クリスマスイヴの日のまだ昼下がりのことである。
「二合会句集」
たった43ページの薄っぺらな、句集と呼ぶのもはばかられるような小冊子である。
10人の同人の2013年から3年間の作品の中からそれぞれ自選した30句を集めた作品集だ。
素人同人のそれにしては表紙まで描かれていて、実は同人の画伯に頼んで描いてもらったオリジナル作品だが、確実にインパクトと品格を与えているのである。
印刷やら装幀やらも、同人の貧乏旅行作家のツテで安く請け負ってくれる所を探したものだから、驚くほどの低価格で出来上がって来たのである。
肝心の中身に関しては、それは素人集団の手慰みなのだから押して知るべきであって、そこが大切というわけではないのだ。
要は志の問題。集まって句を作り、そこから作品集を作ろうという話に発展し、恥ずかしながらと大いに照れながら、その気になって行く…
それが何か文句あっか ? という話である。
そもそも、わが句会は「二合会」といい、結成は今からかれこれ20年近く前に遡る。
仕事にも脂が乗り切って、両肩にそれなりの責任を負っている頃、ふと浮かんだのが「今がピークってやつだろうな」という感慨である。
入社以来の行きつけの飲み屋で、少しばかり年上の亭主に「仲間うちで馬鹿話や愚痴を言い合うのもうんざりして来た。仕事を離れた後のことも考えると、割り箸の袋の裏にでも17文字を刻んで批評し合うってのはどうだろうか」と水を向けたところ、「いいよ」と間髪入れない二つ返事が返って来たんである。
この亭主の親父という人が横浜の文化人たちを束ねて「横浜文芸懇話会」というものを立ち上げた張本人で、息子にもその血が流れていたらしいのである。
店も文芸懇話会メンバーの溜まり場だったそうであり、確かにメンバーだった老人たちが時々顔を見せていたのを覚えている。
以来、わが同人に異業種の知り合いを引っ張り込んで今日に至っているのである。
今やメンバーの多くが第一線を退き、ほぼ2ヶ月に一度、いそいそと集まってくるのだ。
そんな出自だから「酒は主役じゃないぞ」と言いつつ、どうしたってアルコールが必須なのである。
で、「飲んでもいいが二合まで」と決めたら、そのまま会の名前になってしまったのだ。
しかも、もうだいぶ前からだが「品種品目ごとに二合だろ」という拡大解釈もまかり通り始めているのである。
しかし、己の作品がきれいな書体の活字になって目の前に現れ、しかも、その活字がきちんと「前に倣え」をして実にお行儀よく並んでいるのを見るのは、どこかくすぐったい気持ちにさせられるものである。
でも決して悪い気分ではない。
今回の句集は直近3年間の作品を集めただけである。15、6年分の作品はまだ眠っているのである。
眠りから覚めることがあるのだろうか。まるでゴジラのようではないか。
はたまた自選句集などと大それたことにつながるのかしらん。
ま、妄想は妄想として…
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