「助けて!」 保育士殺害、捜査員も驚いた同僚女性宅への侵入手口
「週刊文春」引用
東京都杉並区のアパートで照井津久美(つぐみ)さん(32)を殺害したとして、3月30日に逮捕された保育士の松岡佑輔容疑者(31)。彼の首筋には、被害者が抵抗した際に付いたミミズ腫れのような擦り傷がはっきりと残されていた。
【写真】亡くなった保育士・照井津久美さん
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アパートの一室から悲鳴が聞こえたのは3月26日の正午頃のことだった。
「照井さんはコートを着たまま倒れており、背中の左側には、柄の部分が取れた刃物が刺さり、傷は胸の近くまで達していた。首には圧迫痕があり、室内には激しく抵抗した痕跡も残されていました。2人は、杉並区内の乳児院で保育士として一緒に働いていました」(捜査関係者)
事件当日、夜勤明けの照井さんは自宅に戻ったところ、室内にいた松岡と揉み合いになったとみられる。「松岡は前日から休みを取っており、照井さんの留守を狙って部屋に忍び込んでいた。捜査員が驚いたのがその侵入手口。犯行前夜、黒い膝丈のコートを着用した松岡は、“クモ男”のように、2階建てアパートの屋根によじ登って、ベランダに忍び込んだ。そしてバーナーのようなものでガラスを熱し、工具で割って入室しているのです」(同前)
照井さんは北海道の高校を卒業後、東北福祉大学に進学した。
「福祉心理学科で臨床心理を学び、吹奏楽部に入っていました。保育士を目指して上京し、約10年前に現在の乳児院で働きだした頃、『職場の人も大家さんも、すごく優しい人で安心した』と話していました」(親族)
一方、松岡容疑者は神奈川県横須賀市の出身。地元の高校を卒業すると、県内の鶴見大学短期大学部の保育科に進学した。
「両親と兄の4人家族でした。お母さんはカラオケ好きの元気な人ですが、お父さんは大人しい。佑輔君はお父さんに似た性格でした。中学時代は剣道をやっており、防具を入れた大きな荷物を背負って歩く姿を見かけたことがあります。保育士の仕事が決まったとき、お母さんが喜んでいたのを覚えています」(地元住民)
彼女には交際している別の男性がいた
上京後、杉並区内のアパートで暮らし始めた松岡。
「ベランダから部屋の中を覗くと、無造作に衣類などが積み上げられ、その上にゴミが置かれ、不潔な感じでした。夜になるとゲームの大音量が漏れてきていました」(近隣住民)
そんな2人は約6年前に、勤務先の乳児院で出会う。照井さんに対し、松岡が熱を上げていたという。
「照井さんは、主任を任されており、明るい女性でした。松岡が照井さんを好きだったことは周囲の人間も気付いていましたが、彼女には交際している別の男性がいた」(乳児院関係者)
照井さんの祖母は週刊文春の取材に「本当に悔しい」と声を振り絞り、こう話した。
「津久美は、『おばあちゃん元気にしてる?』とお守りと一緒に手紙を送ってくれるようないい子でした。『赤ちゃんって、1年も経てば1人で歩けるようになるんだよ。私、子供と結婚したいな』と冗談を言うほど、本当に子供が大好きでした。どうして津久美が殺されなければいけなかったのでしょうか……」
誰にでも優しかったという照井さんは、母親に生前、こう語っていたという。
「今は忙しいけど、いつかおばあちゃんにひ孫を抱かせてあげたいね」
クモ男の“狂愛”により彼女の夢は潰(つい)えてしまった。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2019年4月11日号)