広島東洋カープの黒田博樹選手が今シーズン限りでの現役引退を表明しました。なんとなく引退の予兆はあったものの、まだまだやれる、惜しいという考えを持った人もいるでしょうけど、同時に引き際の美学を感じた人もいるでしょう。
日本シリーズでの降板時にはカープファンのみならず、北海道日本ハムファイターズのファンからも惜しみない拍手が贈られ、ニュース画面などでは涙を流している姿も見られました。
黒田選手が引退表明したのは10月18日。引退の理由については「日本シリーズの登板もあるので、すべてを伝えるのは難しいが、一つはリーグ優勝して日本シリーズに進出ができたことが大きい。最高のシーズンを送れたので全く悔いはない」と述べていました。
また、日本シリーズ直前というタイミングについては「シーズンがすべて終わってから、みんなに伝えようと思ったが、日本シリーズ進出も決まり、もしかしたら次の登板が最後かも知れないのでチームメートと、今まで応援してくれた人に自分の気持ちを伝えないといけないと思った」と言っています。
普通でしたら、一大勝負前にチームに動揺を与えまいとして、シリーズ終了後に引退表明することでしょうが、黒田選手は自分の引退によってチームメイトが何かを感じ取り、そして発奮することを願っての狙いもあってのことだとも思います。それに、ファンにマウンド上から別れを告げるためにも。
黒田選手はチームメイトの新井貴浩選手にはリーグ優勝後に、今シーズン限りで引退する決意を固めたことを打ち明けていたそうです。新井選手とは2007年まではカープの暗黒時代もお互いに経験し、苦楽をともにしてきた仲間です。そして、2007年のオフに黒田選手はMLBのロサンゼルス・ドジャースへ移籍、新井選手もFAで阪神タイガースへと移籍して行きました。
そして、2014年オフに黒田選手はMLBから古巣カープへ戻る決意をした際、カープのフロントに「新井を何とか戻してやってください」と頭を下げながらお願いしたそうです。実は新井選手も古巣復帰を熱望してはいたものの、7年前にFAでタイガースへ移籍してからは松田元オーナーの怒りを買ってしまい、大きなわだかまりが残っていました。
しかし、新井選手は古巣復帰が困難であることを悟っていたこともあって、東北楽天ゴールデンイーグルスへの移籍がほぼ決まりかけていました。しかしながら黒田選手は諦めることなく松田オーナーに直談判し「新井を獲得してくださいませんか。彼は自分同様、カープの苦しい時代を知るベテラン。彼が加入すればチームにとてつもないプラスアルファが与えられることになるでしょう。もし、それができるのであれば私は間違いなくカープに復帰させていただきたいと思います」と何度も頭を下げながら猛プッシュしていたそうです。
これに対して松田オーナーは「黒田がそこまで新井にお墨付きを与えているのならば、本当に大きな安心材料だ」と感服していたそうです。
ロサンゼルス・ドジャースの元監督で黒田選手とは2008~2010年まで同じユニホームを着ていたジョー・トーリさんは
「ヒロ(黒田)は素晴らしい。チームメートからも常に尊敬の眼差しを向けられていたし、彼の周りにはいつも自然と人が集まるようになっていた。それがスーパースターにとって輝くための大事な要素でもある。たとえ英語の言葉が完ぺきでなくてもヒロはいつも誰かに話しかけられ、懸命にボディランゲージを交えながらコミュニケーションを取っていた。それだけ人を引き付ける重要な要素をもっているのだろう。私は自分が退任するまで2010年までの3シーズンだけ、彼と同じユニホームを着たが、少なくともあと10年は一緒にチームを支え合いたかったね」
と語っています。
また、そのドジャース時代に黒田選手と「最高の盟友」と称され、今でも仲のいいクレイトン・カーショウ選手は
「あんなに楽しくて、そしてマジメで頭のいい日本人選手はいないよ。人との付き合い方が上手なんだろうね。ヒロ(黒田)はそういうところが、本当に天才的。周りがよく見えているから、きちんと相手のことを考えて気配りができる。だから自分勝手なことをしない。ボクもヒロのようになりたいとずっと目標にしながら思って、ここまでやってきている。ボクがメジャーデビューを果たした2008年に、彼もまた日本からやって来た。お互いルーキーだったからこそ、いろいろなことを意見交換できたし、吸収し合えた。ヒロから教えられたこと?『フォア・ザ・チーム』と『ネバー・ギブアップ』の姿勢さ。当たり前のことだけど、それを改めて彼の姿勢から教わったよね」
と言っています。カーショウ選手はナショナル・リーグ・チャンピオンシップ(ナ・リーグ優勝決定戦)を含め、ここまでのポストシーズンでは先発だけでなくストッパーとしても登板し、フル稼働しています。その姿は黒田選手から教えられたことを実践しています。
また、最後のメジャーリーグ在籍チームとなったニューヨーク・ヤンキースのブライアン・キャッシュマンGMは
「クロダを欲しくないと思う球団などメジャーリーグには1つもないだろうね。残念ながらヤンキースとは条件面や編成面など、さまざまな理由が重なり合ってまとまらなかったが、できることならばクロダはヤンキースで野球人生を終えてほしかった。まだまだ主力クラスとして活躍できたし、それにヤンキースの若手たちに精神面や技術面、すべてにおいて教えられたことが彼には山のようにある。『バイブル』そのものだと思う」
と言っています。
絶対に自己中心的な言動はせず、常に冷静沈着で周囲への目配りも利かせながら生きている。時と場合によっては友のため犠牲的精神も厭わない。
口で言うのは簡単なのですが、実際に遂行し続けることはとても難しいことです。
しかし、それを自分が苦労していることなどを見せることもなく、当たり前のように行っているのが黒田選手であり、このことこそ黒田選手が「男気」と評される所以でもあるでしょう。
今からでも遅くはないと思う。少しずつでもいいから「男気」の生き方を学び、私も成長への糧としていきたいと考えるところです。
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まっくろくろすけ
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