ピンチ

今、2016年は名古屋が空前の大ピンチになっています

先日、サッカーJ1の最終戦が行われ、1993年の日本プロサッカーリーグ設立時からの存続チームオリジナル10の名古屋グランパスエイトがJ2降格となってしまいました。この試合の観戦に訪れていた愛知県の大村秀章知事は「今年は中日ドラゴンズもドベ(最下位)だし散々だ。人気を二分する野球とサッカーでこう弱いといかんわな」とがっくりと肩を落としていました。

ドラゴンズの方は着々とVロードへ向けての準備が進んでいますが、グランパスの方はある意味悲惨な状況に落ちってしまう可能性があります。

Jリーグが今年7月に公表した2015年度のチーム人件費は、年間1位が浦和レッドダイアモンドの20億9900万円。2位がグランパスの20億8600万円、3位が鹿島アントラーズの20億2300万円でした。。今シーズンは5ヶ月契約の田中マルクス闘莉王選手の年俸分などが減額となっているため、多少順位は下がるとみられますが、それでも高校や大学サッカー界で名を馳せた若手有望株が在籍しており、J屈指のビッグクラブであることは間違いありません。

ただし、J2降格となれば営業収益や広告収入、そして入場料収入の大幅な減収が予想され、チーム予算額にも大きな影響を与えることになります。久米一正社長は「選手を残すことが一番重要」と言いますが、「他のチームからのオファーを蹴散らすくらいの熱い信念がないと、あっという間にいい選手は移籍してしまう。選手たちはお金が高いほうに流される」とのとおり、最悪の場合には草刈り場と化す可能性があり、そのまま低迷してしまうかもしれません。

2005年からの10年間で降格チームはのべ29チームありました。そのうち、J2降格に即J1昇格を果たしたチームは10チーム。そして、即戻れたチームは3年以上J1に残留しています(2006年の柏レイソル、2007年の京都パープルサンガ、2012年のヴァンフォーレ甲府)。これらのチームは主力選手の流出などを最低限に抑えられていたことも事実です。また、勝ち続けているということで、観客動員もあまり影響がなかったという点もポイントです。J2降格後に負けが込むとガクッと動員が落ちますから。

2年目で復帰したチームは2チームのみです(2007年の東京ヴェルディ、2012年の湘南ベルマーレ)。因みにこの2チームは昇格した翌年すぐにまたJ2降格になってます。例えば1年目は残った主力も2年目になると抱えきれなくなるパターンが多く、2年目の方が戦力が落ちる場合が見られるためです。

3年目で復帰したのが5チーム。あとは4年目が1、5年以上かけて昇格したチームは0となっており、降格後2年以上J2暮らしをしたチームが戻って定着した例は今のところありません。つまり、J1に定着するためには早期に復帰するしかなく、5年以上いるとJ1に戻るのすら難しくなるということになります。

再昇格には戦力充実が不可欠であり、スポンサー資金が大事になります。グランパスの最大のスポンサーはトヨタ自動車。地元ゆかりの出資企業約20社の中で、トヨタは最大の50.1%を出資しており、今年6月には累積赤字解消のために約4000万円の増資を引き受けたばかりです。ですが、J2になればTVなどへの露出が減り、広告価値が下がります。トヨタは既に「トヨタにも株主がいる。誰かを感動させたり笑顔にさせたりするチームに変わらない限り、同じ金額での支援は難しくなる」と来季の支援縮小に含みを持たせているようです。

ちなみに、自動車業界ではトップのトヨタですが、サッカーでは他社を追いかける立場です。今シーズンは三菱自動車が大株主のレッズ、日産自動車の横浜F・マリノス、マツダが出資するサンフレッチェ広島に大きく差をつけられてしまいました。そういうことで、グランパスはピンチなのです。

ドラゴンズとグランパスの不調(ドラゴンズは来年から回復しますけど)を予兆するかのように、実は今年6月に主要8都市(札幌、東京23区、横浜、京都、名古屋、大阪、神戸、福岡)の住民を対象に行なった魅力度調査(各都市418人)の「魅力的な街」アンケートにおいて、名古屋市はぶっちぎりの最下位となっていました。

さらに残念だったことは、このアンケートを実施したのが「他都市と比べた名古屋の魅力」を知ろうとした名古屋市だったのですが、名古屋市民の回答ぶりも残念だったのです。
「最も魅力的な都市は?」の問いに、名古屋以外の都市では「自分の住む街」と答えた人が最多だったのに、名古屋だけは15.8%で、京都(23.7%)、東京23区(23%)を下回っていました。

これについて、「自己主張をあまりしたがらない名古屋人の気質が反映されているのでは? 『名古屋は日本の縮図』と評されることがありますが、名古屋人の気質は典型的な日本人そのもので、自己主張が苦手なんです。だから、お国自慢も品がないと控えてしまう傾向がある。そのため、名古屋の魅力が全国に伝わらないでいるのでしょう」「まあ、コンプレックスがあることは否定できませんけどね。80年代にタモリさんがテレビで『エビフライをエビフリャーと呼ぶ』とか『名古屋弁はみゃ～みゃ～と響きが汚い』と言いまくって、名古屋人自身が『東京や大阪に見下されている』と思い込んでしまったフシはある。2005年の万博などで、名古屋のイメージが好転したと思っていただけに、いまだこれだけたくさんの名古屋市民がコンプレックスを持っていたとは意外。この根深さは深刻ですよ」と分析されていたりします。

ただ、名古屋にも良いところはありまして、「晴天率は全国トップクラスです。夏は蒸し暑いけど、気候もよい。家賃も比較的安く、道も広い。関東、関西に近く、車でどこにでも行ける。名古屋城、名古屋メシもある。名古屋人には地元の魅力にもっと気づいて欲しいです」とのことです。

まあ、それも、これもドラゴンズとグランパスの成績が良ければいいのですけどね(ドラゴンズは来年から回復しますけど)。 

「夜明けの来ない夜は無いさ」

2017年は名古屋の復権の年です。