平方録

歌を聞いたらウルウル来ちゃっただけですよ

ヒトは進歩する動物である―なんてことわざがあるかどうか知らないが、最初よりは2度目、2度目よりは3度目という具合に数を重ね、経験を積むたびに、取り組んでいる作業や技というものは上達していくものらしい。

押し迫った暮れに来て計らずもボクがそのように感じ入ったのがガラス磨きである。
天皇誕生日から始めて途中今にも泣きだしそうな空模様の日は休んだけれど、4日間で1、2階合わせて13か所の窓やガラス戸をピッカピカにした。
口で言うのは簡単だが、台風が巻き上げた海水のしぶきがこびりついたガラスを磨くのはそれなりに手数を必要とするものである。
最初こそ拭き洩らしや磨き残しの部分が気になって、何度かやり直す羽目に陥ったが、4日目ともなるとコツというものがある事が分かり、そのコツを呑み込んでしまってからはすべて手順通りにやればピカピカになるという寸法で、こうなればすべては時間が解決してくれるようになる。

で、昨日も真っ青な青空が広がった午前中、気温は高くはなかったが風がなかったので絶好のガラス磨き日和である。
ガラス磨きは曇り空で少し湿気があった方がやりやすいという主張をする向きもあるが、ドッコイ青空がるような日に作業する方がずっと気持ちがいい。そのほうがはかどるのだ。
ご託宣などと言うものにはロクなものがなく、自分の皮膚感覚に頼れる場合はそちらを大事にした方がずっと良い。
世の中の権威などと言うものも同様であてにならないものの代名詞と言ってもよいくらいだ。
自信のない奴に限ってこういう紙っぺらのようなものに縋り付くのがさもしいというか、つくづく情けない。

イカンイカン、悪たれをつくのが目的ではない。
つい筆が滑る。正確に言うとキーボードをメッタ打ちに過ぎる。腹が立つことが多いのだ。
ヘンシ~ン、いや、テンシ~ン!

昼ご飯を食べてガラス磨き後のさわやかな余韻の中で残り時間は本を読んで過ごそうと決めて掘りごたつにもぐりこんだのだ。
最初はクラシックのCDをバックグラウンド用に流し、その後FM放送に切り替えた。
すると日本人女性歌手の歌声が流れてきて、読んでいる文字が頭に入らなくなった。
小休止! と思い流れる曲を聞いていると何だかウルウルしてきてしまったんである。

我ながら最近とみに涙腺が緩んでいることを自覚してはいるものの、歌謡曲の類を聞くだけで…と気を取り直すのだが、堰は切られてしまったようでウルウルが止まらなくなった。
いったい何を聞いたんだ? と言うことになるだろうが、これがまた順番に並べると小坂明子の「あなた」、オフコースの「よみがえるひととき」、荒井由実「あの日にかえりたい」、中島みゆき「時代」、ペドロ&カプリシャス「五番街のマリーへ」、松山千春「大空と大地の中で」の6曲。
最初の曲で頭をガーンと殴られたようになり、その後はこれでもかこれでもかと滅多打ちされた気分である。心にしみちゃったらしい。

こういうことなんだろうと思うのだ。
歳を経るにしたがい、経験を積むにしたがってヒトというものはそれぞれの心のうちに、様々な印象深い事柄を刻んでゆく。
受けた印象やその時のダメージも含めた五感で感じたすべてが強烈であればあるほど、深いひだとなって心に残るものなのだ。
そういうものが蓄積されたところに、刻み込まれたシーンがよみがえってくるような、彷彿させるようなインパクトが与えられると、積み重なったものが一挙に飛び出してくるのである。
ひとつ二つ出て来るなら大したことはないのだが、一挙と言うところがミソなのだ。

歌詞の中身もさることながら、その声の調子ひとつとっても心に染み入り、かき乱されたりもするんである。そうなると自らコントロールすることは難しくなるから厄介なのだ。
本に書かれた描写を読む場合だって似たようなことが起きる。映画もしかり。
歳を経れば経るほど、経験を積めば積むほど、歌に歌われ、小説に描かれ、スクリーンに映し出されるものを見聞きしたとたん、それらの根底に潜んでいるものが目や耳で感じる以上に蘇ってきて胸に迫るんである。
経験値という言葉に置き換えてもよい。それがウルウルの正体なのだ。

ま、理屈をこね過ぎましたかね。何はともあれ、歌を聞いていたらウルウルしちゃっただけですよ。それも年の瀬に。


速報! 寒暖計をベランダに出しておいたら06:40の気温は何と―2・8度‼
今冬初の氷点下。南関東の海辺の街だぜ。ビックリポンじゃぁござんせんか!
パンジーの苗は固まっちゃってるし、サニーレタスの葉はギシギシ音がする。



せん定遅れが影響してブラッシング・アイスバーグがこんな見事な花を咲かせてしまった


うっとりするくらいの美しさだが、早くせん定してあげなければ株が疲れ切ってしまう


部屋の中に入れればお正月も持ちそうだと、妻が花瓶に活けた
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