第101回全国高等学校野球選手権の大会第7日目は二回戦4試合が行われました。
■第1試合
宇部鴻城高は2回表、河村勇選手の2点タイムリー2ベースヒットで先制。4回表には岡田選手の2ランホームランなどで3点を奪い、リードを広げる。投げては、先発・岡田が9回3失点12奪三振で完投し、宇部鴻城高が三回戦進出を決めました。敗れた宇和島東高は、夏の甲子園21年ぶりの白星とはなりませんでした。
宇部鴻城020301001|7
宇和島東000110001|3
■第2試合
海星高は4回表、坂本選手のタイムリーヒットで先制。その後は、6回表に大串選手のソロホームランで追加点すると、9回表には太田選手の犠牲フライでリードを広げた。投げては、先発・柴田選手が打たせて取る投球で無四球完投し、海星高が夏17年ぶりの初戦を突破しました。敗れた聖光学院高は、荒牧選手がホームラン2本を放つも及びませんでした。
海星 000101001|3
聖光学院000000101|2
■第3試合
八戸学院光星高は7-8と逆転されて迎えた8回表、下山選手のタイムリー2ベースヒットで同点。9回表には2アウト満塁から沢波選手が2点タイムリーヒットを放ち、勝ち越しに成功し、そのまま、八戸学院光星高が打撃戦を制しました。敗れた智弁学園高は、6点差を逆転するも及ばず、2014年以来の初戦敗退となりました。
八戸学院光星103003012|10
智弁学園 000017000|8
■第4試合
高岡商高は4回裏、藤井選手と荒井選手のタイムリーヒットで2点を先制。その後は、7回裏に森田選手がタイムリーヒットを放ち追加点を挙げ、続く8回裏には藤井選手の犠牲フライでリードを広げた。投げては、先発・荒井選手が9回表の反撃をしのいで3失点完投し、三回戦進出を決めました。敗れた神村学園高は、終盤に追い上げを見せるもあと一歩及びませんでした。
神村学園000000102|3
高岡商 00020011x|4
宇和島東高硬式野球部ナインを率いる長瀧剛監督。高校時代は宇和島東高で、1988年に同校を選抜大会初出場初優勝に導いた上甲正典監督の元で1997年二番・センターとして春夏連続の甲子園出場を果たしました。九州共立大を卒業した後、新居浜西高、大洲農業高、野村高で指導に当たり、今年4月に宇和島東高に赴任して監督に就任しました。
上甲さんが2014年9月に亡くなる直前に長瀧監督は病室を見舞い「あとは頼む」と復活を託され、今年4月から母校の監督として戻り、当時学んだ「上甲流」をチームの指導に生かしてきました。「甲子園に行くためにはそんなことをやっていてはだめだ」と、練習時から甲子園という言葉をよく使うことがその一つです。「『甲子園』と発することで高いレベルを意識してもらいたい」と話しています。グラウンドの一角には「上甲さんあっての今の宇和島東」と恩師の写真を置き、「甲子園に行ったら絶対に人生が変わるぞ」と昨夏は初戦敗退するなど勝ちに貪欲でなかった選手の意識改革に着手しました。野球以外の雑談も増やして距離を縮め、わずか4ヶ月間でチームは急激な成長を果たしてきました。
今年の愛媛大会はノーシードでした。最近の愛媛県は済美高や松山聖稜高といった強豪校が上位を占めており、宇和島東高は古豪扱いになって来ています。その宇和島東高が、今春の選抜大会出場の第1シード・松山聖陵高を撃破。長瀧監督は「とても甲子園に行けるチームではないと思っていたが、“夢”を意識してやってこられた結果」と語っています。
さて、長瀧監督の前任校は愛媛・野村高。愛媛県西予市野村町にあります。2018年の愛媛大会前に集中豪雨に襲われ、練習どころではありませんでした。西予市を流れる肱川が氾濫し、中には川近くに住んでいた選手の自宅は、2階へ続く階段の途中まで泥水が迫っており、2階の窓から外に出て、隣家に飛び移り、途中、首まで水に浸かりながら泳ぎ、避難所の公民館にたどり着いた選手もいます。
その選手の自宅は全壊。「もう野球どころじゃない」と思いましたが、水が引いて自宅に戻ると、泥まみれだった自宅の2階にバットとミット、ユニフォームが水に濡れずに残っていました。畳が水に浮いて、奇跡的に無事だったそうです。
選手たちは「こんな状況で好きなこと(野球)をやっているのは申し訳ない」と思い、大会直前まで部員たちはがれきの撤去作業を行っていました。
「野球が出来るのは当たり前のことではなく、特別なことである。地域の人の応援があってこそ野球が出来る」と長瀧監督は当時、こう言っていました。
今もこの思いは変わっていないと思います。
夏の甲子園で21年ぶりの勝利とはなりませんでしたが、たくさんの人の想いを背に再び甲子園に戻って来てくれるでしょう。