タイヤ交換の際に外したベアリングを切断
ベアリングの内部はこんな感じ・・・。
部品として外観をみることは普通にできます。
交換時期かどうかの判断基準は
・内外輪の痛み具合
・グリース潤滑状態
・回転のなめらかさ(ゴロつき感)やガタつき
で判断します。
この判断にはそれ相当の経験と勘が必要です。
私も仕事柄ベアリングに触れる機会が多いのでこの点は少し経験があります。
タイヤ交換の際に外したベアリングは 良好 な状態でした。
今回これらのベアリングを切断して、内部を皆さんにご覧頂こうと思います。
切断に用いる機械は専用のカッターです。
コソッと会社の機械を借用致しました。
(焼きが入っているので綺麗に切るにはサンダーでは厳しいのです)
①フロント側ボールベアリング6302DU(NSK)
下:ボールも綺麗でエクボなどなく良好でした。
左・中:ボールが転がる転導面も大きな傷・焼き付きなく良好でした。
右:軸に接触しているところも綺麗でした。
②リヤ側ボールベアリング6304LU(NTN)
下:良好(①に同じ)
左・中:転導面良好(①に同じ)
右:軸に接触しているところは少し荒れていました
さび具合からして若干クリアランスが多いのかも知れません。
但し、フレッティングなどの焼き付いた跡ではありませんので機能上問題はないと判断します。
③リアハブのボールベアリング6305LU(NTN)
下:良好(①②に同じ)
左・中:(①②に同じ)
右:軸との接触部に少し焼き付いた跡がみられます。
全周に渡って色があったので軽く焼き付きを起こしている状態です。
軸とのクリアランスが少し緩くなっているのかも知れませんが、目をつり上げるほどの悪い状態ではありません。
上記3個の外輪内径側のボール転導面
左からリアハブ部、リアホイル部、フロントホイル部です。
鏡面になって景色が綺麗に写っているのがよく分かるでしょ?
潤滑・回転・負荷ともに問題ないので綺麗な状態が保たれてました。
金属を研削(砥石で研磨すること)したらここまで綺麗になります。
ベアリングメーカーさんはこの部分の仕上げにとても神経を使われています。
Rの両側にある溝はダストシールが収まる溝です。
この部分に取り付けるシール構造の違いでZZ・DDUなどの名称が異なります。
軸との接触部のアップです。
ここは公差での圧入部なので潤滑はありません。
右のフロント用ベアリングに比べて左・中のベアリングが荒れています。
フロントより負荷が掛かっているために軸とベアリング内径との部分で軽く焼き付いている証拠です。
いかがでしたでしょう?
あまり見ることのないベアリング内部をご覧頂きました。
ベアリングはとてもデリケートな部品です。
一番気を付けなければいけないのが取付時です。
ガンガン叩いて取り付けてはいけません。
ベアリングを暖めたり、軸を冷やしたり、治具を使って丁寧に取り付けましょう。
内外輪にスキマがあるときにはゆるみ防止剤を塗布するのが良いですが、あまり強すぎる接着剤を使うと取り外す時に苦労するので、中強度以下にしましょう。
瞬間接着剤などの市販品でも十分ですが、塗布する場合には点付けする程度にとどめておくのが良いでしょう。
取り付いているベアリングを長持ちさせる為には潤滑油を切らさないことです。
ホイルベアリングには外側に別のオイルシールが付いているので給油する必要はありませんが、そのオイルシールが痛んでいないかをよく確認しておきましょう。
オイルシールが傷んでいるとシール効果がなくなり、外部から水が進入したりしてグリースを流してしまうことがあります。
オイルシール回りがドロドロになっている方は要注意。
一度綺麗にお掃除しましょう。
但し、オイルシールにシンナー・ガソリンは厳禁です。
綺麗に拭き取り、軽く水洗いで十分です。