仙台市中心部の商業ビルを運営する地元企業に、テナントの家賃を減免する動きが広がっている。新型コロナウイルス感染拡大の影響を考慮した対応だが、運営側も金融機関への返済などがあり苦しい事情は一緒。「共倒れ」の事態に陥りかねないため、早期の公的支援を求める声が上がる。

 酒類卸売・不動産業のカネサ藤原屋(仙台市)は、東北一の歓楽街国分町で所有・管理するビル16棟の入居テナント約270店について、5月の家賃を5割、6月は3割、7月は2割を減免する。

 テナントの飲食店の多くは休業中で、既に10軒ほどが退去を決めた。飲食店向けを含む酒類の売り上げが3月で前年比3割減、4月前半で7割減と落ち込んでおり、担当者は「東日本大震災の時も減免して支えた。共に乗り越えようという思いだ」と話す。

 市中心部に複数の商業ビルを所有する不動産業者は「このままでは街が死ぬ」と嘆く。テナント約50店について、3カ月間3割を目安に家賃を割り引く。合計数千万円に及ぶ負担が重くのしかかる。

 テナントの家賃支援策については、国会でも議論が進んでいる。この不動産業者の担当者は「金融機関への返済が毎月あり、これ以上続けるとこちらがもたない。早く支援の具体策を明らかにしてほしい」と強く訴える。別の不動産業者も「せめて減免した分の半額は穴埋めしてもらいたい」と訴える。

 JR仙台駅前の大型商業施設も減免方針を決めている。4月18日から休館中のエスパル仙台は、家賃の一部となる4月分の最低保証金を半額にした。5月も同様の措置を続ける方針。渡辺典男副店長は「まずは社内で経費削減やイベントを中止し、費用を捻出する」と話す。

 イービーンズ(仙台市)も休業中の家賃を取らない。佐藤勝彦館長は「閉めても地獄、開けても地獄の状態。テナントやビルは何を信じて自粛すればいいのか。早くてコンパクトな支援策が必要だ」と求める。

 仙台パルコなど全国に展開するパルコ(東京)も各店が一定の基準を設け、減免する。

 仙台市内の不動産業の関係者は「ビルオーナーにとってテナントの撤退が一番の痛手なので、支援策を待たずに減免交渉に応じている。敷金分を回して一時的に対応できるものの、半年ほどで苦しくなるだろう」と指摘した。