「先日、EU離脱の国民投票が過半数を超えて首相辞任を決めた男がいたんですよ~」
「な~に~!? やっちまったな!!」
「都合が悪くなると職務放棄 都合が悪くなると職務放棄」
「それじゃあ、どこかの前都知事と一緒ですよ」
欧州連合(EU)離脱を決めた英国、正式には”グレートブリテン及び北アイルランド連合王国”の国民投票を巡り、開票当日は世界中の経済市場に混乱を与え、週明けには今度は自国内が混乱しています。離脱への投票を後悔しているのか、政府に2度目の国民投票を求める署名が370万人を突破し、ロンドンの独立を求める署名が10万人を超えたそうです。他にもウェールズや北アイルランドでも独立を求める動きがあるそうです。英国では住民からの要求(署名)が10万人を超えると、その内容を議会で審議しなければならないという法律があり、このままですと2度目の国民投票の可能性も出てきます。そこで、今度は残留という結果になった場合には、辞任を表明した首相はどうするつもりなのでしょうね。なお、この首相は自分の在任中には2度目はないと言っているようです。
さてさて、現在欧州ではサッカーのユーロ2016が開催されており、出場しているグレートブリテン及び北アイルランド連合王国ですが、構成する4つの国の中でウェールズ、北アイルランド、イングランドの3ヶ国が出場しています(スコットランドだけが予選敗退)。これはFIFAワールドカップ、ラグビーワールドカップ、コモンウェルスゲームズのような世界大会やUEFA EUROといった欧州での国際大会へは、各自個別に地域として参加しています。ただし、オリンピックについては、各地域別に参加せず、イギリス(グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国)代表として合同参加しています。
そもそも、この連合王国とは、複数の王国などの同君連合や複数の国の連合により形成された王国の呼称として用いられる用語です。グレートブリテン及び北アイルランド連合王国は、ウェールズ、北アイルランド、イングランドとスコットランドの4ヶ国の連合です。ちなみに国旗のユニオン・ジャックはイングランド、スコットランドと北アイルランドの3つの国の旗を合成して出来たものです。なお、ウェールズの国旗が合成されていないのは、しないのではなく、出来ないからなのです。
こうなっているのは複雑な歴史背景があります。
まず、1603年にステュアート朝のジェームズ1世/6世がイングランドとスコットランドの王を兼ねてから、両国は同君連合の関係になり、その後、アン女王時代の1707年連合法により、両国の議会は統一されて一つの国家となりました。現在は1999年にスコットランドの自治拡大政策によってスコットランドにも議会があります。
アイルランド王国も1694年以降、イングランドに実効支配されており、1789年にフランス革命が勃発すると、アイルランドにおいて革命政権との連携の動きがあり、1798年のアイルランド反乱を引き起こしました。この反乱は鎮圧されたが、再発防止のために1800年に連合法を成立させ、1801年にアイルランド王国と合同し、新たにグレートブリテン及びアイルランド連合王国が成立します。なお、1919年に発生したアイルランド独立戦争(1921年に休戦)における英愛条約により南アイルランドにイギリス連邦下のアイルランド自由国が成立し、アルスター地方のうち6州は北アイルランドとしてイギリスの直接統治下のままとなります。これが、現在も続く北アイルランドの帰属問題の原因になっています。
EUから正式に離脱してしまいますと、サッカーやラグビーなどに影響があります。これまではEU加盟国間ではEU加盟国国籍を有している選手は就労ビザを必要としていませんでしたが、離脱後はビザが必要になります。例えば、EU加盟国以外の選手がプレミアリーグでプレーするためにはA代表での出場試合数の規定を満たす必要がありますので、若手の選手にとってはプレミアリーグに移籍することが難しくなる可能性があります。一方、英国出身選手にとってはチャンスが広がることも言えます。
他にもポンド安が進む可能性があり、そうなってくると国外選手獲得にかかるコストが増加します。逆にプレミアリーグのクラブにとって、選手が流出する可能性は大きくなります。ビザの問題はともかく、移籍金は世界的な経済の問題ですから、解決は難しいと思います。
ちなみに、グレートブリテン及びアイルランド連合王国がEU離脱をしようとしている大きな要因は「移民・難民問題」です。EU加盟国には「難民受け入れを拒否できない」という法律があります。しかし、「これ以上移民や難民を受け入れられない」ということです。移民、難民対応の費用は国の税金です。自国の財政も良くなく、本来の目的に税金が充分使えず、難民の受け入れ費用の負担が大きくなってしまっているところにあります。また、移民、難民が増えると、元々の仕事を自国民と移民、難民で取り合うことになりますので、たまったものではありませんよね。そんなようなことが背景にあるとのことです。
なお、現時点ではグレートブリテン及びアイルランド連合王国のEU離脱は2018年に行われる予定です。その時まで、グレートブリテン及びアイルランド連合王国が存続しているかどうか。
以上、数年後のテストに出るかも知れない世界史でした。