【上達の極意 モノゴトは両面から観察せよ
~ 徒然草(吉田兼好)第百十段 の巻】
第百十段
双六の上手といひし人に、
その手立を問ひ侍りしかば、
「勝たんと打つべからず。
負けじと打つべきなり。
いづれの手か疾く負けぬべきと案じて、
その手を使はずして、
一目ひとめなりともおそく負くべき手につくべし」
と言ふ。
道を知れる教へ、身を治め、国を保たん道も、またしかなり。
双六(すごろく)の名人と呼ばれている人に、
その必勝法を聞いてみたところ、
「勝ちたい と思って打ってはいけない。
負けてはならぬ と思って打つのだ。
どんな打ち方をしたら、
たちまち負けてしまうかを予測し、
その手は打たずに、
たとえ一マスでも負けるのが遅くなるような手を使うのがよい」
と答えた。
その道を極めた人の言うことであって、
研究者や政治家の生業にも通じる。
すごろく(双六) サイコロを振って、盤に並べた駒石を出た目の数だけ進め、相手陣に早く入った方を勝ちとするボードゲーム。インド発祥で、中国を経て奈良時代以前に日本に伝わり、賭けが行われた。二人で対戦する「盤双六」と、複数人が競争して上がりを目指す「絵双六」の2種類があるが、盤双六は幕末期に廃れ、現在は双六と言えば絵双六を指す。
◇
♪ 勝つと思うな 思えば負けよ
負けてもともと この胸の奥に
生きてる 柔の夢が
一生一度を 一生一度を 待っている
(歌:美空ひばり 詞:関沢新一 曲:古賀政男)
このところの負け碁は、
序盤がうまくいきすぎて
「この碁は もらった」と思ったら
あらら、最後は負けていることが多い。
逆に、最初にしくじって劣勢になっても
我慢を重ねているうちに、
相手の一瞬の隙が見えて
そこで逆転することもあるにはある。
なんとも不思議であるな。
どうにもとまらない、
やめられない。