「ばあじるくったし あわもちくった ながしのしたのほねをみろ」
これは、福音館書店の絵本『かちかちやま』の中で、たぬきがおばあさんを殺して汁物にしておじいさんに食べさせた後の捨てゼリフ。
先日、次回の読み聞かせでこの絵本を候補に挙げた私は、次回の読みの人に練習して貰ったとき、改めてこの展開とセリフの残酷さが凄いな!と思ってしまった。
自分は以前1年生ひとクラスに読んだことあるけど、全学年に放送となると、どうなんだ?とちょっとびびってしまった。
結局、読み手が高齢女性なのもあり受容してくださり読むことにはなったけど、ちょっと考え込んでしまった。「昔話だから」で、こういうのわざわざ読んで聞かせていいのかな?と。
しかし、それとはまた別に「この物語の性質」をちょっと考えてみた。
昔話は、人間と野生動物の距離がものすごく近かったころの話だ。そこに上下関係は無く、生存圏を奪い合う関係だった、と言ってもいい。
そもそも、たぬきからしてみれば、自分を“たぬき汁”にして食おうとしている相手を騙してやっつけて食ってやったという話であり。
ばあ汁は残酷でたぬき汁はそうじゃない、なんて人間だけの理屈である。
おばあさんとおじいさんは、たぬきに騙され、たぬきはうさぎに騙され泥舟で沈められた。
勧善懲悪だと思っていたこの昔話、実は「賢いものが勝つ」、という弱肉強食の話だったのかもしれぬ。