曹達記

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2021年12月ポケスペ剣盾編感想

2022-01-13 00:12:00 | ポケスペ
前回の感想で、話の着地点が示されてきたと述べたが、今回は一気に話を進めてきた。
休載の影響は8月に出たと考えているので、今出たとはあまり考えにくいのだが、皆無と言いきれないのも事実。
いずれにせよ、1月掲載分を読まないと今回の展開の巻きっぷりはよく分からないのだが、とりあえず今回の話時点での感想を書き進めていく。

ダンデからネズに連絡が行き、ローズとシーソーコンビが提携していること、及びその企てが知らされたところから。
この情報に対し、ネズは全ジムリーダーの召集とローズへの事情聴取を発案する。
ジムチャレンジの今後が気がかりなホップとマリィは動揺するも、そーちゃんとしーちゃんは同行を願い出た。
ここは図鑑所有者とそれ以外でのジムチャレンジへのスタンスの差が出ていると思う。
図鑑所有者のジムチャレンジ参加の目的は「しーちゃんの手持ち探しと伝説ポケモンとの再戦」だから、シーソーコンビを追った方がその目的には到達しやすい。
そのため、全く迷いなく同行を申し出たのだろう。
一方で、多少の動揺を見せた二人も、ジムチャレンジの今後がかかっているならその挑戦者として物申す権利はある、と主張して同行する。
この中で、ジムチャレンジを「演技」という言葉で表現するのは少々驚いたが、現実のプロスポーツもショーとしての側面があることを考えると、自然かもしれない。
ただこれはあくまでマリィの発言であり、全員がそう考えているとは限らない。
しかも彼女は兄が芸能人でもあるわけで、ジムチャレンジをステージと同様に考える素養があってもおかしくはない。
この「演技」扱いについて、ガラル世間一般でも同じように考えられている、と解釈するには材料不足であろう。

ローズタワーに集結したのは、ルリナとキバナを除く全ジムリーダー。
これは以前の問題だが、休載の都合でマクワとメロンの和解がすっ飛ばされてしまったのは残念。
ここでの集合に大きな意味が出てくるところだったのだが。
そして暴発したビートの行動で、なし崩し的にオリーヴとの総力戦になってしまう。
いきなり暴力沙汰にするのが如何にもビートらしいというかなんというか…。
ポプラが敢えて止めなかったところを見るに、ビートだけは先にローズと話をさせてやりたいと考えたともとれる。
ただ、ここで一気に残りのリーダー6人もオリーヴとの戦いに入り、ネズも置いていかれてしまった。
オリーヴの目的は時間稼ぎだったので、まんまとその策略にはまったことになるが、ガラルにおいてジムリーダー達はスポーツ選手としての意味合いが強く、こういった化かし合いに長けているのはネズとキバナだけであろう。引っ掛かってしまうのもやむを得ない。

ここで、ビートと4人が久々の対面を果たす。
ビートとそーちゃんは明確な対立をしてきたのだが、それ以外の面々(図鑑所有者同士を除く)とは全然対立も協調もしてない。
強いて言えばビートはホップと初期に喧嘩をしていたが、本当にそれだけである。
そもそもこの5人では関係性の深さに差がありすぎているので、並べたところで不揃いな感触が否めない。
これは個人的な好みなのだが、折角同じジムチャレンジに挑む5人の登場人物がいるのである。
図鑑所有者2人は特別としても、ライバル3人との関係性を同じ深度で構築していれば、ここでの集合がかなり意義のあるものになったと思えてしまう。
今更憂えたところで無理な話なのだが。

さて、ローズはタワーには不在であり、更にそのままブラックナイトを引き起こす。
不注意から早めざるを得なくなった、というのはシーソーコンビの存在が露見したことであろう。
そしてここで述べている、ブラックナイトを起こせば安心して試合ができる、というのはどういう理屈なのだろうか?
ローズの思考というのは常人には理解しがたいマクロ視点であるが、1000年後のエネルギー問題を解決することが安心をもたらす、と考えたと思われる。
ただ、やはりここはポケスペ的な視点での掘り下げをしてもらいたいところ。
これを描く尺はまだ十分にあるだろう。

オリーヴは最初から陽動目的で動いていて、ブラックナイトが起きたらゲームのようにローズの身を案じて動揺する、という下りはなかった。
何か腹に一物抱えているのだろうか?
もしくは、ローズが自ら犠牲になる覚悟をしていて、それを受け入れて騒ぎ立てないようにしているのだろうか?

ゲームではあまり描写がなかった、ブラックナイトによる実際の被害が描かれているのは重要である。
なにせ、ゲームだと台詞での説明ばかりで実際に何が起きているのかよく分からなかった。
この余波でシュートシティから脱出不能となった一行だが、博士の車で窮地を脱する。
ただこの時、ジムリーダー達も乗せたんだろうか…。
乗ってても良いのだが、この場での事態収拾を優先する、と言って断るコマを挟んでいても良かった気がする。
その方がこの後の展開に出る人数を絞れるわけだし。

さて今回はとてもスピーディーな展開だったのだが、どうも4巻でブラックナイト突入!という引きに合わせた強引なものだと感じてしまう。
やはりそう思わせる大きな要因はバトル描写の薄さだろう。
別にバトルがあるから良いというわけではないのだが、あまりにも薄すぎると考えものだ。
それに、今回のバトルはジム戦と違ってワンパターンになりにくい流れだった。
これが描けていればドラマだけ読まされている感じが軽減されて、もう少し読後感が良かったのではないだろうか。

また、ビートとそーちゃんの因縁が今回はあっさり流されたように見えたのも残念なところだった。
先述した通り、二人は作中の人物では数少ない因縁がある。更に様々な対比構造もあるが、とりあえず今回は会話だけで終わってしまった。
展開的にバトルしてる場合ではなかったのは確かだ。しかし、万が一これで因縁が終わるとなれば非常に厳しい。
ブラックナイト→ファイナルトーナメントの流れをやるのかどうかは定かではないものの、どんな流れであれもう一度二人には戦ってもらいたい。

ただ、一つ留意しておくべき点はある。それはそーちゃんの内面が相変わらず分からないことだ。
思い返すと、ビートに対してそーちゃんは一切の感情的な態度を見せていない。
そもそも何を考えているのかよく分からないキャラなのだが、ビートから敵意をぶつけられても特段の反応を示していない。
もしかしたら、そーちゃんにとってビートの敵意は因縁と呼ぶ程のものではないのかもしれない。
いずれにせよ、話も折り返し点を過ぎたはず。図鑑所有者達の内面にそろそろ入ってこないと、ドラマ展開の支障となりはしないだろうか。


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