藤井聡太七段の活躍で注目を浴びている将棋界です。今年は藤井七段が史上最年少でタイトルを獲得するかに注目されていますが、そもそも、将棋のタイトルには何があるのかをまとめてみました。
現在、将棋界には8つのタイトルがあります。それぞれのタイトル戦は時期は異なりますが、毎年開催されています。また、将棋は日本の企業や学校と同じく、4月が年度初めとなりますから、現在は2018年度の終盤になります。
なお、8つのタイトルは、それぞれ対等というわけではなく、序列がつけられています。これは新日本プロレスのIWGPヘビー級王座に対する、IWGPインターコンチネンタル王座とIWGP USヘビー級王座同じようなものだと思っていいでしょう。また、全日本プロレスの三冠ヘビー級王座のようにタイトルを統一した八冠王座にする予定はないものと思われます。
ちなみに、将棋ではタイトルを獲ったからと言って、ベルトを巻くことはしません。
竜王 / タイトル保持者;広瀬章人竜王 / スポンサー;読売新聞 / 賞金;4320万円
名人と同じ序列とされていますが、名人と併せ持った場合に「竜王・名人」と呼ばれることから、事実上は序列1位として取り扱われています。直近だと、羽生九段の永世七冠が有名ですが、過去には渡辺明竜王が9連覇を達成した例もあります。
「竜王戦」という棋戦名は、竜は古来中国で皇帝の権威の象徴として神格化されていた最強者のシンボルであること、将棋の駒の「竜王」(「飛車」の成り駒)は将棋で最強の駒であることの2点を理由として命名されたものです。
第1期は1987年ですが、前身の十段戦、さらにその前身の九段戦(第1期は1950年)から数えると、タイトル戦の中で名人戦(第1期は1935年~1937年)に次いで2番目に長い歴史を有しています。
名人 / タイトル保持者;佐藤天彦名人 / スポンサー;朝日新聞と毎日新聞の共催 / 賞金;3500万円
竜王と同じ序列ですが、最も歴史が古いタイトルです。名人に挑戦するには、順位戦というリーグ戦の一番トップである「A級」で勝ち抜く必要があります。話題の藤井四段は5つのリーグの一番下のC級2組なので、名人に挑戦するには、デビューから5年必要です。この制度が、名人の権威を高めている側面もあります(他のタイトル戦は、「勝ち続けさえすれば」、デビューから1年でタイトルに挑戦することができます)。過去には、あの大山康晴名人の13連覇、中原誠名人の9連覇などの例があります。
名人戦七番勝負の勝者には、将棋界で最も格式と歴史のある(家元制として江戸時代初期の1612年以来、実力制タイトルとして1937年以来である)「名人」のタイトル称号が与えられます。
王位 / タイトル保持者;豊島将之二冠(王位・棋聖) / スポンサー;ブロック紙3社連合(北海道新聞社、中日新聞社、西日本新聞社)と神戸新聞社、徳島新聞社が主催 / 賞金;1000万円
長く羽生九段が9連覇を達成しています。過去には大山王位の12連覇もあります。
1954年に産経新聞社主催の一般棋戦「産経杯」が準タイトル戦「早指し王位戦」に発展的に解消されて始まった。1960年には、ブロック紙3社連合(北海道新聞社、中日新聞社、西日本新聞社)が主催に加わり、正式にタイトル戦に格上げとなりました。それまで、ブロック紙3社連合は、名人・A級棋士を対象にした名人A級選抜勝継戦とB級棋士を対象にしたB級選抜トーナメントという2つの一般棋戦を主催していましたが、これらはすべて王位戦に統合しました。1962年に産経新聞社が新たに棋聖戦を創設することになり、王位戦の主催から離脱し、その後、1973年には神戸新聞社、1984年には徳島新聞社が主催に加わり、主催紙は5紙となっています。
王座 / タイトル保持者;斎藤慎太郎王座 / スポンサー;日本経済新聞 / 賞金;800万円
羽生九段が、空前絶後の19連覇を達成したタイトルとして有名です。
王座戦は、1953年に一般棋戦として創設され、1983年にタイトル戦に格上げされたものです。前身は「世代別対抗将棋戦」です。
棋王 / タイトル保持者;渡辺明棋王 / スポンサー; 共同通信社 / 賞金;600万円
王座戦と同じく、羽生九段が12連覇を達成したタイトルとして有名です。
「棋王戦」は、1974年に一般棋戦として創設され、翌1975年(1期)にタイトル戦に格上げされました。前身は最強者決定戦です。
王将 / タイトル保持者;久保利明王将 / スポンサー;スポーツニッポン新聞社及び毎日新聞社主催 / 賞金;300万円
羽生九段が最後に挑戦したタイトルで、過去に大山王将の9連覇、中原王将の6連覇、羽生王将の6連覇があります。
升田元名人が、このタイトル戦で時の大山名人に香車を引いて勝った(名人よりも少ない駒で勝った、つまり自分は名人より実力が上と証明した)逸話はとても有名です。
「王将戦」は、その名のとおり、駒の「王将」から命名されたものです。1950年に一般棋戦として創設され、翌1951年(1期)にタイトル戦に格上げされました。
2019年度の第69期は、外食チェーン「大阪王将」を運営しているイートアンドが特別協賛に加わり、正式名称を「大阪王将杯王将戦」として開催されることとなり、名実ともに王将です。
棋聖 / タイトル保持者;豊島将之二冠(王位・棋聖) / スポンサー; 産業経済新聞社主催、協賛; ヒューリック / 賞金;300万円
かつては年に2回開催されていましたが、最近は1年に1回です。羽生九段の2度の大型連覇の他にも、大山棋聖の2度の7連覇という記録が光っています。
2018年4月からはヒューリックが特別協賛に入り、正式名称を「ヒューリック杯棋聖戦」とすることとなった
「棋聖」とは、本来は将棋・囲碁に抜群の才能を示す者への尊称です。将棋では、特に江戸時代末期に現れた、不世出の天才棋士・天野宗歩さんを指すことが多く、天野さんには十三世名人の関根金次郎さんによって棋聖の称号が贈られています。
叡王 / タイトル保持者;高見泰地叡王 / スポンサー; ドワンゴ / 賞金;2000万円
「叡王戦」は、2015年度に一般棋戦として第1期が開始され、2017年度の第3期からタイトル戦に昇格した一番新しいタイトル戦です。以前は、コンピューターソフトとの対局(電王戦)相手を決める棋戦という位置付けでしたが、2017年5月20日に電王戦の終了と第3期以降は王座戦以来34年ぶりにタイトル戦へ格上げされました。電王戦の終了に伴ってエントリー制から全棋士強制参加に変更され、タイトル保持者の段位呼称も廃止されました。賞金額による序列は竜王戦、名人戦に次ぐ三位とされています。