さて、まだ日本シリーズ中ですが、ほぼ今シーズンが終わって中日ドラゴンズ、読売ジャイアンツ、阪神タイガース、オリックスバファローズ、東北楽天ゴールデンイーグルスと半分近くの5球団が新監督を迎えることになりました。新監督は、ほぼ問題なく決まった感じですが、コーチ陣の組閣を巡っては、どこの球団も「ぎこちなさ」が見え隠れしたように思えます。
■中日ドラゴンズ「寄せ集め内閣」
一部からはこう言われています。理由は与田体制の成り立ちにあるようで、親会社である中日新聞の関係者にとって想定外だったらしいのです。「新人王を獲得し、故障で苦労したOBに託した」というのがオーナーですが、与田監督が在籍したのは20年以上前で、時間が経ち過ぎていて、若いファンは与田監督自体をよく知らないようです。逆にOBは、「ずっと中日を離れていたのに、何で?」という感じもあるようです。だから「OBのようでOBじゃない」という感じもあるようです。
ですから、伊東勤ヘッドコーチ、村上隆行コーチ、阿波野秀幸コーチ、赤堀元之コーチなど、結果的にOBではない方々が就任したというのは、そういう背景もあるらしいです。
そんな声を気にしてか、新陣容を発表した西山球団代表は「与田新監督の門出。彼をしっかり支えて、与田野球をきちんと推進できるような布陣ができた」と言うと「すべて監督の構想の中に入っている人々。監督と私で決めました。誰かが言ったとかはない」と続けています。完全に与田監督の意向どおりの布陣だと、大本営は発表しています。
■読売ジャイアンツ「ファンケル野球教室内閣」
原辰徳監督。今回はコーチ陣のみならず、ここまでやるか、というほど極端に自分のシンパを集めたようにも思えます。何と言ってもGM交代まで力が及んだとは思いませんが、ドラフト直前のスカウト部長交代には正直驚きました。しかも、新スカウト部長は原監督の東海大の後輩である長谷川国利さん。以前は有能なスカウトでしたが、最近は査定担当でしたが、ドラフト直前の人事異動です。ドラフト当日のTV中継でも原さんと長谷川さんが話している姿が多かったようにも思えましたが。
コーチ陣は、もう十分承知のとおり「ファンケル野球教室」状態です。他にも後藤孝志打撃コーチは入団時の目標で“原辰徳選手と一緒にスタメン入りすること”とコメントし、原監督に仲人をしてもらった間柄です。相川亮二バッテリーコーチは原二次政権の2014年オフ、阿部慎之助選手を一塁へコンバートするため、原監督が熱望してFAで獲得した経緯があります。昨年、引退した際にコーチを打診されましたが、経験不足を理由に断わっています。でも、わずか1年で翻意したのは恩がある原監督だからだろうとも言われています。
実は二軍も「原一家」が勢ぞろいしています。今季限りで引退し、コーチに就任した杉内俊哉コーチ、村田修一コーチのほか、木佐貫洋コーチ、堂上剛裕コーチ、藤村大介コーチ、片岡治大コーチはいずれも前回までの原政権下で獲得した選手たちです。
■阪神タイガース「遺産相続内閣」
金本知憲前監督の電撃辞任が発表されたのは10月11日。そのわずか4日後の15日に矢野燿大監督が就任しました。この球団も常に親会社主導で断行される形で監督交代があります。いわゆる「お家騒動」によるドタバタ劇です。
本来、最下位であって、その責任を取って前監督の金本さんが辞任したのですから、その責任の一端を担ったコーチ陣も大きく変わるのが普通だと思ったのですが、ヘッドコーチに矢野監督の希望で清水雅治前埼玉西武ライオンズコーチを招請するくらいで、あとのコーチ陣の顔触れはほとんど代わっていません。
これは、球団フロントが金本さんの続投を前提にコーチたちと面談して留任の約束をしていたからといわれています。そもそも矢野監督自体、金本さんと一蓮托生のつもりだったはずですので、実際のところ後任監督にはなりにくかったと思います。それを受けたのは、おそらく、金本さんからの強い慰留があったに違いないとも思えます。
■自由民主党「全員野球内閣」
さてさて、今年の10月に発足した第4次安倍改造内閣。安倍晋三首相は新内閣の発足を受けて、「全員野球内閣」と命名しました。新たな内閣は、麻生財務相や菅官房長官といった政権の骨格は維持したまま、総裁選挙で安倍首相を支持した派閥の、いわゆる「入閣待機組」を多く登用した形になっており、これまでの安倍政権で最多となる12人が初入閣しています。
改造内閣の発足を受けて、安倍首相は記者会見し、今回の布陣を「新しい国造りの力強いスタートを切るために、党役員人事、内閣改造をした。この内閣は、それぞれのポジションで腕を磨いてきた実務型の人材を結集しました。いわば、あすの時代を切り開くための全員野球内閣であります」と語りました。
これに対して、野党からは「(安倍晋三)首相と同じ毛色の人たちを集めた、右バッターばかりのチーム」と上手いことを言っております。