いまは消えたセミの声。
だんだん強くなりゆく虫の音、耳にとどろき、
うるさいほどになってきている。
夏には、嫌われ者のハエや蚊が
家の中をぶんぶんしていました。
秋になれば、いなくなる。
虫の音だけが、ただよっている。
澄み切った空のした
ヒステリックに吼える犬の声
エコーがかかって空を震わせる。
それだけでうんざり。
ある日曜の朝、廊下を歩いていたわたしは同じ
マンションの女性に話しかけられました。
「だんだん、寒くなりますね!」
わたしも答えて、
「その手に持っているのは、
ランドセルですか?」
「そうなんです」
女性は、首から水筒を提げ、
腕には男の子向けのランドセルを抱えています。
「ちょうど、子どもの運動会だったんです」
「運動会? コロナなのに?」
わたしが目を丸くすると、彼女は、
「密になるから、子どもたちは学年交代で
運動会をするんです。
親もいっしょに交代するから、たいへんだった」
けど、いいところもあるんです。
彼女は、目を輝かせます。
「密にならないから
いつもより、ぎゅーぎゅーにならずに
応援できました!」
運動会の音楽を想像しながら、わたしは彼女と別れました。
こんな秋もいいものだと思えます。
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