今年の日本シリーズでの私の見どころとなっている「甲斐キャノン」。福岡ソフトバンクホークスのキャッチャー甲斐拓也選手の強肩による盗塁阻止です。
第1戦から第4戦まで、許盗塁なしでの4者連続盗塁阻止です。これは1958年の藤尾さん(読売ジャイアンツ)以来2人目の快挙となります。ホークスとしても、ここまで6回企画された盗塁のすべてを封じており、広島東洋カープの6連続盗塁失敗は、日本シリーズのワースト記録更新してしまいました。カープの機動力を封じ、ホークスは対戦成績を2勝1敗1分として優位にシリーズを進めています。
甲斐選手は2010年育成ドラフト6位からはい上がった苦労人です。身長170cmとプロ野球選手にしては小柄ながら、強肩とスローイングに磨きをかけてきました。捕球から送球の二塁到達まで1.9秒台で一流と言われるが、甲斐選手は驚異の1.7秒台を出します。レギュラーに定着した昨季は、ベストナインとゴールデン・グラブを初受賞。今季は盗塁企図数76で34回刺し、盗塁阻止率は12球団断トツの.447を記録しています。ちなみに高谷裕亮選手は.385でパ・リーグ2位の阻止率です。
ホークスの達川ヘッドコーチは「今まで見た捕手の中でスローイングの速さ、送球の正確さは古田(元ヤクルト)と双璧。ワンバンを止めるのは世界一」と高く評価しており、デスパイネ選手も「守備だけならメジャーで通用する」と絶賛します。
まず、盗塁阻止は当然ながらピッチャーとキャッチャーの共同作業になります。野球のプレーの中では珍しい時間との勝負です。
リードを取ったランナーがスタートを切って二塁に到達するのが、約3.2秒。
つまり、計算上、ピッチャーのクイックモーションと、キャッチャーの捕球から二塁送球動作、野手のタッチの時間も含めて、その合計が3.2秒以内ならアウトにできることになります。
ピッチャーのクイックの目標タイムが1.25秒以内、キャッチャーの捕球から送球時間が1.95秒以内にしなければ、アウトにはできません。つまり、甲斐選手とホークスが10割阻止しているということは、その共同作業のタイムをすべてクリアしているということなのです。
総合的にホークスのピッチャーはクイックが上手いといわれています。そこへ甲斐選手の1.7秒キャノンです。実際にはピッチャーのボールが変化球であったり、それたり、ワンバウンドになったりする場合もありますから、現実的にはさらに速いのかもしれません。
ただ、キャッチャーの送球は肩の強さだけでいいとは言えません。それ以上にいいのがコントロールです。甲斐選手の送球は、ほとんどが二塁ベースの一塁側のランナーの走塁方向へとコントロールされています。捕球する野手もタッチがしやすく、タッチのスピードアップにもつながっているのです。
また、タイムを縮めるために最も重要なボールを捕ってから送球までの動作が非常に速いことです。送球タイプはいろいろありますが、甲斐選手は捕球して、そのままノーステップで左足を前に出して投げるタイプではなく、足を切り替えてワンステップをして投げるタイプです。甲斐選手は、捕球と同時に右足を引き、左足を前に出すという切り替えを行う時に、その軸足となる右足が着くのが速いのです。足が動くので、ボールが、それた場合の対応力も速いのです。
この動画を見ていただければ、よくわかります。
このあたりは、実は学童野球のころに、当時の指導者たちに太郎が散々教わっていたことでもあります。簡単そうに見えるのですが、実際は難しいのですよね。
何の関係もありませんが、「機動戦士ガンダム」に出てきたモビルスーツで、両肩に固定武装の中距離支援火器を取り付けたガンキャノンというのがありました。パイロットはカイ・シデン。機動性はガンダムには劣るものの、攻撃力と装甲性は高い威力を発揮していました。
カイ・シデンのガンキャノン・・・カイのガンキャノン・・・カイキャノン・・・甲斐キャノン・・・
そういえば、2014年頃に8.6秒バズーカーていうのが、あったような・・・