忙しい外来の診療中でも,ちょっとうれしくなる瞬間がある。
先日,整形外科から術前内科チェックの依頼の患者さんを診た時である。心電図で完全左脚ブロックがあった。最初,聴診はさらっと流して何もない・・と思ったのだが,ふと思い直してもう一度じっくり聴診してみた。すると・・・聴こえた!!
完全左脚ブロックの時に聴取する,2音の奇異性分裂 (reversed or paradoxical split of S2) がはっきりと認識できた。生理的な2音の分裂は,吸気時に幅が拡がって,呼気時にはほとんど単一に聴こえる。吸気時には静脈潅流が増えてIIp成分が後ろにずれるからであるが,完全左脚ブロックの時には,IIa成分がIIpよりも後ろにずれているため,2音の分裂が吸気時ではなく呼気時に聴こえる訳である。これをはっきり認識できたのは,この患者さんで2例目である。忙しい外来で疲れていても,こんなことがあると,何かちょっと得をしたような気分になる。
(写真は,Jules Constant先生と一緒に写っている貴重な,ちょっと自慢の一枚)