-ALKAN-

しどろもどろでも声は出るなり。

銀河焼酎¥999

2017-11-27 16:28:25 | 日記
 えぇ、無職でも酒は飲むのです。
 
 酒は飲むべし、酒は飲むべし、人生酒ありてのみ、肝開く。

 人生は酒に始まり、酒とともに終わる。そう、私の亡父がそうであった様に。

 おもえば気が狂ったかのように酒を飲む人でした。一度東京の私の住まいを訪れた時、新宿で待ち合わせたのですが、その当時はもう中年というよりも老年に近い年だったので、あんまり脂っこいものはダメかと思って、息子なりに気を使って海鮮居酒屋に連れて行こうとしたら、「わしは焼き肉が食いたい」と言い出し、焼き肉屋に行くとそこで、ウイスキーやら、マッコリをまあ、親の仇の様に息子の前で飲み始めて、すっかりいい調子で夜の新宿の街に消えていったのを思い出します。

 どこか乾いた感じのする人で、それは心の渇き。渇望する何かがあったように感じます。「アニキは、破滅的な飲み方する人やったなぁ」と通夜の夜、亡父の七つ下の叔父が言っていたのを思い出します。飲みに行く前に、「おう、お前、今夜はもう出掛けへんやろ?」と、一応確認するのだそうです。いるとわかれば、鉄砲玉、ハナから自力で帰ってくる気はなかったそうです。「何べんアニキおぶって帰ってきたか」と、懐かし気ではありますが、本当に迷惑げに話してくれた叔父の顔が浮かびます。 その節は、アホの親父がすんません。

 あんな酔っぱらって、自分をどこに連れて行こうとしていたんでしょうな。あるいは自分で自分に訊いていたのかもしれません。で、お前は一体、どこに行きたいねん? て。

 金欠でも優しい酒、それは紙パックの焼酎。一升千円弱という、破壊的価格。その中でもよく見ると、『甲類乙類混合』というやつがあり、それはさらに安い。
ワーキンクラスの酒だぜ、と喜んだが、私はそのワーキンクラスでもない。フリーライフファンタジスタの酒だぜ。とその混合酒を手にした瞬間、ゴダイゴが聞こえてきた。「さあ、行くんだ。その顔を上げて」ふと見上げると、スギ薬局の棚の少し高い場所に、『博多の華』という紙パック焼酎があった。

 昔、『銀河鉄道999』でラーメンを食べた主人公の鉄郎が「うわぁ、マスター、このラーメン合成じゃない!」と言っておいしそうに食べていたのを思い出す。その博多の華は、混合酒ではなく『本格焼酎』と書かれてある。「うわぁ!マスター、この焼酎合成じゃない!」と思わず叫んでしまうところでした。

 三千世界の烏を殺し、主と朝寝がしてみたい。 いや朝寝はもう結構。早く治して働きたい。いや、本当の本心を言えば、働きたくない。ただただ、楽しく暮らしたい。


--------------------------------------------運命の道を歩いてみよう(その9)-----------------------------------------------------

 湯川は心外だという表情を一瞬見せたが、すぐに見たこともない、酔っ払いとも違う、静かな発狂とでもいうべき蛇の鱗のようなヌラヌラとした表情を浮かべて言った。

「じゃあ、どうでしょう? 重村、おれ……、まあばい菌でもいいですけど、内海、会社、マスコミ、警察の中で、一番何の役にも立ってないのは、誰でしょう?」
 
 怒りが腹の底から湧き出して一気に爆発しそうになった。だが内海には会社のために尽くし生きてきたのだという強い自負があった。今は風前の灯火でも、自分はこの会社の栄枯盛衰をつぶさに見てきたし、そのどこにも誰にも恥じるところはない。まさに自分にとってこの会社は人生の主戦場であり、それを否定することは、自分の人生を否定することと変わらない。過ぎ去った若き日の、同僚達の活気にあふれていた笑顔や怒声。その中にもしっかりと刻み込まれた、それは掛け替えのない記憶であり財産であり、何にも勝る人生の宝なのだという矜持があった。(社員一人一人にはな、それぞれの人生を掛けた大切な思いがある。そのことを、お前らゆとり世代の、しれっとした、結果を数字でしか理解できない若造はまるでわかっていない。今日だって飲みに誘ってくるから妙だと思ったが、やはりそういう事か。もうカミングアウトしても構わないほど、それほど会社の業績が悪化していると見越しての事なのか、店に入る早々耳元で「年末までつけを引っ張ればタイムアウトで倒せますよ」なんて囁きやがって)

 このいけ好かない若造の生意気な質問をどう切り伏せてやろうかと、そういう思いで内海は、自分を出来るだけ落ち着かせようとしたのだった。

「ほとんど俺だと、言っているようなモノだな、おい」内海は敢えて笑ってみせた。

「いえいえ! 」だが湯川は首を激しく振った。


 
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 暇に任せて | トップ | 決まりはないがただ従うだけ。 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿