平方録

イヴのプレゼント

初句集が出来上がって来て、それがクリスマスプレゼントとして届いたのがイヴの昼下がりだったのだが、もう一つプレゼントが用意されていたんである。

最後に会ったのが15年くらい前だったか、もっと前だったか忘れるくらい久しぶりの友人と再会して酒を酌み交わしたのである。
文化人類学者でアジアや中南米をフィールドに研究を続けて来た男で、名古屋の大学を定年前に辞め、2年ほど前から放送大学の教授をしているのだという。
25日まで横浜港で「マチュピチュの出会いと古代アンデス文明」という展覧会をひらいていて、最終日まで会場にいるから良かったら見に来てくれ、と電話があったのだ。
閉幕3日前のことで、それで押っ取り刀で出かけて行ったのである。

とてもゆったりとした男で、どこか常人とは違う一面を持っている。
直接目撃したわけではないが、子どもの頃ケーキやらなにやらが並べられたテーブルの前に座っていて、母親からハエがたからないようにと「ハエを見ていてね」と言われて、ケーキの上に止まったハエをじっと身じろぎもせずに見ていたというエピソードの持ち主なのだ。
結婚式の披露宴でおじさんという人が披露した話で、他人のことながら今だに印象深く記憶に留めているのである。
おじさんはこうも付け加えたのである。

「ちゃんと見ていなくちゃだめでしょと母親に注意され、『大丈夫だよ!ハエはケーキを全部食べないから』と答えたんです。そういう子でした」
飲みながらその話になって、「あの時は友人の何人かが俺が最悪の女ったらしであるかのようなスピーチを繰り返したので、相手の親の手前もあってヒヤヒヤしたんだが、あの話でオジキに救われた。そうか、あの話、覚えていてくれたのか…」。
奴にとっても思い出深い話だったのである。

そういう男だから、ひと月近くも展覧会が開かれていたにもかかわらず、閉幕3日前になってやっと連絡してくるのである。
今は単身赴任で千葉に住んでいるから頻繁に会えるよというが、そういう話ではないだろうに…
気の短いボクとは正反対の性格なんである。

飲み屋に向かう途中、クリスマスイヴをミナト界隈で過ごそうという若い男女のカップルで大混雑している駅前の雑踏で、元の勤め先の先輩とばったり出会い、「暗躍してるな!」などというものだから、旧友と再会したんだ、ついこの先で展覧会が開かれていると教えたら、なんと最終日に出かけて行って友人の説明まで聴いて帰って行ったそうである。

この男といると、時々並外れたようなことが起こるのである。
昼過ぎから、思いがけない一風変わったイヴを過ごしたのだった。



実に現代的な「ヤマネコ(オセロット)象形ボトル」 紀元前50〜後600年のペルー、モチェ文化


色も形も像に表された仕草や表情まで、どれをとっても驚かされ、ついつい引き込まれる「戦士とリャマ象形ボトル」 紀元前50年〜後600年のペルー、レクワイ文化


エクアドル海岸地方で栄えたチョレーラ文化の「ペッカリー(ヘソイノシシ)の土偶」
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