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私の愛機は五藤光学8cmMARK-X

”2500倍”で火星を覗いてみた

 8月7日金曜日の夜半(既に12時を回っているので実は8日) 昨日とはうって変わって風もない静かな夜である。 まだ湿度が高く薄曇りだが明らかに空気が落ち着いていそうで、休日を前に望遠鏡を出してみた。

 月明りと薄雲の今日の空の状況では対象物は火星だけである。 早速唯一の対象物に望遠鏡を向けると、期待通り気流は安定していてそうである。 激しいオレンジ色の表面中央部には黒々としたアリンの爪と左上にはヘラス盆地も見えている。
 火星はこれから天頂を目指そうとしていて、まだたっぷり時間もある。早速撮影の準備にかかり、望遠鏡のアラインメント作業に取り掛かる。
 まず北極星を8×42㎜の双眼鏡で探す。 悲しいことに、我が家のベランダにおける透明度の良し悪しの判断は、まず2等星の北極星が見える、見えないである。
 アラインメントを終え、筒内気流が安定するまで待つ間に幾つか接眼レンズを持ち出し、火星面を見比べていた時である。 最近購入したSVBONYの6mm(250倍)で火星面を見ていて若干コントラストが悪い事に気が付いた。月が近くにあることと薄雲のせいかと思い、しばらく眺めていた後にその6㎜アイピースの先にこれも最近購入した笠井トレーディングの5倍バーローレンズが装着されていた事に気が付いた。倍率にすると1250倍。
普段木星や土星を500倍で見ているときの視直径と1250倍の火星が同程度で有ったことも気づかなかった原因だった。
 初めての倍率だったが、実はそれほど違和感なく、意外によく見えていることにビックリ。 
 そこで撮影にあたり先のブログに書いたように、梅雨で実現できなかった5、600倍の高倍率レンズ比較を行ってみることに。テレビューのRadian3mm(60°、500倍)とビクセンのLV2.5mm(45°、600倍)とSVBONYの15mm(良く見えてお気に入り)と笠井トレーディングの5倍バーローレンズ(68°、500倍)で火星面の見え味を比較してみた。

 結果は3000円の廉価アイピースとバーローレンズの組み合わせが最もすっきりとよく見え、視野が広いのも良い。LV2.5mmもほぼ同じ様な見え味を示したが、火星のバックグラウンドの黒が若干淡い。テレビューRadian3mmは火星の表面模様のコントラストが一段落ちて見える結果だった。中国光学機器メーカ侮れずである。
 今回の撮影は、気流の状態も良かったことで、ORION社のPL10mmと5倍バーローレンズの組み合わせで750倍のコリメート撮影による一枚。



 一通り撮影を終えたところで、先の1250倍を思い出し、再び眼視に切り替え、今度は1250倍の更に上、Radian3mm+5倍バーローの組み合わせで2500倍で火星を見ることに。

 この倍率ではさすがに見え味は落ちた。 1250倍ではそれほど気にならなかった大気分散による色ずれが異様に大きくなった。
 極冠は問題なく見えてはいるが表面模様のコントラストや細部の見え方は極端に落ち、様々な精度(鏡面やその他光学系のシステム的な精度に加え、ピント出しのラック&ピニオン等の機械精度まで)的な限界なのだろう。

 同じ場所で同じ機材を使っていてもまだ新たな試みができた事は、それはそれで新鮮だった。
私の望遠鏡歴は4cm反射望遠鏡(!)と4cm屈折(f:800mm)経緯台からスタートした。当時最高倍率は口径の20倍と言われ、100倍前後で不慣れな望遠鏡の扱いも含め、その高倍率を味わっていたものだ。
 それが2500倍という当時想像もできなかったような倍率で望遠鏡を操っている今の自分にずいぶん時がたったものだ、という思いがした。
 2500倍の火星を覗きながら、小さな望遠鏡を一所懸命操作していた当時の自分を思い出し、不憫ながらもなんと健気だったのだろうか、と何かほほえましい気分になり、明け方近くの雲の出現とともに本日の観望を終えた。

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