平方録

フロリダの見つめ合いの正体

今、ワシントンを拠点に仕事をしている政治記者たちほど毎日が刺激的で、しかも闘争心や反骨心ををたぎらせられている存在はないだろう。

「自分さえよければ」「自分たちさえ満たされるなら」と、これ以上ないくらい自己中心的で、幼稚極まりない考えを前面に押し立てて、しかも大真面目でそれを実践しようとしている人物が45人目の大統領に就任し、これまでだったら絶対にありえなかったことを、やりたい放題に始め、あるいは始めようとしているのだから、記者たちが放っておけるわけがないのである。

この45代大統領の異常さは、これまでグローバリズムの中心を担い、自由で公正な社会制度の実現維持の先頭を走ってきたアメリカという国が180度方針を変更して、今までの価値観をかなぐり捨て、自分たちのことをまず第一に考えるのだという内向きの考えに立ち、その考え方を基に世界中の国々を従えようとしているところにある。
内向きになりたいならしょうがない。しかし、それなら1人で勝手に下を向いて膝を抱えていればいいのであって、他の国々を巻き込まないでもらいたいのだ。

アメリカの力が強大な故に、この動きはショッキングなのだが、反グローバリズムのうねりはアメリカに限ったことでもないのである。
記憶に新しいところではイギリスが国民投票でのEUからの離脱を決めたのも、その流れに沿ったものであり、欧州各地で右翼的な政策を掲げる政党の伸長が著しいというのも、こうした動きとも無関係ではないだろう。
実はこの流れは日本でも数年前から顕著に表れていたのである。ボクが言いたいのもまさにこのことなんである。

2009年に日本の有権者は民主党政権に見切りをつけ、アベなんちゃらが率いる自民党に大量の議席を与えたのである。以来、何が行われてきたのか。
右翼政治家で戦後まもなく首相を務めたことのある爺さんを尊敬して止まないというアベなんちゃらが目指したのは、権力を縛り国民主権を前面に打ち立てた現行憲法を破り捨て、国民を縛り付けるための憲法に書き換え、強大な軍備を備える国を作り上げて世界の中心に立とうという、時代錯誤の考えなのである。
その目的への第一歩というか、最初のあからさまな動きが戦前の軍事国家を支えた国家機密法の再来ともいうべき「秘密保護法」の制定である。
公開が原則の日本の安全保障に関する様々な事柄のうち、政府の考えひとつで秘密指定ができることになり、国民は自分たちの安全がどのように守られていくのかという、主権者としての当然の知る権利を失ったのである。

いちいち挙げればきりがないが、テレビの選挙報道が偏向しているとして、アベなんちゃら自身が出演した番組で興奮気味に的外れの抗議をしたり、その挙句に党本部が通知として文書にしてテレビ局に配ったりするものだから、テレビ局もだらしないのだが、すっかり言いなりになってしまってアベなんちゃらに都合の悪いことは一切口を閉ざすようになってしまった。
そんな体たらくを見透かすように、ついに牙をむいたのが戦争放棄をうたう憲法9条をあからさまに無視する「戦争法」なる有事法制の成立である。右翼独裁政権といってもいいくらいの、やりたい放題なんである。
それでもなおかつ、国政選挙で有権者は「ノー」を突き付けるどころか、この右翼政治家の率いる政党に大量の議席を与え続けているのだ。

今また「テロ防止」という隠れ蓑を着て、戦前の悪名高き治安維持法を彷彿させる「テロ等準備罪」まで準備している。
日本はこれ以上ないのではないかと思えるほどに「右」に寄ってしまっているのである。
日本国憲法の三大原則である「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」は、今や風前の灯と言ってもいいくらいに脅かされてきているのだ。

アメリカ45代大統領の話に戻る。
覚えていますか? まだ大統領にも就任してもいない45代予定者の許に、ニューヨークの花札タワーだか、カルタタワーとか言う名前の超高層ビルにわざわざ出かけて行ったアベなんちゃらのことを。
アベなんちゃらは満面の笑みを浮かべて45代予定者にこう語りかけたんである。

「移民やら難民をいつまでも際限なく受け入れられるってもんじゃありませんよ。あなたはそこをズバリと突いて締め出しを宣言されました。なかなかできることじゃぁありません。勇気があります。私は大賛成ですよ。第一わが国では厳しい制限を設けていますからね。何たって自国民のことが一番大事ですからね」
「貿易だって、できる限り自分の国に有利になるように取り決めて行うのが、本来のやり方ですよ。我が国のメーカーにもお国で生産するよう、陰で強く指導しますから安心していてください」
「一つ困ったことがありましてね。隣のガキがこの頃やけに腕力だけが強くなってきたんですよ。強くなったものだから、力を振り回そうとするんですな。迷惑なことですよ。面倒なことになりかけたら、ひとつ助太刀をお願いしますよ」云々。

これに感激した45代予定者は、つい先ごろの首脳会談でわざわざフロリダの別荘に招いて2日間ゴルフ三昧に過ごしたり、身体と身体を近づけて目と目でじっと見つめあったりしたのである。
かくして日米右翼枢軸同盟の始まり始まりぃ~なのである。



円覚寺の居士林ではフクジュソウが次から次へと咲き出している
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