キアーラ・ロッサーニ:文/ビンバ・ランドマン:絵/関口英子:訳/西村書店
「児童労働」の根絶を訴え、自身も4歳で借金のかたに売られたイクバル・マシーの身の上を描いた絵本です。実在の人物で、1ページ目の「イクバルについて」というあらましを読んだだけで泣きそうになりました。
パキスタンのムリドゥケという小さな村の、貧しい家庭に生まれたイクバル(1982年生)は、わずか12ドルの借金のため、父親にじゅうたん工場へ引き渡されます。じゅうたんを織る作業員として1日12時間以上働かされ、満足な食事も与えられず、学校にも行けず、逆らうとくさりで繋がれました。
9歳のとき仲間と脱走し、「債務労働解放戦線(さいむろうどうかいほうせんせん)」(BLLF)という児童労働の解放運動の団体に合流し、やっと自由を手に入れた矢先、彼は殺されてしまいます。まだ12歳でした。
しかし彼の死によって「労働による子どもの搾取という悲劇」に世界中の目が注がれることになったといいます。
絵本といっても構成が独特で、集団への読み聞かせ向きではないような気がします。ただ、その訴えかけるものは強烈で、イクバルのことだけではなく、地球規模で搾取されている子どもの悲しみを切々と訴えかけてきます。
しかしやはり、いつか自由を夢見るイクバルが、親方に「おまえはおれのものだ」と希望を打ち砕かれる言葉をぶつけられたときの、絶望に見開いた大きな目が、特に胸に迫りました。
* * *
「可哀想な話」で終わらせるのではなく、巻末には児童労働の今を伝える資料的なページも充実しています。「国際子どもの権利条約」を載せ、子どもに「子どもの人権」について全部ふりがなつきて教えてもいます。
――発展途上にある国々では、5歳から14歳の子どものうち、1億5000万人が、児童労働させられているとユニセフは指摘しています。この数は、おなじ年ごろの子どもたちの、13パーセントに相当します。 引用:P108
とても意義深い本で、大人も読むべきと思いました。
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