝具、マットレス、シャワーカーテン、ゲーム機器などのおもちゃ類や本などすべて処分され、新しいものと交換される予定だそうです。
特殊清掃とは一般に、「Crime Scene Cleaners」などとも呼ばれる清掃を指すことが多く、事件、事故などによりダメージを受けた現場の原状回復や原状復旧業務を指します。
元々は事件、事故の多い米国で特殊清掃の概念が生まれ、その現場の特異性から特殊清掃サービスを提供する会社は、高度な専門知識が要求され、「臭気判定士」「医療環境管理士」「防除作業監督者」「1級葬祭ディレクター」などの有資格者もしくはこれらと同等のスキルが求められます。また、緊急性が高い場合が多いため、24時間365日対応するサービスが多いそうです。
また、完全な感染症対策が求められるリスクを伴う現場にはゴーグル、特殊清掃用のマスク、全身防護服を着用して作業し、次に使う人が安全に安心して使える高度なクリーニングが求められるとのことです。日本では2011年には約100社であった特殊清掃業者数は約6000社まで増えています。
そのような現状において、ダイヤモンド・プリンセス号の除染依頼は特殊清掃のノウハウを期待されてのことでした。また、実際の作業については、米疾病予防管理センター(CDC)、世界保健機関(WHO)と厚生労働省が決めた除染手順に則って、特殊な薬剤を使って徹底的に洗浄しているとのことです。
ただ、そうはいってもダイヤモンド・プリンセス号の除染作業については感染のリスクもあり、入船前には半日ほどかけて防疫の教育がなされてはいるものの、「新型コロナにかかったら、かかった時に考えよう」という気構えで作業しているそうです。
さて、3月上旬からベルフォア社が船内の清掃と消毒作業を実施していたダイヤモンド・プリンセス号が消毒を終え、3月24日に横浜港の別の埠頭に移動し、5月16日から運航再開を予定しているそうです。
あくまでも、陽の当たらない縁の下の力持ちではありますが、担っていることは重要な業務であり、私たちが安全に暮らせているのも、「特捜」ならぬ、「特掃(特殊清掃)」のおかげのところもあります。