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作者も二次創作者も「後期クイーン問題」に直面する
筆者-初出●Townmemory -(2009/05/26(Tue) 20:07:36)
http://naderika.com/Cgi/mxisxi_index/link.cgi?bbs=u_No&mode=red&namber=25726&no=0 (ミラー)
[Ep4当時に執筆されました]
●再掲にあたっての筆者注
「プレイヤーの勝利条件」への補遺です。「東方」の例に関して、質問を受けたので、これに回答したものです。
挨拶部分を削除しています。
以下が本文です。
☆
一貫した解釈とか、事実か事実でないかの採用基準とか、私、持ってないんです。ていうか、持ってるという自意識がない。
そしてこれからも持つ予定がないという……。
じゃあ、どうやって、「このシーンは本当にあったことだろう」「このシーンは幻想の上書きだろう」と決めているかというと。
実は趣味です。
好みです。
自分が気持ちよくて、都合がよければ採用。そうでなかったらボツ。
つまりはスキキライです。
クッキーを食べたいか、鈴カステラを食べたいかは、スキキライが決定し、そこにルールは必要ないという考え方です。
ニンジンが嫌いなことに、理由は必要ない気がしますし。
そして、ニンジンが嫌いなら、根菜類は全部嫌いでなければならないというルールも必要なさそう。
ニンジンは緑黄色野菜ですが、ブロッコリーは大好きでもかまわないでしょ?
ていうか……このゲーム、基準を持ちようがない気がします。
もう、スキキライでやるしかない感じなんです。
たとえば。私の戦い方ってこうです。
スキキライにもとづいて、ある仮説を提唱する。
(朱志香が犯人だったらカッコイイな。朱志香が犯人だってことにしよう)
その仮説に基づいて、現象を説明する。
(朱志香が犯人だったら、サソリのお守りのシーンが説明できるよね)
現象が説明できるので、仮説は正しいと考える。
(サソリのお守りで夏妃を殺せないことが説明できた、朱志香が犯人だ)
でも、仮説は仮説にすぎない。ということは、間違ってるかもしれない。
ということは、間違ってるかもしれない仮説で現象を説明しても、現象が説明できてることにはならない。
よって、現象を説明していることにはならないので、仮説は正しいとは言えない……。
そして、「サソリのお守りがあったから夏妃は殺されなかった」くらいのシーン、他の人物が犯人でも、いくらでも説明できそうです。カンタンなのは、真里亞ですよね。戦人でもいい。「サソリのお守りの効能を知ってるヤツに疑いをかけることができるから」で良い。
ということは、朱志香説では、戦人説や真里亞説を撃退できない。戦人説では、朱志香説を撃退できない。
どんなに現象をきれいに説明できても、犯人は絶対に確定できない。
確定できないのに、朱志香説を提唱するのはなぜか。
それは、スキキライです……。としかいいようがない……。
いや、もっと極端なことをいえば、「その現象(サソリのお守り)は、幻想シーンにすぎなくて、実際には存在しない」のかもしれない。
存在しない現象をどれだけ説明しても、犯人の証明にはならない。
これって、「後期クイーン問題」じゃないですか?
(正確には、「変型・後期クイーン問題」くらいに言うべきかな? どっちかというと「ゲーデル不確定性原理問題」ですよね。でもキーワードとして作り手から出ているので、大ざっぱに「後期クイーン問題」と呼ぶことにします)
現象の存在を否定する未知の証拠Xを仮定することにより、すべての現象、すべての証拠の存在を否定可能。
そして、未知の証拠Xの存在を常に示唆し、意識させる「幻想」というキーワードが提示されている。
「幻想」を意識することで、未知の証拠Xを無限に存在させることができる。
つまり、
「無限に後期クイーン問題を発生させられる」。
「うみねこのなく頃に」って、
「すべてのユーザーが、必ず後期クイーン問題に直面するように作られた作品」
なんですよ。
スゴイ。
で。
なんでこんな話を急に始めたかというと。
このあとの話に続くわけです。
「すべてのユーザーが、必ず後期クイーン問題に直面する」といいました。
推理をする人だけでなく、キャラ萌えで楽しむ人も。
それに直面する。
そういうことを、これから言おうとしております。
(引用)『「作者の見解」が、設定上の話になってしまったので、前半とのつながりが薄くなってしまい、あれっと思ってしまいました。』(引用終わり)
ということをおっしゃってるのをみて、ああ、ここの意見が違うんだなと思ったんです。
「作者の見解」と、「設定」の、ちがいって何でしょう?
私は、それらは全く同一のものだと思っているんです。
「設定」というのも、「作者の一見解」にすぎない。「作者の推理」にすぎない。
ということなんです。
東方の、アリスと魔理沙の例をかんたんにおさらいしてみましょう。
こんな感じなんです。
ユーザーたちは、「アリスって何か魔理沙に対してツンデレっぽくね?」と思った。
それで「アリスって魔理沙のこと好きなんじゃね?」と言い出した。
作者が「アリスは魔理沙を好きではない」と発言した。
ユーザーたちは、それを軽やか~に無視した。
たぶん、もう理解されたかと思うのですが、いちおう、「うみねこ」で例え直してみましょう。
たとえば、こんなのはどうでしょう。
「嘉音って、戦人に対してそっけないよね?」
と、誰かが言い出しました。
つまり、「嘉音は戦人に対してそっけない」という「現象」が「観測」されました。
それを受けて、また誰かが、
「ひょっとして、ツンデレなんじゃない?」
「ていうことは、嘉音って、戦人のこと好きなんじゃない?」
と言い出しました。
つまり、「嘉音は戦人のこと好き」という「推理」が「提唱」されました。
「嘉音×戦人」説の、成立です。
「嘉×戦は俺のジャスティス! うはは、てらもえす~」
「嘉音×戦人」説は賛同者をいっぱい獲得し、一大勢力になりました。
この「推理」にもとづいた同人誌が、いっぱい登場しました。
これを見た竜騎士07さん、「ぷっくくく」と笑って、こんなことをおっしゃいます。
「嘉音×戦人なんてありえぬ! そんな設定は存在せぬ!」
なんてことでしょう。これまでは、嘉音×戦人説が成立していたのに。
それを否定するような未発見の証拠Xが出てきてしまいました。
ああ、「後期クイーン問題」。
ところが、ある人が、ふと気付きました。
そもそもの「嘉音はツンデレっぽい」という現象の観測じたい、ほんとにあったのかどうかわからないものなわけです。
なのに、我々はそれを採用して、盛り上がれた。
つまり、「嘉音はツンデレっぽい」を採用した理由は、ただ、「スキキライ」にすぎないわけです。
スキキライ? 「スキ」と「キライ」?
つまり、「これがスキ」と言っていいなら、「これがキライ」も、言っていい。
好みによって根拠を採用できるのなら、好みによって根拠を不採用にしてもいいんじゃないか。
そこで、「嘉音×戦人」説が大好きだった人たちは、声をそろえてこう言うことにしました。
「嘉音×戦人なんてあり得ぬ、なんていう証拠を、我々は採用せぬ!」
だって、「嘉音×戦人なんてあり得ぬ」という発言を否定する未知の証拠Xが、これから発見されるかもしれないじゃん。
こうして竜騎士07さんは、後期クイーン問題に直面させられてしまいました……。
すなわち、「作者の論が、ユーザーによって撃退させられちゃった」ということです。
でも、竜騎士07さんは、もしこんなことが本当に起こったら、
「うわあ、後期クイーン問題、ちょう楽しい~!」
って、大喜びすると思いますよ。
だって、「自分も直面する」ってわかってなきゃ、こんな作品、作らない。
絶対、自分も直面したいんですよ。
「嘉音×戦人なんてありえぬ!」
なんて発言を、もし彼がしたとしたら、それは、絶対、狙ってる。
「俺を後期クイーン問題に直面させてくれよう、俺も悩んだりじたばたしたいよう」
ていうサインですよ。
できれば直面させてあげたいなあ……って、思うんです。
でも、ここの掲示板を見ていると、私の想像以上に「作者の権威」という名の呪縛は、強いみたいだから、なかなか難しいのかもしれない。
でもどっちかというと、「本格」型の推理アプローチよりも、SSとか同人マンガとかの「二次創作」型のアプローチのほうが、後期クイーン問題を発生させるのが簡単そうに思えますよね。そっちのほうが、見込みありそうだなあ……。だから皆さんがんばってほしいなっていう、そういう感じなのでした。
■目次1(犯人・ルール・各Ep)■
■目次2(カケラ世界・赤字・勝利条件)■
■目次(全記事)■
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筆者-初出●Townmemory -(2009/05/26(Tue) 20:07:36)
http://naderika.com/Cgi/mxisxi_index/link.cgi?bbs=u_No&mode=red&namber=25726&no=0 (ミラー)
[Ep4当時に執筆されました]
●再掲にあたっての筆者注
「プレイヤーの勝利条件」への補遺です。「東方」の例に関して、質問を受けたので、これに回答したものです。
挨拶部分を削除しています。
以下が本文です。
☆
一貫した解釈とか、事実か事実でないかの採用基準とか、私、持ってないんです。ていうか、持ってるという自意識がない。
そしてこれからも持つ予定がないという……。
じゃあ、どうやって、「このシーンは本当にあったことだろう」「このシーンは幻想の上書きだろう」と決めているかというと。
実は趣味です。
好みです。
自分が気持ちよくて、都合がよければ採用。そうでなかったらボツ。
つまりはスキキライです。
クッキーを食べたいか、鈴カステラを食べたいかは、スキキライが決定し、そこにルールは必要ないという考え方です。
ニンジンが嫌いなことに、理由は必要ない気がしますし。
そして、ニンジンが嫌いなら、根菜類は全部嫌いでなければならないというルールも必要なさそう。
ニンジンは緑黄色野菜ですが、ブロッコリーは大好きでもかまわないでしょ?
ていうか……このゲーム、基準を持ちようがない気がします。
もう、スキキライでやるしかない感じなんです。
たとえば。私の戦い方ってこうです。
スキキライにもとづいて、ある仮説を提唱する。
(朱志香が犯人だったらカッコイイな。朱志香が犯人だってことにしよう)
その仮説に基づいて、現象を説明する。
(朱志香が犯人だったら、サソリのお守りのシーンが説明できるよね)
現象が説明できるので、仮説は正しいと考える。
(サソリのお守りで夏妃を殺せないことが説明できた、朱志香が犯人だ)
でも、仮説は仮説にすぎない。ということは、間違ってるかもしれない。
ということは、間違ってるかもしれない仮説で現象を説明しても、現象が説明できてることにはならない。
よって、現象を説明していることにはならないので、仮説は正しいとは言えない……。
そして、「サソリのお守りがあったから夏妃は殺されなかった」くらいのシーン、他の人物が犯人でも、いくらでも説明できそうです。カンタンなのは、真里亞ですよね。戦人でもいい。「サソリのお守りの効能を知ってるヤツに疑いをかけることができるから」で良い。
ということは、朱志香説では、戦人説や真里亞説を撃退できない。戦人説では、朱志香説を撃退できない。
どんなに現象をきれいに説明できても、犯人は絶対に確定できない。
確定できないのに、朱志香説を提唱するのはなぜか。
それは、スキキライです……。としかいいようがない……。
いや、もっと極端なことをいえば、「その現象(サソリのお守り)は、幻想シーンにすぎなくて、実際には存在しない」のかもしれない。
存在しない現象をどれだけ説明しても、犯人の証明にはならない。
これって、「後期クイーン問題」じゃないですか?
(正確には、「変型・後期クイーン問題」くらいに言うべきかな? どっちかというと「ゲーデル不確定性原理問題」ですよね。でもキーワードとして作り手から出ているので、大ざっぱに「後期クイーン問題」と呼ぶことにします)
現象の存在を否定する未知の証拠Xを仮定することにより、すべての現象、すべての証拠の存在を否定可能。
そして、未知の証拠Xの存在を常に示唆し、意識させる「幻想」というキーワードが提示されている。
「幻想」を意識することで、未知の証拠Xを無限に存在させることができる。
つまり、
「無限に後期クイーン問題を発生させられる」。
「うみねこのなく頃に」って、
「すべてのユーザーが、必ず後期クイーン問題に直面するように作られた作品」
なんですよ。
スゴイ。
で。
なんでこんな話を急に始めたかというと。
このあとの話に続くわけです。
「すべてのユーザーが、必ず後期クイーン問題に直面する」といいました。
推理をする人だけでなく、キャラ萌えで楽しむ人も。
それに直面する。
そういうことを、これから言おうとしております。
(引用)『「作者の見解」が、設定上の話になってしまったので、前半とのつながりが薄くなってしまい、あれっと思ってしまいました。』(引用終わり)
ということをおっしゃってるのをみて、ああ、ここの意見が違うんだなと思ったんです。
「作者の見解」と、「設定」の、ちがいって何でしょう?
私は、それらは全く同一のものだと思っているんです。
「設定」というのも、「作者の一見解」にすぎない。「作者の推理」にすぎない。
ということなんです。
東方の、アリスと魔理沙の例をかんたんにおさらいしてみましょう。
こんな感じなんです。
ユーザーたちは、「アリスって何か魔理沙に対してツンデレっぽくね?」と思った。
それで「アリスって魔理沙のこと好きなんじゃね?」と言い出した。
作者が「アリスは魔理沙を好きではない」と発言した。
ユーザーたちは、それを軽やか~に無視した。
たぶん、もう理解されたかと思うのですが、いちおう、「うみねこ」で例え直してみましょう。
たとえば、こんなのはどうでしょう。
「嘉音って、戦人に対してそっけないよね?」
と、誰かが言い出しました。
つまり、「嘉音は戦人に対してそっけない」という「現象」が「観測」されました。
それを受けて、また誰かが、
「ひょっとして、ツンデレなんじゃない?」
「ていうことは、嘉音って、戦人のこと好きなんじゃない?」
と言い出しました。
つまり、「嘉音は戦人のこと好き」という「推理」が「提唱」されました。
「嘉音×戦人」説の、成立です。
「嘉×戦は俺のジャスティス! うはは、てらもえす~」
「嘉音×戦人」説は賛同者をいっぱい獲得し、一大勢力になりました。
この「推理」にもとづいた同人誌が、いっぱい登場しました。
これを見た竜騎士07さん、「ぷっくくく」と笑って、こんなことをおっしゃいます。
「嘉音×戦人なんてありえぬ! そんな設定は存在せぬ!」
なんてことでしょう。これまでは、嘉音×戦人説が成立していたのに。
それを否定するような未発見の証拠Xが出てきてしまいました。
ああ、「後期クイーン問題」。
ところが、ある人が、ふと気付きました。
そもそもの「嘉音はツンデレっぽい」という現象の観測じたい、ほんとにあったのかどうかわからないものなわけです。
なのに、我々はそれを採用して、盛り上がれた。
つまり、「嘉音はツンデレっぽい」を採用した理由は、ただ、「スキキライ」にすぎないわけです。
スキキライ? 「スキ」と「キライ」?
つまり、「これがスキ」と言っていいなら、「これがキライ」も、言っていい。
好みによって根拠を採用できるのなら、好みによって根拠を不採用にしてもいいんじゃないか。
そこで、「嘉音×戦人」説が大好きだった人たちは、声をそろえてこう言うことにしました。
「嘉音×戦人なんてあり得ぬ、なんていう証拠を、我々は採用せぬ!」
だって、「嘉音×戦人なんてあり得ぬ」という発言を否定する未知の証拠Xが、これから発見されるかもしれないじゃん。
こうして竜騎士07さんは、後期クイーン問題に直面させられてしまいました……。
すなわち、「作者の論が、ユーザーによって撃退させられちゃった」ということです。
でも、竜騎士07さんは、もしこんなことが本当に起こったら、
「うわあ、後期クイーン問題、ちょう楽しい~!」
って、大喜びすると思いますよ。
だって、「自分も直面する」ってわかってなきゃ、こんな作品、作らない。
絶対、自分も直面したいんですよ。
「嘉音×戦人なんてありえぬ!」
なんて発言を、もし彼がしたとしたら、それは、絶対、狙ってる。
「俺を後期クイーン問題に直面させてくれよう、俺も悩んだりじたばたしたいよう」
ていうサインですよ。
できれば直面させてあげたいなあ……って、思うんです。
でも、ここの掲示板を見ていると、私の想像以上に「作者の権威」という名の呪縛は、強いみたいだから、なかなか難しいのかもしれない。
でもどっちかというと、「本格」型の推理アプローチよりも、SSとか同人マンガとかの「二次創作」型のアプローチのほうが、後期クイーン問題を発生させるのが簡単そうに思えますよね。そっちのほうが、見込みありそうだなあ……。だから皆さんがんばってほしいなっていう、そういう感じなのでした。
■目次1(犯人・ルール・各Ep)■
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