日雇い労働者の「居場所」 あいりん総合センターが31日閉鎖 大阪・西成日雇い労働者が仕事を探して集まる「あいりん総合センター」(大阪市西成区)の労働施設(1~4階)が31日、老朽化により完全に閉鎖される。高度経済成長期の労働力を支えたあいりん地区(通称・釜ケ崎)の象徴でもあったが、耐震性の問題も発覚。2025年をめどに新施設に建て替えられ、敷地内のスペース活用も含めて地元で検討が進む。
大阪府によると、JR新今宮駅南側にあるセンターは、地上13階、地下1階建て。国や大阪府・市が1970年に設置した。5~13階には労働者を無料か低額で診療する病院施設と市営住宅があり、1~4階に仕事をあっせんする西成労働福祉センターと職業安定所などの労働施設が入る。1階には、日雇い労働者が「求人車」で乗り付けた関係者と向き合って求職活動をする「寄せ場」があった。
利用する労働者は、90年ごろのピークの年間約180万人から約40万人に減少し、施設の老朽化も進行。2009年の耐震診断を機に労働施設を仮移転し、現地で建て替える方針が16年に決まっていた。寄せ場は3月末で閉鎖され、4月以降は仮移転先に車26台分のスペースが代わりに設けられる。
西成のまちづくりに取り組む近畿大の寺川政司准教授(まちづくり論)は「高度経済成長期のシンボル的な場所だったが、大阪で2度目の万博開催が決まり、重要な転換期にある。新施設は、労働・福祉拠点の文化を生かしながら新たな機能が融合して地域が活性化すれば」と話す。
現在のあいりん総合センターには食堂や娯楽室、シャワー室などがあり、労働者の「居場所」にもなっている。居場所がなくなると反対する声も一部であるが、市はセンター南側の市立萩之茶屋小学校跡地にテントや仮設トイレを設置。路上生活者が一夜をしのぐ臨時夜間緊急避難所の利用時間を3時間半延長し、国も職業安定所の待合室を土日祝日にも開放する予定という。
30年以上、寄せ場を利用している西成区の男性(72)は「時代の流れで仕方ないかもしれないが、通い慣れた施設がなくなるのは寂しい感じがする。安定して就労できるようにしてほしい」と語った。