第86回選抜高校野球大会も終わってしまいました。
選抜が始まるころに大阪で咲き始めた桜は、選抜の終わりに東京へと移動しています。
大会第一日目に21世紀枠で甲子園初出場した東京都立小山台高校。健闘むなしく、準優勝した大阪履正社高校に負けてしまいました。
さて、昨日「とんぼ」の記事を書いたのですが、これは小山台高校でも話が元でした。
2006年6月。
野球部員だった市川大輔さん(当時16歳)が都内のマンションでエレベーター事故に遭い、亡くなってしまいました。
その年の秋の練習試合。教え子を失った傷の癒えない福嶋正信監督がベンチに座っていると、膝に一匹の赤とんぼが止まったという。思わず「大輔か?」と呼びかけると、とんぼは監督の人さし指に止まったという。一度は飛び去ったが、名前を呼ぶと再び戻って来ました。偶然かも知れないのですが、監督はグラウンドに市川さんが帰ってきたと信じ込んだそうです。
福嶋監督はとんぼと白球をデザインしたポロシャツを作って、部員や市川さんの家族に手渡し、「甲子園に行きたい」と口にしていたという市川さんの思いを共有しているそうです。
市川さんが購入したバットを使った選手が、試合を決めたこともあったそうです。
選手に1日1日を大切に過ごしてほしいという思いから、市川さんの野球ノートもコピーをして配布して来たそうです。
その小山台高は菅直人さん(元首相)や山田洋次さん(映画監督)らを輩出する文部両道の進学校です。
グラウンドには照明施設や雨天練習場もなく、数年前まではバッティングマシンやゲージもなかったそうです。グラウンドは狭く、他の部活と共用もしているそうです。
また、夕方5時から定時制授業が始まるため、練習時間は最大90分。「日本一練習時間が短い」野球部でもあるようです。
そんな環境ですから日頃の練習では、いかに短い時間内で効率よく取り組めるかを強く意識しているとのこと。さらに試合で得点するチャンスが巡ってきた時に、その集中力のスイッチを入れて行くのだと言います。
その驚異的な集中力の高さは、野球部員が勉強に取り組む姿勢から来ているそうです。
この冬の大学受験では元野球部員が筑波大、早稲田大など一流大学に「現役」で合格したそうです。
昨年の三年生も国公立と早慶上智、MARCH(明治、青山学院、立教、中央、法政の5大学)への進学率が70%を占めたそうです。
普通は高校の野球部員が受験勉強に本腰を入れるのは、三年夏の地区予選後(7月)ですが、小山台高は夏場に運動会などがあるため、本格的に勉強モードになるのは9月からだそうです。
その短い期間に集中して勉強モード。
甲子園の宿舎に生徒たちは教科書や参考書を持ち込んで、夜、みんなで勉強しているそうです。
甲子園で勝つことも大事だけれど、普段の学習習慣も大切にしているそうです。
勉強や学校と自宅での生活時間が一番、野球は二番というのが伝統。
今後のさらなる活躍に期待します。