早稲田実業高校と言えば、王貞治さん(福岡ソフトバンクホークス会長)、荒木大輔さん(元東京ヤクルトスワローズ)、斎藤祐樹選手(北海道日本ハムファイターズ)、そして今年は清宮幸太郎選手と多くのスター選手を輩出して来た野球名門校です。
一方で現在の和泉監督については・・・正直、あまり語られることはありません。もしかすると、私が単に知らないだけかも知れませんけど。
和泉監督は小学校三年生の時に名門・調布リトルに入団しました。
ある時、監督から全員に「素振り100回」の宿題が出され、家に帰ってから一生懸命バットを100回振ったという。
翌日、子どもたちを集めて、監督が「手のひらを見せてみろ」と言って、一人一人の手のひらを見て回った。その時は、手のひらを見せたくなかったという。素振りをしたせいでマメがつぶれ、見るも無残な手のひらになっていたからだったそうです。監督はその手のひらをじっと見つめ「おーい、みんな見てみろ」とみんなを集め、そして、宿題をきちんとやってきたこと、100回まじめに素振りをすれば手のひらがこうなることを、みんなの前で褒めたといいます。
このことは、和泉監督に大きな自信を与え、それまで「練習」というものにプレッシャーのようなものを感じていたが、それ以降、なくなったそうです。
その後、早稲田実高に入学し、キャッチャーとして甲子園春夏連続出場を果たし、早稲田大学卒業後、食品会社に就職した後に、山口・南陽工業高校の野球部監督に就任して、1992年に母校・早稲田実業高野球部の監督となって現在に至っています。
西東京大会の決勝で東海大菅生高校に5点差を付けられた八回の攻撃前。ベンチ前の円陣に和泉監督が加わり「日頃は入らないが、肩を組ませてもらって。つないでいこう」と伝えました。
すると、この回5安打とフォアボールなどで4点を返し、さらに2アウト満塁から押し出しで同点。その後もタイムリーや二つの押し出しで計8得点を挙げ、逆転勝ちで5年ぶりの甲子園切符を手にしました。
5年前の甲子園。
二回戦で前年の優勝校の愛知・中京大中京高校に21-6という大差で勝ったものの、三回戦で東東京・関東第一高校(関東一高)に6-10と2桁失点で敗れています。中京大中京戦のあと、和泉監督は「本当にこのチームには毎回毎回、驚かされる。いい意味で裏切ってくれるよね」とコメントしています。
2006年、斎藤佑樹選手を擁して全国制覇を成し遂げたチームも、毎回毎回驚かされるチームだったそうです。
一試合ごと、違う表情を見せ、決勝戦を迎えた時には初戦とはまったく異なった雰囲気を持つチームになっていたという。
大会の中の流れで強くなっていくチームというものがありますが、早稲田実高はこういうパターンのチームなのかも知れません。
和泉監督は、斎藤選手が在校中にはいつも「俺は手取り足取り教えるのは好きじゃない。だから自分で考えなさい」と言っていたそうです。ですから、大会中での経験値により、チームに伸びしろがあり、そこが強みのチーム作りになっているのでしょう。
「全員野球」
スタート時のチーム力はまだまだかも知れませんし、誰かに引っ張られているのかも知れませんが、全員野球を体現し、一戦一戦強くなっていくのが早稲田実高野球だと思います。
第1回大会から出場する伝統校。
和泉監督は「100年前の先輩に後輩を見せてやりたいと戦ってきた。うれしくてたまらない」と西東京大会優勝時にインタビューで答えています。
その甲子園では、どんな違ったチームの顔を見せてくれるのでしょうか。