昨季、MLBから突然聞かれるようになったこの野球用語。
試合の先発ピッチャーとして、リリーフ専門ピッチャーを起用し、一・二・三番から始まる相手上位打線と対戦させます。そして、2回からは本来の先発ピッチャーへと継投し、長い回を投げることを期待するという戦略です。
野球において、先制点は試合を有利に進めるものであり、先発ピッチャーにとって立ち上がりは非常にに気を遣うものです。特に、その日の自分の状態を探りながらと、相手バッターの調子を探りながら初回のマウンドに立ちます。そのため、先発ピッチャーの失点率が高いのは初回になることが多いのです。
しかし、このオープナーはチームを勝利に導くために多くのメリットがあるとされます。リリーフピッチャーはその特質上、登板時から全開投球です。最も厄介な相手上位打線を全力投球で封じ込め、本来の先発ピッチャーと交代することは、立ち上がりの失点を防ぐ観点からすれば最適な作戦だと思います。私は以前、ここ一番のパワプロやファミスタなどで使ったことのある戦略と同じで、あとは継投継投で乗り切るのです。
初回の次にポイントとなるのが6回、7回、8回あたりに訪れる継投時期です。相手打線は少なくとも3巡目を迎えて、バッターはピッチャーの球筋に慣れ、配球パターンもわかってきます。また、確率的にいってもノーヒットで迎えた場合にはそろそろヒットが出始める頃になります。また、ピッチャーの投球数は100球に近づき疲れも見えてくるころで、バッター有利の状況が生まれてきます。現在でも各チームがセットアッパー、クローザーといわゆる勝利の方適式を準備しているのは、このためでもあります。そこで、オープナーを先発させて、元来の先発である2人目のピッチャーには2巡目を終了した時点でお役目ごめんとし、残り2回をセットアッパーとクローザーでしのぐというものです。相手バッターは常に新しいピッチャーとの対戦を強いられ、これが失点を未然に防ぐことに繋がると考えられたものです。
この戦略を最初に取り入れ、結果へと繋げたのはタンパベイ・レイズを率いるケビン・キャッシュ監督の現役時代のポジションはキャッチャー。実働8年、246試合の出場で通算打率は.183でした。ボストン・レッドソックスに在籍した当時のテリー・フランコナ監督(現;クリーブランド・インディアンス)から「お前にバットなんていらない。ベンチで俺の横にいつも座っていればいいんだ」と言われ続けてきたそうです。要するに自分の参謀として側に置いておきたいということなのでしょう。
この戦略はレッドソックス、ニューヨーク・ヤンキース、ロサンゼルス・ドジャース、シカゴ・カブスなどの先発ピッチャーが揃っており、戦力層の厚いチームに対する、いわゆる弱者の戦法として使えるのではないかと考えます。もちろん、従来の野球の概念である、先発ピッチャーがより長く投げ合うというものからは違和感が満載ではあります。
ただ、この戦略の中には、現在、日本の高校野球において問題となっている、ピッチャーの投げすぎを防止できるのではないかと思えます。そもそも、戦力層が薄いチームにおいて、先発ピッチャーを2人、3人と揃えることが無理だというのであれば、短い回を継投継投でつないでいけばいいと思います。やむを得ずかもしれませんが、実際にそのようにして予選で試合を行っているチームを観たことありますし、短い回ならば抑えられるというピッチャーが多数いるチームもあるでしょう。
本来は先発ピッチャーを育てるのが理想であると思いますが、戦力が限られている高校野球であれば、これはこれでいいと思います。ただ、プロ野球で多用されるのはどうかとは思ったりします。
予告先発制度も、誰を指して言うのかわからない制度になってしまいます。
ドラゴンズの予告先発は、田島 田島 雨 田島 時々 鈴木博 で 一時 又吉か佐藤。で、本来の先発ピッチャーはガシャポンのシークレットみたいな形で、2回から登場…。
プロの世界ですからオープナーは理解できます。ただ、これで選手が育っていくか、モチベーションが維持できるかは別問題だと思います。
もしかすると、今から10年後には、オープナーが恒常化されて「急進的な野球観」はまたひとつ、普通の出来事になっているかも知れません。