「イギリス医学雑誌(BMJ)」に掲載された研究によると、アメリカでは(塩分、糖分、脂肪を含む加工済み食品である)「超加工食品」が全エネルギー摂取量の約60%を占めている。この中には防腐剤、乳化剤、甘味料、人工香料などの不明瞭な多くの成分を含むスナック菓子、炭酸飲料、カップ麺、レトルト食品が含まれる。
超加工食品が心臓病、糖尿病、結腸がん、そして肥満などの病気のリスクの増加と関連があることは多くの研究からわかっている。そして、これらの食品が老化を早める可能性について新たに示唆されたのだ。
老化と聞くと、年齢を思い浮かべがちだ。しかし、「生物学的年齢」というもう1つの年齢がある。生物学的年齢は細胞や組織の効率や機能などの状態を示すものであり、早めたり、遅らせたり、さらには逆行させることも可能なため、通常の年齢と異なっている。
この生物学的年齢が食事からどのような影響を受けるかについて、イタリアの科学研究所(IRCCS)とカサマッシマのLUM大学の研究者らが、食事に関する詳細なアンケートと、生物学的年齢を表すとされる30種類以上の血中分子に関する2万2000人以上のデータを分析。
その結果、超加工食品を多く摂取する人々は、通常の年齢よりも生物学的年齢が高い傾向があった。つまり、超加工食品の摂取が生物学的老化の加速に強く関連していたのだ。本研究の筆頭著者でIRCCSの疫学・予防研究ユニットのシモナ・エスポジト氏は次のように述べている
「超加工食品の摂取量が多いと、健康に悪影響を与えるだけでなく、老化そのものを加速させる可能性があることを示しています。これらの食品の栄養価の低さを超えた相関関係をデータは示しています」
ただし、その関連性の背後にある正確なメカニズムはまだ明らかにはなっていない。これらの食品は栄養バランスが悪いだけでなく、 糖分、塩分、飽和脂肪やトランス脂肪が豊富で、さらに加工によって食品そのものの構造が変わり、栄養素や繊維が失われることを共同執筆者で栄養疫学者のマリアラウラ・ボナッチオ氏は指摘する。
重要なのは超加工食品が、私たちが考えているような鮮やかな色の添加物が加えられた炭酸飲料や、保存添加物の入っている加工肉だけではないということだ。
パン、フルーツヨーグルト、 砂糖入りのシリアルなど、一見、無害に見える製品も生物学的老化の加速に関連しているとして、共同執筆者で疫学・予防研究ユニット長であり、LUM大学の衛生学教授のリチア・ヤコヴィエッロ氏は次のように述べる。
「栄養価の高い加工食品であっても、超加工食品と分類すべき製品もあります。ですから、食品加工の度合いに注目した食事指導の必要性があるのです。本研究は、現在の食事に関する推奨事項を再評価する必要性について改めて提起するものです」