花月と猫の物語（３）～キツネと姉妹

若女将とマネちゃんの子供になった猫の子供達は、安心と安全をもらって健やかに成長していきました。花月の庭や裏山で走り回り、木に登ったり、蝉を追いかけたり、1年という猫にとっての短い青春を、駆け足で力いっぱい楽しく過ごした後、大人になりました。

大人になって恋をした猫達は可愛い赤ちゃんを産み始めました。猫の出産は厳しいです。最初に産まれてくる子供が一番強い子なのです。大きくて生命力のある子供が先に産まれてくるのです。

出産の時に、赤ちゃんは産道で息ができない状態なので、後になる子供ほど、生命力が弱い子供ほど、無呼吸状態が長く続きます。ですからせっかく産まれてきても、育たないこともあるのです。そして、その優位差は、産まれててから赤ちゃん猫になった後も、ずっと変わらないのです。

命の選択、それが自然の厳しさです。優位な赤ちゃん猫はお母さん猫のオッパイをたくさん飲み、免疫力をつけながら早く大きく育ちます。

でも、人の親の手は優しいのです。人の親は身体の弱い子ほど、小さい子供ほど愛おしく感じるものなのです。そうして、マネちゃん夫妻の手は何度も何度も、優しく小さな命を救いました。

2019年の春、ゴッドマザー「ビビ」が何度目かの出産をし、4匹の子供を産みました。「ハル（春）」、「キツネ」そして「ジャスミン」・・・そしてもう一匹・・・もう一匹は産まれてまもなく死んでしまいました。ジャスミンも本当は自然に育たない子供でした。若女将の懸命な看護で、若女将の手でジャスミンは命をもらいました。

三匹の中で尻尾がフサフサで愛くるしいキツネは元気な男の子でした。くるっと巻き上げた尻尾がきつねのようで、マネちゃんが「キツネ」と名付けたのです。

ある日花月に、仲の良いご家族がお客様としていらっしゃいました。猫の命を大事に思ってくださるご家族でした。ご家族の子供達と仔猫達はすぐに仲良くなりました。

そして、可愛い人間の女の子と、可愛い尻尾の「キツネ」は出会ったのです。女の子はキツネが一目で好きになりました。泣きだしたいほど大好きになりました。もうキツネと離れて暮らすことができなくなりました。女の子は家族にお願いしてキツネと一生の家族になると決めました。

人間の両親と兄姉ができた「キツネ」は、2020年の年末、木枯らしが吹く中、暖かい部屋で、時には家族に甘えて抱っこしてもらって、身も心も温かく楽しく暮らしています。

キツネの幸せのお報せ・・・神様が花月にくれた「少し早めのクリスマスプレゼント」なのです！

神様、キツネも花も、花月で暮らす猫ちゃん達も、行く年来る年、みんな幸せでありますように！　

---

【公式】神戸須磨の会席料理ランチ・ディナー │ 味と宿 花月
ホームページ：https://www.suma-kagetsu.com
Facebook：https://www.facebook.com/suma.kagetsu.sakura