高校野球では試合開始前と試合終了時にサイレンが鳴ります。
また、これ以外にも試合前のシートノックの開始、終了時にもサイレンが鳴ります。
これは基本的にどこの球場であっても同じことです。
プロ、社会人、大学野球ではサイレンは鳴りません。学童野球でも。
中学野球では球場や大会によって、鳴ったり鳴らなかったりしますが、それほど深い意味は持っていないと思います。
球場にいても、いなくてもラジオやテレビから聞こえて来るサイレンの音を耳にすると高校野球を思い浮かべたりします。
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試合前のシートノック、プレーボール、ゲームセット、そして、8月15日の正午。
ウグイス嬢の手によって小さな四角いボタンが押される。
「押すときは緊張します。遅れないように、球審の手を見ながら」
代々受け継がれるコツがある。
たとえば、試合開始と終わりは「ゆっくり7秒」。
1、2、3…心の中で唱えながら、指先に力を込める。
練習の成果を出せますように。エラーで試合が決まりませんように。
甲子園にサイレンが鳴るのは、主に春と夏の高校野球だけだ。
プロ野球の試合では使われていない。
高校野球草創期の、ラジオ中継すらない時代。
始まりと終わりを知らせるには、大きな音を出すしかなかった。
次の試合に備える応援団、お弁当屋さん、駅員…
球場にかかわるすべての人が、あの音を頼りにしていた。
しかし、サイレンが鳴らない時代があった。
昭和12年の第23回大会は戦乱が始まった直後に開会。
試合の開始、終了はサイレンに代わる進軍ラッパが知らせた。戦火は次第に拡大。
4年後の地方大会は、期間中に文部省(当時)の通達で中止される。
サイレンはおろか、球音まで消えてしまった。
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今も高校野球ではサイレンが鳴ります。
たった7秒間のサイレンですが、こんな話があったのです。
サイレンが鳴り響くのは平和の象徴でもあると言えます。
戦後70年目の高校野球。
今年もまた、終戦記念日の今日、正午に選手、審判、観客らが1分間の黙とうをささげます。
1963年の第45回大会から、終戦記念日に戦没者の慰霊と平和を祈念して毎年行われています。
選手やスタンドで応援する保護者や関係者、そして高校野球ファンの方。
今年の夏。どんな思いでサイレンを聞くのかは判りません。
でも、私たちは「今後、二度と球音もサイレンも途切れさせてはいけない」というのが共通した思いであることは確かでしょう。