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君の膵臓をたべたい / 住野よる

2024年08月06日 | 読んだ小説
                    

☆☆
膵臓の病気で余命が1年もない女子高生と、非常に面倒くさい性格のクラスメイトの陰キャな少年の切な
くて儚い中二病の青春恋物語。 しかし、一度見たら忘れないインパクトのあるタイトルはいいけど、
このタイトルのせいで逆に敬遠もされそうで損をしている所があるかもしれない。

病気の少女は、死を前にして本当は絶対に怖くて辛くて悲しいはずなのに、わざと明るく快活に振る舞っ
ているし、少年の方は、そんな少女の病気と死に対して実感がないのか、特に何も思ってなさそうでわり
と素っ気ない。ただ少女は、死ぬ前に思い出や生きた証として甘酸っぱい恋愛ごっこがしたくて、自分が
自由に転がしやすい大人しい少年を利用しただけという感じがする。 もちろん少年の事は嫌いじゃない
んだろうけど、途中までは、そこまで本当に好きなのかどうかは怪しい。 それにしても2人の会話が
日常的じゃなくて、いちいちちょっと鬱陶しい。

そしてなんと少女は病死ではなく突然事件に巻き込まれて命を落とすが、これもかつての人気作「セカ
チュー」との差別化と、死にゆく少女の病気など別に適当に何でもよかった作者が、膵臓の病気の事も
医療の事も何も調べてもいないから、少女の最期が描けないものだから取って付けたような最期で驚く
前に後味が悪い。

この作品の一番のハイライトであるはずの少女が書いた共病文庫を、少女の死後に母親から少年が見せて
もらい読むシーンだが、私的には一番の盛り上がりを期待した分、この作品の中で一番つまらないシーン
だった。 人の気持ちや思いは時に複雑な事もあるが、それを言葉や文章にする時は、できるだけシンプ
ルにした方が心を打つんだと改めて感じさせられた。

この作品は、よく感動できる作品、泣ける作品としてネットなんかでも取り上げられているのを見るが、
本当に中二が喜び或いは感動しそうな、お子ちゃま向けの作品で、大人が読むとそこまで感動作という
ほどでもない。 そして、最後に1つ、世の中には本当に膵臓の病気で苦しんでいる人もいて、作者は、
そんな人達への配慮を欠いていると思う。(病気の少女のありえない行動で)
病気の人の痛み苦しみ思いが分からない、想像できない人に重い病気のヒロインを描くのは難しい。


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