思い立ったが吉日、今回はDVDを全て所有しているファン視点から、お笑い芸人グループであるザ・プラン9のレビューを書く。ファンのファンによるファンとしての応援コメントだけでは、参考にならないと思うため、「プラン9自体が初見なら」と「笑い密度」、「芝居寄り度合い」について、それぞれ星5つまでで評価させてもらう。笑いに対する食指は人それぞれのため、独断と、或いは偏見も含まれてしまう可能性に関して、予め断っておく。参考までに、私が好きなお笑いは、磁石、エレキコミック、東京ダイナマイト、二丁拳銃などである。また、私が思うプラン9のスタイルは、東京03の芝居指向と、二丁拳銃の上方演芸の血を併せ持ったような方向性だ。今回レビューにあたるDVDは、全て本公演のものにした。これらとは別に、プラネット9というオムニバスのコントDVDもリリースしているが、それらはあくまで純度100%のコントであり、お笑い好きであればどれも一様に推薦でき、冒頭に書いた、ただの応援コメントに成り下がることを危惧した結果、省く方向にした。また、これら本公演のDVDは、リーダーでもあるお~い久馬(脚本家としては久馬歩名義)もしくは影の構成員として舞台には出ないが、演出や脚本を担うことがある覚王山によって描かれる物語を土台に、お笑い要素が加味されている。長尺のロングコントと捉えることも可能ではあるが、その辺りは少々、他の芸人と比べて特殊なため、(初見の方は)前情報無しでは悪い意味で期待を裏切られてしまうおそれがある。しかし、そんな人たちにこそ知って欲しいという思い、DVD選びを失敗したことにより見限られては勿体無いという思い、無性にそわそわして眠れないから何か書くかーっつう衝動から、こうして筆を取った、正確にはキーボードに左手をスタンバイした次第である(ほとんどの場合、タイピングは左手だけで行っている)。
12th「サークルS」
ネットにてチャットが流行してから暫くした頃だったか、今となっては昔流行した時事、自殺(Suicide)サークルをテーマにした話。テーマが暗いこともあり、決して明るく茶化すような作りでない為、これだけではお芝居の人達、と勘違いされかねない。だが、特典映像のボケ合いも加味して考えれば、笑いと演技、双方バランスはかなり取れているはず。また、彼らはこのような物語の中では、作中のキャラクター名を用いることを徹底している為、以降のDVDに関しても、その点は初見に優しい。
※普段通りの呼び名でないということは、そのキャラとして芝居をするということ。これにより、日頃ネタなどを観ている人にだけ向けたボケがし辛くなる。そのため、初見でも安心と言える。
初見向き ★★★☆☆
笑い密度 ★★☆☆☆
芝居寄り ★★★★☆
13th「西暦二〇〇X年四月一日、禁洒法ヲ施行スル。」
久馬さん脚本の話は、アンダーグラウンドなテーマが多い。物語の中でも、役者が芝居するという話。中盤までは明るいノリで、とりわけ笑いの量が多い。テーマを変えて試行錯誤する、という設定のため、ネタの種類も豊富で、個人的にはかなり好きな作品。ちなみに私のプラン9初見作品もこのDVDなので、「ちゃんとした演技パートがある」にも関わらず「笑いの部分でも十分に面白い」という、二段構えの驚きが得られた推薦品だ。芝居に関しては、ほとんど終盤に集約されているので、非常に熱演ではあるが、全体的に見てあまり芝居寄りと言えないだろう。
初見向き ★★★★★
笑い密度 ★★★★☆
芝居寄り ★★★☆☆
14th「The Ten-Show」
歴史上の偉人に転生する(生まれ変わる)ため、その方法を研究する医学生たちの話。ゲスト出演もあり、ネタの一部にしても、よりお笑い好きな人のほうが向いているだろう。かなり大きな笑いの部分が、ネタ元を知らないとよく分からないだろうと思う。全体的にコンスタントに笑いが入る為、お笑いとして安心して観られるが、その分、芝居の要素が薄れている。前半でもし、好意的に受け取れないとしたら、後半は学芸会と思われる危険性を孕んでいる。そういう意味では彼らのスタイルを知らない人には、少々お薦めし難い。
初見向き ★★☆☆☆
笑い密度 ★★★★☆
芝居寄り ★★☆☆☆
15th「弁斗とジェッ太~大阪ブレインドレイン~」
漫画家として荒稼ぎするチームの物語。客演の竹中絵里(現:幸田恵里)は、プラン9の公演で、多数の作品に出演する常連女優だ。話自体はよくある感動系のため、理解に優しくとっつき易いだろう。また、各々がプロの漫画家を目指している、という設定を利用して、描いた漫画を再現する完全なコントパートが存在するのは、お笑い好きにとって嬉しいところ。この手法は話の繋がりを無視できるため、おそらく作り手としても中弛みを解消し易いだろうし、観る側としても多くのパターンの笑いが得られるので嬉しい。また、それぞれが実際に漫画のようなキャラ付けがされているため、初見でも個人の区別がし易いだろう。ただ少々、子供向けと捉えられてしまうおそれもあるにはある。あまりブラックな傾向にないのは、脚本が覚王山ゆえと思う。
初見向き ★★★★☆
笑い密度 ★★★☆☆
芝居寄り ★★☆☆☆
16th「こわがり」
泥棒と医者の奇妙な繋がりを描いた物語で、「世にも奇妙な物語」のような、恐ろしさとミステリアスな要素が入る脚本は、久馬さんらしさである。毎回恒例の、アドリブミニゲームコーナー(いつも5分程度)は今回もあり、全作品の中で一番面白かった。とはいえ、初見だと伝わらないと思うので、このDVDを観賞する前に、他のプラン9作品を観ておくことをお薦めしたい。ちなみに今作に関しては、パッケージのほうがよっぽど怖いわけだが?怖がりたいのはこっちのほうですけどみたいな?的な話もあるとかないとか。
初見向き ★★☆☆☆
笑い密度 ★★☆☆☆
芝居寄り ★★★★☆
17th「アオいアオいアオい空」
覚王山脚本の、まったく毒気の無い作品。ギブソン扮する人気キャラの出てくる、青春ロードムービー。もう少し笑いを減らしたら、どこぞの劇団が市民会館にやって来て、戦争の話を上演し、社会見学で見に行かされる、ような内容。客演の竹中絵里と土平ドンペイも、主要人物として出ずっぱりだ。爽やかで女性人気が高そうに思うが、初見でこれを観たとして、ところどころ笑いを欲しがる劇団員、に見えなくも無いという不安はある。見易さに関しては、ずば抜けて高いものの、お笑いらしくなさが初見向きと言えないような気がする、そういう意味で評価が割れそうである。爽やかな青春コメディ。
初見向き ★★★☆☆
笑い密度 ★★☆☆☆
芝居寄り ★★★★☆
18th「編集者竹一平の苦悩」
小説家の竹一平が、個性豊かな作家陣に翻弄される、そんな苦労を描いた話。これを観るとなかなか大変そうだな、と印象付けられるが、ことサザエさんに於いてはノリすけこそストレスが無さそう。このお話も、小説家の話と言うことで、それぞれの作家が書いた話、としてオムニバス形式にコントパートが組み込まれる。そうした連続で、最後にそれらを総括した結びのコントで締めるため、構成としても通常のお笑いコントDVDに似た作りである。
初見向き ★★★★★
笑い密度 ★★★★☆
芝居寄り ★★☆☆☆
19th「7-8×4月」
客演が多く、基本的にはスポ根ものなので、初見ではおすすめし難い。プラン9のコント中においても人気のキャラが登場するのは魅力的。また、ジパング上陸作戦のチャド・マレーンが特典にまで単独出演という優遇ぶりには驚かされた。実際、劇中に於いて、なくてはならない重要なキャラクターであるから納得できる。野球をテーマとしているだけあって、最低でも9人必要、試合には審判も要るため、さらに1人必要になる。そう、出演者の半分がプラン9のメンバー以外で構成されている。そこにきて、濃いキャラクターを起用しているため、当のプラン9たちの影が薄く、初見にこれを選択しても、チャドにばかり目がいくことだろう。「こっちのDVDにはチャド出てくるかなぁ?」と期待されては本末転倒だ。
初見向き ★☆☆☆☆
笑い密度 ★★★☆☆
芝居寄り ★★★☆☆
20th「なゐ震る」
地震をテーマにした、地震研究生たちの話。その内容もあって、3.11以降、敬遠する人は多いだろう。勿論、これ自体はそれより何年も前に作られたものなので、当人たちには何の悪意も無い。あの災害によって、現地ではなくとも心に痛手を負った人は多いだろうと思う。最後まで観れば解るが、かなり真面目な内容のため、フラッシュバックの恐れもある。だから安易に薦めることが憚れるのだが、全作品の中で、これは特に笑いが多い。実際にかなりの規模の大地震が起きたことで、この作品の世界観に「ありえなくもない」という説得力が加わった今こそ、お笑いの場面とシリアスな場面とのギャップが、互いに笑いと恐怖を増幅させることだろう。重ねて述べるがフラッシュバックし兼ねない人にはお薦め出来ない。
初見向き ★★★☆☆
笑い密度 ★★★★★
芝居寄り ★★★★☆
21st「銀行ノススメ」
客演も多く明るい雰囲気の物語。とある銀行の、日常の風景を描くが、最終的には久馬節が炸裂する。明るく楽しく、舞台劇としては好印象だが、当のプラン9は活躍の量(出演時間)にかなり差がある。たとえばメンバーの中で鈴木司とヤナギブソンの出番が非常に少ないのが残念。初見でこれを選んでしまうと、面白さは別にして、メンバーの個性などが伝わらないと思うので、初見向きではないと思う。
初見向き ★★☆☆☆
笑い密度 ★★★☆☆
芝居寄り ★★★★☆
22nd「功夫ジョン完全版」
本公演の中でも長編の部類で、題名通りカンフーを題材とした覚王山脚本の作品。ジャッキー・チェンやブルース・リー、サオハン・キンポーなど、往年のカンフースター映画が好きなら必見。好きではなかったとしても、他作品と比較して笑いが多いほうなので、初見でも安心して楽しめるはず。客演も多いが、全員が主役として見られる(それぞれバックストーリーを感じさせる)ように、よく作りこまれていると思う。覚王山の脚本は、本業だからというのもあるだろうが、誰もが楽しめるよう、毒の無いテイストで仕上げている。ゲスト出演には、最近「吉本新喜劇」の新座長に就任したことでもお馴染み「すっちー」が、すち軍曹を披露してくれる。しかも、この作品は、まだビッキーズ解散前のため、今はお笑いから引退してしまった木部ちゃんも観られる。あとは、新喜劇のターミネーターも大活躍している。
初見向き ★★★★★
笑い密度 ★★★★☆
芝居寄り ★★★☆☆
23rd「仇男」
本公演のDVDで、鈴木司の活躍が観られるのは、残念ながらこれが最後となる。この脚本は、物語開始時点で久馬さんらしいブラックテイストに溢れている。そもそもの設定が「憎い人を1人だけ殺しても許される仇討ち法という法律が実験的に施行された」という、バトルロワイヤルを彷彿とさせるようなもの。実際、人によっては苦手であろう場面が、かなり大胆に登場する。最後の大オチも含めて、面白いというより怖いという印象として残りかねない。そういう意味で初見向きではない。そして、メンバーそれぞれの役どころが、衣裳も含めてハマリ過ぎるほどハマっていて秀逸だ。ひとつ惜しいのは、有終の美を飾るべき鈴木司が、これ以上ないほどスベっている部分が、このDVDに残ってしまっていることだろう。
初見向き ★☆☆☆☆
笑い密度 ★★★☆☆
芝居寄り ★★★★★
SLIDE AWAY,SLIDE DOWN.
気付いただろうか、4人組となって再スタートを切ったためか、本公演のナンバリングが無くなった。そしてこれは覚王山の脚本なのだが、晩秋公演の名を恣にすべく、異様に暗い。話自体が異様に暗く、さすがに彼ら自体、歴が長いだけあって、演技が上手い。上手い所為で余計に暗い。途中からきっと、お笑いを観ているとは到底思えないだろうから、初見で観るべきではない。また、この作品だけ何故か、コントDVDとセットになったBOXでの発売もある。これだけでは笑い成分が無さ過ぎる、という恐れからの配慮だろうか。セットになっているのは「ウルグアイから来た男」で、プラネット9の流れを汲むコントライブを収録した作品。勿論そちらも単体で発売されている、正規のライブDVDである。もし購入するなら、ぜひBOXで買うことを推奨したい。
初見向き ★☆☆☆☆
笑い密度 ★☆☆☆☆
芝居寄り ★★★★★
室内の人々
前半は、ヤナギブソンの初脚本「お誕生日壊」、後半が久馬さん脚本の「a room」という2本立て作品。どちらも登場人物が違うのだが、マンションの一室で誕生会が行われている時、その隣の部屋では……、そういったシンクロニシティが楽しめる。笑いもコンスタントに詰め込まれているだけでなく、物語自体も後半で盛り上がりを見せるため、笑いと芝居との調和にバランスがとれた秀作だと思う。前半のギブソン脚本が、最後まで緩やかに進行する為、その時間全てがフリでしかないように見えるのが、些かせつなくもある。特典映像のミニコーナー別日バージョンも、本編が気に入ればきっと気に入る。初見で観るのはどうかと考えた場合、この作品でもとりわけ大きな爆笑の場面が、間違って捉えられる可能性があるようにも感じられるが、危ぶむべきはそれくらいである。
初見向き ★★★☆☆
笑い密度 ★★★★☆
芝居寄り ★★★☆☆
何かが正解です
これは、プラン9とは別に鈴木おさむの脚本による公演という、新しい試みの作品。彼自体が有名作家なので、さすがに解り易く、万人受けするであろう内容に仕上がってる。ある謎解きのために、みんなで過去を振り返る。同じ出来事でも、視点が変われば、全く別の話になってしまう。そうした連続で、最終的に謎解きとなるのだが、如何せんTVのバラエティっぽさが強い。「こういう流れで、こんな話になります、ここで何か面白いことを幾つかお願いします」という雰囲気のため、煎餅でも齧りながら観るような作品となっている。話にリアリティが無さ過ぎることも、せっかく演技できる人間を使うのに宝の持ち腐れに思える。時間の短さから、おそらく見易くコンパクトにまとめることを意識しているのだろうが、あまりにも説明不足なため、これまでのプラン9作品と比較して陳腐である。初見でこれだけ観てしまうと、何処にでもいる普通のお笑い芸人、として映りそうだ。本人たちが望んで方向性を変えようとしているならそれまでだが、これまでに培ってきた高い演技力を活かさないのは、正直勿体無いと思う。舞台演劇でもあり、お笑いでもあり、そこが彼らの魅力の一因と言えるため、折角なのでプラン9にしか出来ないものが観たい。今まではそうだった、しかしこれは違うと思う。
初見向き ★★☆☆☆
笑い密度 ★★★☆☆
芝居寄り ★☆☆☆☆
ザ・プラン9 are
お〜い!久馬(ボケ)
なだぎ武(ボケorツッコミ)
浅越ゴエ(ボケorツッコミ)
ヤナギブソン(ツッコミ)
and
覚王山(脚本or演出)
ex.
鈴木つかさ(ボケorツッコミ)
ツッコミは最年少のギブソンだけと思われがちだが、実はなだぎ、元々ツッコミ(顔と動きが当時からボケなくっていたが)だったため、ツッコミも問題無くこなせる。久馬さんは脚本がメインなっているくらい物書きが得意で、よしもとミッドナイトコメディでは、ゴエさんがレギュラー出演しているにも関わらず、久馬さんは脚本のみで一度も出演していないほど。
12th「サークルS」
ネットにてチャットが流行してから暫くした頃だったか、今となっては昔流行した時事、自殺(Suicide)サークルをテーマにした話。テーマが暗いこともあり、決して明るく茶化すような作りでない為、これだけではお芝居の人達、と勘違いされかねない。だが、特典映像のボケ合いも加味して考えれば、笑いと演技、双方バランスはかなり取れているはず。また、彼らはこのような物語の中では、作中のキャラクター名を用いることを徹底している為、以降のDVDに関しても、その点は初見に優しい。
※普段通りの呼び名でないということは、そのキャラとして芝居をするということ。これにより、日頃ネタなどを観ている人にだけ向けたボケがし辛くなる。そのため、初見でも安心と言える。
初見向き ★★★☆☆
笑い密度 ★★☆☆☆
芝居寄り ★★★★☆
13th「西暦二〇〇X年四月一日、禁洒法ヲ施行スル。」
久馬さん脚本の話は、アンダーグラウンドなテーマが多い。物語の中でも、役者が芝居するという話。中盤までは明るいノリで、とりわけ笑いの量が多い。テーマを変えて試行錯誤する、という設定のため、ネタの種類も豊富で、個人的にはかなり好きな作品。ちなみに私のプラン9初見作品もこのDVDなので、「ちゃんとした演技パートがある」にも関わらず「笑いの部分でも十分に面白い」という、二段構えの驚きが得られた推薦品だ。芝居に関しては、ほとんど終盤に集約されているので、非常に熱演ではあるが、全体的に見てあまり芝居寄りと言えないだろう。
初見向き ★★★★★
笑い密度 ★★★★☆
芝居寄り ★★★☆☆
14th「The Ten-Show」
歴史上の偉人に転生する(生まれ変わる)ため、その方法を研究する医学生たちの話。ゲスト出演もあり、ネタの一部にしても、よりお笑い好きな人のほうが向いているだろう。かなり大きな笑いの部分が、ネタ元を知らないとよく分からないだろうと思う。全体的にコンスタントに笑いが入る為、お笑いとして安心して観られるが、その分、芝居の要素が薄れている。前半でもし、好意的に受け取れないとしたら、後半は学芸会と思われる危険性を孕んでいる。そういう意味では彼らのスタイルを知らない人には、少々お薦めし難い。
初見向き ★★☆☆☆
笑い密度 ★★★★☆
芝居寄り ★★☆☆☆
15th「弁斗とジェッ太~大阪ブレインドレイン~」
漫画家として荒稼ぎするチームの物語。客演の竹中絵里(現:幸田恵里)は、プラン9の公演で、多数の作品に出演する常連女優だ。話自体はよくある感動系のため、理解に優しくとっつき易いだろう。また、各々がプロの漫画家を目指している、という設定を利用して、描いた漫画を再現する完全なコントパートが存在するのは、お笑い好きにとって嬉しいところ。この手法は話の繋がりを無視できるため、おそらく作り手としても中弛みを解消し易いだろうし、観る側としても多くのパターンの笑いが得られるので嬉しい。また、それぞれが実際に漫画のようなキャラ付けがされているため、初見でも個人の区別がし易いだろう。ただ少々、子供向けと捉えられてしまうおそれもあるにはある。あまりブラックな傾向にないのは、脚本が覚王山ゆえと思う。
初見向き ★★★★☆
笑い密度 ★★★☆☆
芝居寄り ★★☆☆☆
16th「こわがり」
泥棒と医者の奇妙な繋がりを描いた物語で、「世にも奇妙な物語」のような、恐ろしさとミステリアスな要素が入る脚本は、久馬さんらしさである。毎回恒例の、アドリブミニゲームコーナー(いつも5分程度)は今回もあり、全作品の中で一番面白かった。とはいえ、初見だと伝わらないと思うので、このDVDを観賞する前に、他のプラン9作品を観ておくことをお薦めしたい。ちなみに今作に関しては、パッケージのほうがよっぽど怖いわけだが?怖がりたいのはこっちのほうですけどみたいな?的な話もあるとかないとか。
初見向き ★★☆☆☆
笑い密度 ★★☆☆☆
芝居寄り ★★★★☆
17th「アオいアオいアオい空」
覚王山脚本の、まったく毒気の無い作品。ギブソン扮する人気キャラの出てくる、青春ロードムービー。もう少し笑いを減らしたら、どこぞの劇団が市民会館にやって来て、戦争の話を上演し、社会見学で見に行かされる、ような内容。客演の竹中絵里と土平ドンペイも、主要人物として出ずっぱりだ。爽やかで女性人気が高そうに思うが、初見でこれを観たとして、ところどころ笑いを欲しがる劇団員、に見えなくも無いという不安はある。見易さに関しては、ずば抜けて高いものの、お笑いらしくなさが初見向きと言えないような気がする、そういう意味で評価が割れそうである。爽やかな青春コメディ。
初見向き ★★★☆☆
笑い密度 ★★☆☆☆
芝居寄り ★★★★☆
18th「編集者竹一平の苦悩」
小説家の竹一平が、個性豊かな作家陣に翻弄される、そんな苦労を描いた話。これを観るとなかなか大変そうだな、と印象付けられるが、ことサザエさんに於いてはノリすけこそストレスが無さそう。このお話も、小説家の話と言うことで、それぞれの作家が書いた話、としてオムニバス形式にコントパートが組み込まれる。そうした連続で、最後にそれらを総括した結びのコントで締めるため、構成としても通常のお笑いコントDVDに似た作りである。
初見向き ★★★★★
笑い密度 ★★★★☆
芝居寄り ★★☆☆☆
19th「7-8×4月」
客演が多く、基本的にはスポ根ものなので、初見ではおすすめし難い。プラン9のコント中においても人気のキャラが登場するのは魅力的。また、ジパング上陸作戦のチャド・マレーンが特典にまで単独出演という優遇ぶりには驚かされた。実際、劇中に於いて、なくてはならない重要なキャラクターであるから納得できる。野球をテーマとしているだけあって、最低でも9人必要、試合には審判も要るため、さらに1人必要になる。そう、出演者の半分がプラン9のメンバー以外で構成されている。そこにきて、濃いキャラクターを起用しているため、当のプラン9たちの影が薄く、初見にこれを選択しても、チャドにばかり目がいくことだろう。「こっちのDVDにはチャド出てくるかなぁ?」と期待されては本末転倒だ。
初見向き ★☆☆☆☆
笑い密度 ★★★☆☆
芝居寄り ★★★☆☆
20th「なゐ震る」
地震をテーマにした、地震研究生たちの話。その内容もあって、3.11以降、敬遠する人は多いだろう。勿論、これ自体はそれより何年も前に作られたものなので、当人たちには何の悪意も無い。あの災害によって、現地ではなくとも心に痛手を負った人は多いだろうと思う。最後まで観れば解るが、かなり真面目な内容のため、フラッシュバックの恐れもある。だから安易に薦めることが憚れるのだが、全作品の中で、これは特に笑いが多い。実際にかなりの規模の大地震が起きたことで、この作品の世界観に「ありえなくもない」という説得力が加わった今こそ、お笑いの場面とシリアスな場面とのギャップが、互いに笑いと恐怖を増幅させることだろう。重ねて述べるがフラッシュバックし兼ねない人にはお薦め出来ない。
初見向き ★★★☆☆
笑い密度 ★★★★★
芝居寄り ★★★★☆
21st「銀行ノススメ」
客演も多く明るい雰囲気の物語。とある銀行の、日常の風景を描くが、最終的には久馬節が炸裂する。明るく楽しく、舞台劇としては好印象だが、当のプラン9は活躍の量(出演時間)にかなり差がある。たとえばメンバーの中で鈴木司とヤナギブソンの出番が非常に少ないのが残念。初見でこれを選んでしまうと、面白さは別にして、メンバーの個性などが伝わらないと思うので、初見向きではないと思う。
初見向き ★★☆☆☆
笑い密度 ★★★☆☆
芝居寄り ★★★★☆
22nd「功夫ジョン完全版」
本公演の中でも長編の部類で、題名通りカンフーを題材とした覚王山脚本の作品。ジャッキー・チェンやブルース・リー、サオハン・キンポーなど、往年のカンフースター映画が好きなら必見。好きではなかったとしても、他作品と比較して笑いが多いほうなので、初見でも安心して楽しめるはず。客演も多いが、全員が主役として見られる(それぞれバックストーリーを感じさせる)ように、よく作りこまれていると思う。覚王山の脚本は、本業だからというのもあるだろうが、誰もが楽しめるよう、毒の無いテイストで仕上げている。ゲスト出演には、最近「吉本新喜劇」の新座長に就任したことでもお馴染み「すっちー」が、すち軍曹を披露してくれる。しかも、この作品は、まだビッキーズ解散前のため、今はお笑いから引退してしまった木部ちゃんも観られる。あとは、新喜劇のターミネーターも大活躍している。
初見向き ★★★★★
笑い密度 ★★★★☆
芝居寄り ★★★☆☆
23rd「仇男」
本公演のDVDで、鈴木司の活躍が観られるのは、残念ながらこれが最後となる。この脚本は、物語開始時点で久馬さんらしいブラックテイストに溢れている。そもそもの設定が「憎い人を1人だけ殺しても許される仇討ち法という法律が実験的に施行された」という、バトルロワイヤルを彷彿とさせるようなもの。実際、人によっては苦手であろう場面が、かなり大胆に登場する。最後の大オチも含めて、面白いというより怖いという印象として残りかねない。そういう意味で初見向きではない。そして、メンバーそれぞれの役どころが、衣裳も含めてハマリ過ぎるほどハマっていて秀逸だ。ひとつ惜しいのは、有終の美を飾るべき鈴木司が、これ以上ないほどスベっている部分が、このDVDに残ってしまっていることだろう。
初見向き ★☆☆☆☆
笑い密度 ★★★☆☆
芝居寄り ★★★★★
SLIDE AWAY,SLIDE DOWN.
気付いただろうか、4人組となって再スタートを切ったためか、本公演のナンバリングが無くなった。そしてこれは覚王山の脚本なのだが、晩秋公演の名を恣にすべく、異様に暗い。話自体が異様に暗く、さすがに彼ら自体、歴が長いだけあって、演技が上手い。上手い所為で余計に暗い。途中からきっと、お笑いを観ているとは到底思えないだろうから、初見で観るべきではない。また、この作品だけ何故か、コントDVDとセットになったBOXでの発売もある。これだけでは笑い成分が無さ過ぎる、という恐れからの配慮だろうか。セットになっているのは「ウルグアイから来た男」で、プラネット9の流れを汲むコントライブを収録した作品。勿論そちらも単体で発売されている、正規のライブDVDである。もし購入するなら、ぜひBOXで買うことを推奨したい。
初見向き ★☆☆☆☆
笑い密度 ★☆☆☆☆
芝居寄り ★★★★★
室内の人々
前半は、ヤナギブソンの初脚本「お誕生日壊」、後半が久馬さん脚本の「a room」という2本立て作品。どちらも登場人物が違うのだが、マンションの一室で誕生会が行われている時、その隣の部屋では……、そういったシンクロニシティが楽しめる。笑いもコンスタントに詰め込まれているだけでなく、物語自体も後半で盛り上がりを見せるため、笑いと芝居との調和にバランスがとれた秀作だと思う。前半のギブソン脚本が、最後まで緩やかに進行する為、その時間全てがフリでしかないように見えるのが、些かせつなくもある。特典映像のミニコーナー別日バージョンも、本編が気に入ればきっと気に入る。初見で観るのはどうかと考えた場合、この作品でもとりわけ大きな爆笑の場面が、間違って捉えられる可能性があるようにも感じられるが、危ぶむべきはそれくらいである。
初見向き ★★★☆☆
笑い密度 ★★★★☆
芝居寄り ★★★☆☆
何かが正解です
これは、プラン9とは別に鈴木おさむの脚本による公演という、新しい試みの作品。彼自体が有名作家なので、さすがに解り易く、万人受けするであろう内容に仕上がってる。ある謎解きのために、みんなで過去を振り返る。同じ出来事でも、視点が変われば、全く別の話になってしまう。そうした連続で、最終的に謎解きとなるのだが、如何せんTVのバラエティっぽさが強い。「こういう流れで、こんな話になります、ここで何か面白いことを幾つかお願いします」という雰囲気のため、煎餅でも齧りながら観るような作品となっている。話にリアリティが無さ過ぎることも、せっかく演技できる人間を使うのに宝の持ち腐れに思える。時間の短さから、おそらく見易くコンパクトにまとめることを意識しているのだろうが、あまりにも説明不足なため、これまでのプラン9作品と比較して陳腐である。初見でこれだけ観てしまうと、何処にでもいる普通のお笑い芸人、として映りそうだ。本人たちが望んで方向性を変えようとしているならそれまでだが、これまでに培ってきた高い演技力を活かさないのは、正直勿体無いと思う。舞台演劇でもあり、お笑いでもあり、そこが彼らの魅力の一因と言えるため、折角なのでプラン9にしか出来ないものが観たい。今まではそうだった、しかしこれは違うと思う。
初見向き ★★☆☆☆
笑い密度 ★★★☆☆
芝居寄り ★☆☆☆☆
ザ・プラン9 are
お〜い!久馬(ボケ)
なだぎ武(ボケorツッコミ)
浅越ゴエ(ボケorツッコミ)
ヤナギブソン(ツッコミ)
and
覚王山(脚本or演出)
ex.
鈴木つかさ(ボケorツッコミ)
ツッコミは最年少のギブソンだけと思われがちだが、実はなだぎ、元々ツッコミ(顔と動きが当時からボケなくっていたが)だったため、ツッコミも問題無くこなせる。久馬さんは脚本がメインなっているくらい物書きが得意で、よしもとミッドナイトコメディでは、ゴエさんがレギュラー出演しているにも関わらず、久馬さんは脚本のみで一度も出演していないほど。