【歴史を知らねば深層を理解することは出来ない】
これはフィクションです
とある新興住宅街のはなし
バブル経済と破綻
そして特定イデオロギー
これがカオスの始まりである
昭和末期~平成初期に起きた
バブルの狂乱地価上昇のなか
未開発で残っていた市北部の
丘陵地に目を付けた建設業界が
宅地開発にシノギを削った
〝千里オールドタウン〟と揶揄された
万博跡地周辺丘陵地の中古マンションを
東京の大手不動産会社が買占め始めた
銀行と結託した転売目的である
高値で求めたことによって
通勤圏内の土地付き一戸建てが
飛ぶように売れ始めた
1985年のプラザ合意を発端とし
六年後の破綻まで続く
バブル狂乱景気である
抽選で購入権を獲得するという
いま思えば、異常事態だった
住宅会社も銀行もイケイケ
男もようやく土地を買って
小宅をこしらえてもらった
その後に越してきた遊び友達は
「千里の中古マンションが
1億円以上で売れたので
1億2000万円で一戸建てを
購入することができた」
と笑っていたのだ
2区画以上を買って
豪邸を建てる金満家も
そこそこいたが
土地高騰以前に購入した
男の家の周辺はフツー
そのものだった
バブルがはじけてから
地価はどんどん下がり続け
いまとなっては高級どころか
どこにでもある、すこしさびれた
〝中級住宅地〟となっている
永い冬は いまも続いている
ここは都会のマンションと
町内関係の空気感が似ている
大坂のコテコテ感は微塵もない
当時から近所付き合いもほぼなく
ヨソモノの集まりのまま
だが、防犯その他の関係で
この国においてはむかしから
自治会(町内会)を必要とし
ある人物が毎年立候補しては
自治会長を何年も務めた
自宅玄関前に某政党ポスターを貼っていて
政党活動の一環となる各種催しを企画しては
党勢拡大の役に立てる算段だったようである
「特定政党支持者が自治会長を独占していいのか」
との声も、あちこちで出始めた
しかし、自治会長のなり手はなく
「政治に我関せず」の住民が多数
それを幸便に、その人物は会長職に
長くとどまり続けた
諸行事が増え役員業務が膨大になり
役員就任を敬遠するような風潮が
ますます強まっていく
一方、男は転勤族だったので
家族連れ、あるいは、単身赴任で
この地をは離れることが多かった
ローンだけは払い続けていた
残った父母から奇妙なはなしを
聞かされていた
父は生前、某保守系国会議員から
「そういう人物が自治会長をしているから
ここには行政サービスが行き届かないのだ」
といわれた、と話していた
立腹していたが、自分が何かをする
という気持ちやら気概やらはなかった
さて、男が
最後の東京単身赴任から帰り
定住する覚悟を固めたが
「転勤族の悲しさ」から
地域での足場が全然ない
「趣味の会」や「自治会」の役員になり
少しづつ挨拶する人が増えたのは
ここ数年のことだった
◇
「会長など主要ポストが
強制的ボランティアなのか」
「なり手がなくなって
〝クジ引き〟となったのか」
これ以上書かずとも
賢明な皆さんはお判りでしょう
日本中どこでもある話です
ベストの選択肢ではないが
最後に残ったベターな解決策
もしも
国会議員を無報酬としたら
どんな人物が立候補するのか
想像ができるでしょうか
なり手が全くないか
欲得のない仙人か
権力は必ず腐敗します
清廉な高い志を持っていた
はずの人物が〝変貌する〟のは
普遍的にみられます
プラトンの哲学王は理想にして
現実には存在しません
彼が後期の作品で
哲学王を取り上げなくなったのは
理想を求めたとしても非現実的だ
と思わざるをえなかったのでしょう
直近では
ウクライナ侵略戦争が
日々のトップニュースです
「正義」を振りかざし
自己主張するだけの
小人物が暴走するのは
20世紀に何度も経験した
デジャブであることに
気が付くでしょうか
◇
自治会、PTA、趣味の会
すべて同列にとらえるわけにはいきませんが
世話人を買って出る人は少なくなっています
「そんなことをして何になる」の声もあります
世の中の世話になってきた年配が
今度は社会にお返ししようとは考えない
個人主義を正しいとか間違っているとか
そういうつもりはありません
が、自己中心的小市民の善人ですから
たちが悪い、始末できないのです
そういう風潮が
この国に「まん延」しています
どんなクスリが効くのでしょうか?
それが、行き着いた先が
「クジ引き」だとしたら
笑いごとではありません