NHK大河ドラマで渋沢栄一を主人公とした「青天を衝け」が放送されています。その中でも、父親に『論語』を教わるところが出て来ますが、この幼少期の経験は渋沢栄一の生涯を大きく左右したと思います。
今回は渋沢栄一の論語の講義を記録した『論語講義』講談社学術文庫版の写真を掲載します。全七巻あります。『論語』の研究書や注釈書は大変多くありますが、その中で、この『論語講義』は異彩を放っています。『論語』の心を経済、社会活動に活かした渋沢栄一ならではの講義内容はきわめて興味深いものです。
例えば、「商工の実業のごときまた仁を以て大本(たいほん)とせねばならぬ。仁を大本とすれば、工業に粗製濫造なく、商業に騙𥈞詐術(へんまんさじゅつ=ひとをだます仕打ち)なく、商工業道徳高まるべし。」というように、孔子の説いた仁(人を思いやる心・態度)を実業の面から見ています。儲かれば違法でないかぎり何をしてもよい、言い抜けられればそれでよいのだという風潮は、時代・社会のありようは違っても今も昔もあったのだろうなあと思います。大いに共感すべき点があります。
また、講義の記録なので、親しみやすい点も魅力です。
**今回もご覧くださり、まことに感謝に堪えません。