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平方録

九州紀行 その5

元気な博多の夜が明け、早々にホテルを後にして今回の最終行程・大分県湯布院に特急列車で向かう。

 
ホテルから駅に通じる地下街で見つけた店の中華粥がおいしそうに見え、腹ごしらえ
横浜の中華街で親しんだ中華粥とは別物の、いろいろアレンジが進んだ粥だったが、温かな粥は起き抜けで完全には目覚め切っていない体を覚醒させるに十分で、はらわたに染み入る美味しさだった
かくして、幸先の良く一日が始まったはずだったのだが…
 

由布院行きの特急が発車するホームに上がってみて驚いた
まるで飛行場の出発ロビーか到着ロビーにでも紛れ込んでしまったかと思えるほど、大型のトランクに取り囲まれる
しかも、聞こえてくる言語は日本語ではない


顔つきはボクらとあまり変わらないからお隣の国々からの観光客だろう
海外旅行をしているのだから気持ちが多少ハイになるのは理解できるとして、話し声のトーンが高く、やかましい
 
由布院行きの特急が入選してきた
思い返せば、この列車に乗るため、指定券を買うためにひと月前の正午過ぎに自宅最寄りのJRの駅のみどりの窓口に並んだのだが、窓側を含む2人分の席は確保できず、わずかに売れ残っていたのは通路側の、それも2人並んだところはなく、飛び離れたところしかなかった
5両編成の特急は午前10時の発売開始と同時にほとんどの座席が予約済みになってしまっていたのだった
窓口の係員曰く「大手の旅行会社が抑えてしまったのでしょう。人気列車でしかも5両編成と短いので座席数もそれほど多くないんですよ」
見知らぬ土地を列車で旅するとき、窓外の景色を眺めるのは何といっても旅の楽しみの一つ
アルコールを片手に、列車の揺れに身を任せつつ、レールのつなぎ目を通過するときのガタンゴトンという音を聞くのは旅の楽しさを増幅させるものである
しかし、列車の通路側に押し込まれ、周囲を外国人に囲まれた「完全アウェー」
しかも、好天の中をひた走る列車に太陽が降り注ぐものだから、件の外国人たちはブラインドを降ろしてしまって、スマホばかり見ている
挙句に、闇バイトに応募したコマのごとく、どこからかスマホを通して送られてくる"指令"にでも従うかのように、レストラン兼売店が開店すれば一斉に席を立って狭い通路に行列を作り、記念撮影グッズが〇号車にあるとアナウンスがあれば、皆一斉に席を立つありさま
キミたちは風光明媚な日本を旅して、窓の外の景色を見ようとしないのかね…
そんな乗り方しかできないなら、何も特急列車を使わずとも貨車で十分だろ、屋根付きの貨車があるしさ、と声を大にして言いたかった
かくして博多から由布院まで2時間余り、ボクらの方が窓のない"護送列車"にでもも押し込められたかのような気分で、列車の揺れに身を任せるよりほかなかったのでございます
山の神によれば、同じ車両にボクらと同じような日本人の夫婦が一組いて、やはり別々の離れた席で"ヤレヤレ顔"をしていたそうである
 
ホウホウの体で着いた由布院ではありましたが、改札口を出ると目の前に由布岳が出迎えてくれ、気分もすぐに持ち直したのでございます


ところが……
このブログでは何度この言葉を使うのでありましょうか
由布院の街を散策していて金鱗湖の近くの道路が見渡す限り人で埋まっている光景に出くわしたのでございます
年間観光客数が2000万人を数えるわが鎌倉では、土日、祝日ともなれば鎌倉駅から鶴岡八幡宮へと通じる小町通がこの写真のように観光客でぎっしり埋まる
それと同じ光景に九州の山懐の小さな温泉地でっ遭遇するとは驚きである 
ほとんどインバウンド
そしてさらに驚いたことに、金鱗湖へと続く地元の集落へと通じる地元の人しか通らないような道沿いに真新しい戸建ての家が点在していて、〇〇荘、▽▽館などという看板が掲げられている
タクシーの運転手によれば「インバウンド向けのゲストハウスですよ。しかもみなあちら資本で建てられたものばかり」だそうな
首都圏ではインバウンド向けのあちら資本の観光バスが走り回っているけど…
 

鎌倉は道は狭いし、観光名所になっている寺院でも大きな駐車場はないので、観光バスがずらりと並んだ光景を見るのは久しぶりである

予約した旅館のチェックインは午後3時なので、荷物だけ預かってもらい身軽になって散策を続ける
 
 
 
夏日の連続だった薩摩路からの寄り道なので紅葉など頭になかったが、訪れてみると木々の葉がきれいに染まり始めていて、思いがけないことではあった


町中の喧騒を避け、ひなびてのんびりした景色の広がる旅館裏手の川沿いに出てみる
 
何と川沿いの道が遊歩道になっていた
しかも、人の気配は全くと言っていいほどない
これが同じ由布院なのか…


川に沿って上流方面に歩くと鐘楼を兼ねた雰囲気の良いお寺の山門が見えてきた


臨済宗妙心寺派の禅寺・佛山寺
紅葉の名所らしく、イチョウの大木はすでに散りかけてしまっていたが、ほかの境内の木々はまさに紅葉真っ盛りという感じで、絶好のタイミングに訪れたようだった
境内には日本人旅行者と思しき3、4人の人影があっただけで、落葉の散る音が聞こえてきそうなくらいの静寂が保たれ、とてもよかった♪
 

佛山寺から緩い坂道を下って金鱗湖へ出ると、この小さな湖の周囲でも木々がきれいに色づき始めていた


金鱗湖から流れ出る川にコサギがいて小魚を狙っている

すぐ脇はインバウンドたちがぞろぞろ歩く観光道路だが、コサギはひるむことなくエサ取りに集中し、時々小魚をゲットしては観光客から拍手と喝采を浴びていた
由布院のコサギはなかなかの役者である


昼ご飯は「天井桟敷」という旅館直営の茶房で鴨サンドを食べる
1時間待ちだと言われたが、宿泊する宿の人が荷物を預けるときに予約をしてくれ、近場をぶらぶらしていると30分ほどして携帯電話に連絡があり、「お席の用意ができました」と知らせてくれた


窓の外の紅葉を眺めながらの食後のコーヒーは、これが由布院でのことだと思うといっそう感慨深いものがある
店内に終始流れている音楽はグレゴリアンチャントのようなおごそかな聖歌ばかりで、ボク的にはモーツアルトでも流してもらった方が好みなのだが…
 

金鱗湖から流れ出る川沿いの木々も赤く染まり始めていた


旅館に泊まった翌朝の金鱗湖


流れ込む川に交じった温泉の温かな流れが一夜明けて冷えた湖水と冷たいk外気温に触れ、湖上に霧を生じさせるという

生憎、曇り空だったため放射冷却もなかったと見えて、あまり顕著な霧は発生していなかったが、それらしきものが水面に漂っているのがわかった


九州の旅最終日の5日目
由布岳が幻想的な姿で見送ってくれた
今回の旅では行く先々で霧島、桜島、開聞岳、由布岳と、名だたる面々が見事な山容を惜しげもなく見せてくれ、とても印象に残った
名山に見守られつつ旅した5日間だったといっていい♪


特急ゆふ1号で大分駅に向かう
この列車からも大きなトランクを携えたインバウンドの皆さんが転げ落ちるように列車から降りててあっという間にホームが黒山の人で埋まっていった
下手をすればボクらもこの波に飲み込まれ、列車に乗りそこないかねないところだった


インバウンドが去ってがらんとした特急列車の最前列の席に座り、前方の眺望を独り占めしてやった


由布院から大分までの久大本線は下り坂の連続で、列車は軽いディーゼル音を響かせてて転がるように走った


大分駅では博多行きの特急ソニックに乗り、濃く会で新幹線に乗り換える
 
床に木を使った明るい雰囲気の車内 ミッキーマウスの耳のようなヘッドレストが楽しい


小倉から乗ったのぞみ車内で、小倉駅構内で買った駅弁を食べる
好物の牡蠣を使った弁当にしたが考えてみればカキは瀬戸内産で、九州の食材を使った弁当にすればよかったと軽く後悔する
でもこの牡蠣弁当、身がぷっくらしていておいしかった♪
余談ながら、のぞみで新横浜まで乗車して、横浜線経由で鎌倉まで帰るのが最速かと思ったが、名古屋で児玉に乗り換え、小田原から東海道線の普通電車で隣町まで乗り、そこからタクシーで帰った。
大した額ではないが運賃が安くなったことと、横浜駅の混雑を避けられたという点、「戻る」という気分的な不快さがクリアされると言うてんで、このやり方はアリだと思った
そもそも、小田原停車のひかりがあれば、もっと効率がいいのだが、数年前のダイヤ改正で小田原停車のひかりが消えてしまったので仕方ないことではある
(このおシリーズはもう一回続きます)
ことがその理由だったが、
(このシリーズはもう少し続きます)
 
 
 
 
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