つい数日前まで巨大な霜柱が出現して、見方によっては氷柱の森というか氷柱の宮殿のようになっていたところだが、さすがにここ数日はそれも姿を消した。
一時期は陽が照らない日には翌日にも翌々日にも持ち越されて、ここは永久凍土地帯かとぼやかせたほどだったのが、今となっては懐かしい。
この冬初めてだと思うのだが、西高東低の気圧配置が崩れて移動性高気圧が大陸方面からやって来て列島を通過していったお陰で、気温も極端に低くはなく、さすがに立春を過ぎると天気は流動化する。
かつては「台湾坊主」という名前で呼ばれていた南岸低気圧もその後から近づいてきていて、これが八丈島の南を通るようだとまた大雪の心配があったが、陸に近寄って通ってゆくらしいから暖かい雨になりそうで、どうせ植え付けるなら、その温かい雨をたっぷり浴びせてやろうという親心なのだ。
春の雨は植物にとってゆりかごであり子守唄でもある。
これからは、時には雪になったとしても降る雨は暖かい雨となり、大地を覚醒させていくのだ。
テレビに出てくる気象予報士の中には「もう、今までのような寒波はやって来ません。多分…」とちょっとへっぴり腰ながら断言する奴も現れて、あいつはなかなか見どころのある奴だわい、と奴の説を信じ込むのである。
信じぃるもの~はぁ~ みぃ~なぁ、救われるぅ~ ♪
ようやく立春が過ぎたと思ったら、昨日はもう「立春」の第2候で「黄鶯睍睆く」(うぐいすなく)に移っている。
そうなのだ。
2006年の2月8日の朝に初音を聴いているのだ。
これを覚えているのは、東京湾の奥にある東京都のごみを埋めて作った人工島の「夢の島」にあるゴルフ場で初めてゴルフをすることになって、早朝に玄関を出る時にごく近くで例のホーホケキョ! を耳にしたんである。
今思えば、あのウグイスはほぼ暦通りに、律義に鳴いて見せたのだ。
1日早かったのは、きっとせっかちな奴だったに違いない。江戸でのゴルフにちなんで江戸っ子並みの気の早さを演出して見せてくれたのだ。
なかなか芸の細かい奴だったようである。
最近はこういう気の利いたウグイスが姿を見せなくなったのは寂しい限りだ。
ポケッ~っと暮らしているんだろうと思う。まるで今のニンゲン社会を写したように。
そんな時代でもないような気がするのだが、本能にまで危機意識は届いていないものと見える。
一度ひどい目に遭わないと自然界は目覚めないんだろうか。ニンゲンとて同じ自然界の一部だが…
ん? なんの話か。
移動性高気圧が去った後にやってくる低気圧が温かな雨を降らした後は、近所の尾根道に分け入って初音に耳を澄ませたいと思う。
首尾よく鳴いてくれるかどうかだが、聞けなくたっていい。そういう行動に出ること自体が心浮きたつじゃないの。
峠まで、春を出迎えに行くのだ。
ウグイスはこの茂みの中で「時にあらず」と待っているのだが、江戸っ子の血をひくものがいるやもしれぬ
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