![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/68/c3/f4f28a59b18a6db7f7cbb6c8d7b2b54a.jpg)
ブラックホールに取り込まれたら一体どうなるのだろう? 誰もが抱くこの疑問に、物理学者が奇妙すぎる解答を提出したとの情報が飛び込んできた。なんと、ブラックホールに取り込まれた人間は「クローン」として複製されるというのだ!
■ブラックホールは巨大コピー機だった!
宇宙空間に存在する極めて高密度かつ大質量であるブラックホールは、その重力があまりにも強力なため付近のあらゆるもの飲み込み、光でさえも引き寄せるという「宇宙の墓場」だ。一般的な物理学に基づけばひとたびブラックホールに吸い込まれてしまった物質や情報は、海ならぬ宇宙の“藻屑”として跡形もなく消滅してしまうとこれまで考えられてきた。
【その他の画像はコチラ→http://tocana.jp/2016/12/post_11812.html】
しかし、ブラックホールが取り込んだ物質と情報が最終的にブラックホールの蒸発によって全て完全に失われるという事態は、「情報は無くなりもしなければ作られることもない」という量子論の原則を破ることになるため、「ブラックホール情報パラドックス」と呼ばれるこの矛盾に理論物理学者たちは日々取り組んできた。そのいくつかの成果はこれまでにトカナでもお伝えしてきた通りだ。
1つは、理論物理学者のサミア・マッサ氏が提唱するファズボール(fuzzball)仮説。この説によれば、ブラックホールに落ちた人間は決して消滅するのではなく、見た目のうえでは立体的な“ホログラム”になってブラックホールの表面に“貼りついて”保存されるのだという。人間の身体がまるで蜃気楼のようなスケスケの姿になるとはいえ、その存在はブラックホールに落ちても残るということだ。実体は2次元であるホログラムに姿を変えることによって質量がなくなり、「ブラックホール情報パラドックス」の矛盾を起こすことなく情報が保存され、ブラックホールの蒸発に伴って外部に出てくるという。
また、世界的に有名な理論物理学者スティーブン・ホーキング博士も、ブラックホールの境界面でとどまっていた情報は、まったく別の世界、つまり“パラレルワールド”へ送られるという仮説を提示している。
どれも状況を想像することさえ難しいユニークな理論であるが、英紙「Express」(12月15日付)によると、ミシガン州立大学の物理学者クリス・アダミ教授が、さらに奇妙な新説を唱えているという。なんと「ブラックホールは“コピー機”」だというのだ! 一体どういうことだろうか?
■2人の同じ人間が同時に存在する?しない?
これまでにも、ブラックホールに取り込まれた情報が“完全に”コピーされるという説は存在した。たとえば、“1人の宇宙飛行士がブラックホールに飲み込まれる“という場面では、2つの異なる視点を設定することが可能となる――飲み込まれる宇宙飛行士を遠くから眺める観察者の視点と、宇宙飛行士自身の視点である。この場合、遠くから眺めている観察者の視点では、宇宙飛行士は(光が届くギリギリの圏域である)事象の地平面にとどまった状態で観察される。一方、宇宙飛行士自身は事象の地平面を超えて特異点(重力場が無限大となるような場所)まで落ちていくことが可能とされているため、彼の視点からはブラックホール内部を落下する自分が観測される。すると、事象の地平面の外側と内側で2人のまったく同じ人間が存在するというパラドックスが生じてしまうのだ。
アダミ教授によると、このことはちょうど“完璧な自画像を描くことが不可能”であるのと同じだという。自画像に筆を入れる度に、オリジナルの動きに変化が生じるため、まったく現在と同じ自己を描くことはできないというわけだ。あるいは、“どんな些細な情報をも網羅した完璧な世界地図を作ることはできない”ということもできるだろう。地図製作者が描いているその地図そのものが、常に新しい情報として書き込まれなければならないため、世界の全情報と完璧に対応した地図が完成することはない。
「ブラックホールが物理法則に従っていて、量子情報をコピーしていることが数学的に分かりました。しかし、“完全なコピーを複製することはできない”という点がポイントです」(アダミ教授)
「多くの重力研究者が、パラドックスを解決しようと奮闘してきました、彼らは間違った道具を使っていたのです。パラドックスを解決するためには、量子情報理論を使わなければなりません。ほとんどオリジナルと同じ量子的なクローンが作られるという我々の理論はすでにかなり研究されていました。あとは、理論をブラックホールにあてはめるだけでした」(同)