富士山の麓を発った相模川が太平洋に流れ込むところ…その左岸河口のすぐ近くの柳島海岸にテリハノイバラがまとまって咲く場所がある。
身近な野山に分け入ると咲いているのを見かけるノイバラにそっくりな花だが、名前の通り深緑色の葉っぱはとても光沢があり、花数こそノイバラより少ないものの、一つ一つの花が大きいという特徴があって、これが海岸べりの荒れ地のような場所に群れ咲いているところはなかなか見応えがある。
6月から7月にかけてが花期で、今年も楽しみにしていたのだが、ふいに襲ってきた椎間板ヘルニアなどと言うローカを象徴する故障に遭って、花盛りにここを訪れる機会を逸してしまった。
そして昨日、夏花壇の後始末や春花壇の準備などの手を休め、小春日和に誘われてパトロールに行き、秋のテリハノイバラがちらほら咲いている光景に再会してきた。
初夏のころのように花数は多くはないが、一重咲きの野生の白いバラの花が枯野に近づいている景色の中にポツリポツリと咲いている姿は健気で懐かしい。
そして秋に咲く花々は初夏に咲いた仲間が実った丸い実を真っ赤に染めている中に点在して咲いているものだから、日を照り返す葉っぱの緑と赤い実と白い花の3色の対比もまたきれいである。
南に面して大きく開いた湾の奥に咲くあのテリハノイバラたちも日が暮れた後の真っ暗な海岸から昨夜の天体ショーを見上げていたに違いない。
大自然の営みはそこここで「何も特別な事じゃないさ」と言わんばかりに、淡々とそれぞれのペースで静かに進められていて、昨日はたまたまそうちの二つを目に焼き付けたということに過ぎないのだと思う。
かくしてニンゲンは大宇宙の大いなる繰り返しのサイクルに中に生きている…生かされている…ということか。
昨日までは…
茅ケ崎・柳島海岸
秋晴れのはずだが、まるで春霞に霞む富士の山のような光景だった
このところの好天で富士山に積もった雪も解けてしまったように見える
裸で寝そべっても砂浜はもう熱くない
ときどき寄せる波音が響くだけ その音も半分は高い空に吸い込まれて行く