第101回全国高等学校野球選手権の大会第6日目は二回戦4試合が行われました。
■第1試合
作新学院高は初回、石井選手の犠牲フライで先制。その後、9回裏に同点に追いつかれるものの、同点で迎えた延長10回表に、中島選手のタイムリーヒットなどで、勝ち越しに成功。投げては、先発・林選手が10回3失点で完投勝利し、作新学院が3年ぶりに初戦を突破しました。敗れた筑陽学園高は、9回2アウトランナーなしから追いつく粘りを見せるも、あと一歩及びませんでした。
作新学院1010010002|5
筑陽学園0010000020|3(延長10回)
■第2試合
東海大相模高は4回表に2アウト二塁から相手エラーで先制。その後、1点を加えて迎えた6回には、山村選手のタイムリーヒットなどで3点を追加し、リードを広げた。投げては先発・遠藤選手が8回途中1失点の好投。敗れた近江高は、守備の乱れが響き、2年連続の甲子園勝利とはなりませんでした。
東海大相模000113001|6
近江 000000010|1
■第3試合
中京学院大中京が初戦突破。中京学院大中京は1点を追う7回裏、申原の適時打などで4点を挙げ、逆転に成功する。投げては、先発・不後が6回途中1失点。その後は赤塚、元の継投でリードを守りきった。敗れた北照は、終盤に追い上げを見せるも、あと一歩及ばなかった。
北照 000001011|3
中京学院大中京00000040x|4
■第4試合
明石商業高2-2の同点で迎えた6回裏、河野選手のタイムリーヒットで勝ち越しに成功。再度同点とされた直後の7回裏、重宮選手のタイムリーヒットで再びリードを奪った。投げては、先発・中森選手が3失点完投で、明石商業高が選手権初勝利となしました。敗れた花咲徳栄高は、2度のビハインドを追いつく粘りを見せましたが、一歩及びませんでした。
花咲徳栄000101100|3
明石商 00002110x|4
2018年夏の甲子園でのハイライトと言ってもいい試合だったのが秋田・金足農業高と滋賀・近江高の準々決勝でした。
近江高の1点リードで迎えた9回裏、金足農業高の攻撃は連続ヒットとフォアボールでノーアウト満塁。バッターはこの大会ここまで6打数0安打4犠打(スクイズ1)の九番・斎藤選手でした。当たっていないバッターであること、準々決勝までにスクイズで3点を挙げている金足農業高打線であることから、スクイズがあることは予想できるものでした。
近江高のピッチャーは左腕の林選手。三塁ランナーを背にするため、スタートは見えません。また、三塁ランナーのリードを小さくするために、サードの見市選手は三塁ベースについて守りました。1点差のため、一塁ランナーは勝敗に関係ありませんので、バッターがバントの構えをすればファーストは思い切って突っ込めます。つまり、バッターはバントで狙うのは三塁方向しかありません。
斎藤選手に対しての3球目。カウント1-1から林選手が投じたのは、三塁側に転がしやすい外角低めのストレート。「スクイズを外そうというのはあったけど、どの方向にやらすとかはなかった」。この球を斎藤選手は狙いどおりサードの前にコース、強さともに絶妙なバントを決めます。
このとき、林選手は、その回に打たれたスライダーに自信を失い、入学後、初めて有馬選手のサインに首を振って投げたストレートだったのでした。
「(三塁)ランナーのスタートと同時に前に出ていきました。4つ(本塁)を刺すつもりで出て行ったけど、4つは間に合わないと判断しました。スタートは遅れてはいないです」と見市選手は語っていました。
しかし、「二塁ランナーが突っ込んで来るのは頭になかった。想定外のことが起こった」と、サヨナラ負け直後、しばらくグラウンドに突っ伏したまま動けなかったキャッチャーの有馬選手はそう振り返りました。
それからは、ほんの小さなすれ違いをも無くすために、有馬選手とのリードについてのコミュニケーションを増やしてきました。2人とも寮生活のため、夕食の時間はTVのプロ野球中継を見ながら配球の意見交換したり、練習試合ではあえて首を振り、場面や状況に合わせて投げたい球、投げるべき球は何かを追い求めてきました。
悔しさを晴らすために「絶対に戻らないといけない場所」と決めた甲子園でした。
そして、あれから1年後の2019年の夏。林選手と有馬選手は三年生となり、悔しさを胸に過ごした1年間の集大成をみせたい甲子園でした。
東海大相模高との試合後に有馬選手から声をかけられた場面を思い返した林選手。一度収まったはずの涙が。「有馬がいなかったら今の自分はいない。この試合も有馬を信じて最後まで投げられたので、1年間やってきて良かったと思います」。
有馬選手は、「林は最高の投球をしてくれたのに打者が応えられず申し訳ない。林でなければここまで来られなかった。林と出会えたことに感謝したい」。
ちなみに、林選手の帽子のひさしの裏には、「日本一のバッテリー」の文字が書いてあるそうです。
優勝できなくても、信頼関係は日本一のバッテリーだったでしょう。