H's monologue

動き始めた未来の地図は君の中にある

使命の道に怖れなく どれほどの闇が覆い尽くそうと
信じた道を歩こう

忘れ得ぬ1年目の出来事

2009-11-22 | 臨床研修

1年目の産婦人科ローテーション中のことである。その日はER当番であったが,産科病棟から「先生!!大至急来てくださいっ!」と緊迫したコール。当時2ヶ月間の産婦人科ローテーション中は,原則として毎日オンコールで,夜間にお産があれば病棟に駆けつけることになっていた。ただし月に6回あるER当直の夜は例外で,その日は病棟からはコールがないはずだったのである。ただならぬナースの声に(何で呼ばれるんだよ・・)と少し憤慨しながらもナースステーションに急ぐ。しかし,そこで目にした光景にそんな気分もふっとぶ。

陣痛室からうめき声が聞こえ,見ると産気づいた妊婦さんが車いすに乗っている。足の間からすでに赤ん坊の頭が見え始めている。こちらも大慌てで「落ち着いて,落ち着いてっ!!ゆっくり息をして・・・,ひっ,ひっ,ふ~~」などと看護婦さんと一緒に声をかけるが,陣痛がきている妊婦さんにはもうこちらの制止聞こえていない。分娩台にのせる余裕もない。患者さんの足下にしゃがみ込んだ次の瞬間,赤ちゃんが「つるん」と出てきてしまったのであった。手袋をはめる間もなかった。(うわあっ!!赤ん坊を落としてはいけない!!)と必死の思いで素手で受け取ったのだが,その時の「ぬるん」とした感触と落とさないでヨカッタ・・という安堵感は今も鮮明に覚えている。臍帯を切って処理し,何とかその赤ちゃんを看護婦さんに手渡した,ちょうどその頃,連絡を受けていた産婦人科スタッフの先生が到着。その後妊婦さんは「歩いて」分娩台に上って無事に後産をすませたのであった。

あの時の赤ちゃんも,すでに二十代後半になっている訳だが,どうしてるだろうかなあ・・と今でも時々思うことがある。
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