横浜イングリッシュガーデン(YEG)の園内を巡っていて、何本かの株に妙なタグがぶら下がっているのに気付いた。
「ウイルス病注意」…?!
何のこっちゃ、とガーデナーのK君に聞くと2、3年前からチラホラ現れ出した現象で、まるで斑入りの葉のように葉脈に沿って黄変が現れるという。
そもそも斑入りのバラなんてものはないから見た目に奇異に感じるし、黄変以外にも花びらが縮れたり、花の形が崩れたりして、元気なバラに比べて見劣りがするそうである。
原因の心当たりはあるのか? と聞くと、ウイルスによるものだろうという。
感染した株で使ったハサミの刃に着いた樹液が他の元気な株でハサミを使うことで、新たな感染を招いているらしい。
YEGではバラの盛りなどに咲き終わった花柄摘みなどの助っ人にボランティアを募っていて、バラ好きが集まってくれているのだが、その彼ら彼女たちが使うハサミで伝染しているようだとも。
そんなわけで、「現在は作業開始前と休憩の後には必ずハサミの刃を炎で炙って殺菌してから再び作業に取り掛かってもらっています」と言っていた。
タグは一般来場者に向けたのものではなく、作業に携わるボランティアに注意を促すためのものだった。
モザイク病なんじゃないかと聞くと、似ているけどちょっと違うようだと言う。
今のところ感染予防の有効な対策がなく、対症療法でハサミの消毒くらいしか思い浮かばないそうだ。
K君によれば「黄変によって多分、光合成にも影響が出て次第に株も痩せていくのではないか」と心配していたが、総監督の河合伸志スーパーバイザー(SV)はあまり心配していないのだという。
理由は、そもそも植物にウイルスはつきもので、いちいち気にしていられないことが大きく、「あまり深刻に考えず、しかし注意を怠らず様子を見守っていこう」の姿勢だというから「何だ、人間界のwith コロナと一緒じゃないか」と言ったら、「まさにwith ウイルスです。でも人間にはワクチンがありますけどバラには対症療法だけです」と心配そうである。
今のところ2200種類3000本を超すバラの中で感染は30本程度と数は少ないが、油断はできない。
日本の人間界では一旦おとなしくなっていたコロナの感染状況が今また徐々に増える傾向にあり、何とも厄介なことだが、バラの世界のウイルス病が広がらないことを祈るばかりである。
ハロウィンの飾りにも人気が集まっている
ハロウィンのカボチャたちがニコニコしている前にあるモニュメントは、2018年にコペンハーゲンで開かれた「第18回世界バラ会連合世界大会」でYEGが
受賞した「優秀庭園賞」を記念したプレート
世界バラ会連合は世界40か国が参加して3年に一度世界大会を開き、「バラの殿堂」入りする名花の推薦・選定を行っているほか、世界の美しいバラの庭を顕彰している
「お嬢ちゃん、羽田まで頼むぜ」
ウイルスに感染して黄変が現れた葉っぱ
黄変は葉脈に沿って現れる
…と言うことは、樹液がウイルスに侵されるということなのだろう
閑話休題 ガーデンのニューフェイス「バンクシア」
オーストラリア原産で現地では野生の花の中でも良く知られた存在で、庭木としても人気があるそうだ
河合伸志SVが個人輸入した品種で、日本ではここにしかないだろうという