不気味なくらいに静まり返っている。
梢の葉がそよとも動かない。
午前4:08。
台風はどこに行ってしまったのか。
恐る恐るベランダのガラス戸を開けると辺りはまだ暗く、普段は聞こえない波の音がゴーと低く単調な音を響かせている。
台風の接近を知らせているのは唯一この波の音と生暖かい空気だけである。
姫の家で夕飯を食べ、車で駅に送ってもらう直前に姫にお別れを言って今度会えるのはお正月だねと言ったら、一瞬表情がゆがみかけたが、彼女は必死にこらえ、秋休みがあるだろう、日曜日にも遊びに来れるだろうと反論するような口調で言う。
その健気な態度に「うん、そうするよ。絶対来るよ」と言うと、少し安心した顔つきになる。
新幹線を使って帰ってくる手もあるが、直通運転の各駅停車のグリーン車に身をゆだねて2時間40分、トコトコと戻ってきた。
サッと家に帰ってくるより、この悠長ともいえる時間を経ることが、濃密な6日間を過ごした後の気持ちの整理にちょうど良いのだ。
あれやこれやを思い出しつつ、現実に戻る心の準備を整えるわけである。
暗くて良く見えない窓の外をぼんやり眺めながら、これでボクの夏は終わったのだと区切りをつけるのである。
台風は午前4時現在まだ岐阜県白山市付近らしいし、そのまま進めば日本海に抜けるコースのようだ。
南関東への影響はそれほど深刻なものではないかもしれない。
そよともしなかった木々の葉だが、辺りが明るくなるにつれて時折、風の音とともに一瞬だがざわざわと揺れるようになってきて、強い風も混じるようになってきた。
台風の影響がなくなるまで、今日一日は家の中でじっとしていなければならないか。
心の整理はつけてきたつもりでも、腑抜けになったジジイの思考停止の状態はもうしばらく続くことだろう。
電車での2時間40分は満月が付き合ってくれた(この2枚は栃木県内の東北本線上から)
多摩川を渡る時が撮影ポイントかなと思ったのだが、この時は生憎、雲に隠れてしまった
台風はどこへやら、アサガオは今朝も健在
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