養老先生のまるが死んだそうだ。
21日のことで、解剖学者の飼い主・養老孟司先生によると、解剖したわけではないだろうが死因は心不全だという。
拘束型心筋症を患って最近はほぼ寝たきりの状態が続いていた末の大往生ってところだろう。
年齢は18歳だそうだから人間でいえば90歳前後ということらしい。
スコティッシュフォールドという猫種だそうな。
地元紙に養老先生に抱かれたまるの写真が、それもカラー写真で掲載されるほどのニュースになった。
さすが地域密着の新聞だけのことはある。
養老先生の談話も載っていて、曰く「存在感のある猫だったので、気持ちの調整に少し時間がかかりそうです」。
「整理」ではなく「調整」という言葉を使ったところが、言葉を大切にする養老先生らしい。
NHKテレビでだいぶ前に何回か続きで養老先生のインタビュー番組があり、その画面に先生の机の上はもちろん、書斎の中で自由に過ごすまるの姿を見ていたので、訃報を聞いたこちらとしても感慨はひとしおである。
確かに存在感抜群の猫だった。
最近では同じNHKで「まいにち養老先生、ときどき まる」という番組になって放映されたのを見た。
驚いたことに、そこでは、この夏が過ぎ去った後、養老先生自身が体の不調を感じて病院に行ったところ、その場で緊急入院させられて心筋梗塞の疑いがあると告げられ「自分じゃ心筋梗塞には絶対ならないと思っていた」という先生が、神妙な顔をしていたのが印象に残る。
「食が細くなった。あんまり食べられなくなった」とも言っていたから、由比ガ浜のつるやのウナ重など食べきれなくなるんじゃないか。
その長年の相棒とも言うべきまるが心不全で旅立ったのだから、「気持ちの調整に時間がかかりそうだ」という先生の気持ちは痛いほどわかるというものだ。
「まいにち養老先生、ときどき まる」は鎌倉の自宅とその周辺で撮影されたもので構成された番組で、ゆったりした時間の流れを感じさせ、老先生の薫り高い言葉の一つ一つが心地よかっただけに、まるがいなくなった今、その行く末が気になる。
良い番組から消えていくからね。
(見出し写真はわが家で最初に咲いたニホンスイセン。せん定・誘引作業を終えたつるバラの根元にかがみこんで堆肥やら油粕の肥料をくべていると、耳元でポンという音が2度聞こえ、辺りを見回すと顔のすぐ脇でつぼみが開いていた。開いたばかりだから真っ白なはずの花びらは緑色がかっていて、おまけに花の中心部にある黄色い環状のひらひらもくすんだ黄色をしている。生まれたてってのはこういうもののようである ♪)