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平方録

おじいちゃん こんにちは !

おじいちゃん こんにちは !

ボクをじっと見ていた見知らぬ4~5歳の男の子から、突如こんな声を掛けられてボクは大いに戸惑ってしまった。
旧聞に属する大晦日、姫や妹君、若を連れて新江ノ島水族館に行った時のこと。
相模湾に面した吹きさらしのスタンドからイルカショーを見物して引き上げる観客の列の中で感じた視線の主がその男の子だった。
まぁるいつぶらな瞳の子で、しきりとボクを見つめるのだ。
そして何度目かに視線が合った瞬間、冒頭の言葉を投げかけられる。

そりゃ確かに、姫たちからは「じいじ」と呼ばれているさ。
それは戸籍上でも明らかに「祖父」という立場なのだから至極当然なことだと特段の感想を持っていたわけではない。
第一、40代でおじいちゃんになる人もいる。
ましてやボクは馬齢を重ねて古希も過ぎている。
それなのに、あの心に突如立ったさざなみは何なのさ。

男の子にとってボクの面影が特別だったんだろうか。
例えば、彼の祖父がボクによく似たロマンスグレーのとてもハンサムなおじいちゃんだったとか…
それなら至極納得する。お正月にお年玉をもらえる優しいおじいちゃんが、一足先にばったり目の前に現れて「僕だよ、おじいちゃん ! 」と雑踏の中で呼びかけたんだとしたら納得もしよう。
でもなぁ…

声を掛けられたボクはその子の頭に手をそっと置いて「こんにちは」とだけ返事を返してそのまま脇にいた姫と一緒に雑踏に紛れていった。
ただそれだけの話なのだが、ボクの心に突如として立ったさざなみの正体が何なのか、あれこれ思いを巡らせてみたが思いつくのはただ一つ。
今まで肉体的にも精神的にもジジイだと思ったことのない自分が、純真でいたいけのない幼い子の目には「おじちゃん」でも「お兄ちゃん」でもない「おじいちゃん」に映っているのだという、紛れもない現実を見せつけられたという辺りだろうか。

純真な子供の目は真の姿を捕えているってことかぃ。
あ~あ…

鎌倉山から見た箱根連山(左)と丹沢山塊を従えた富士

これも鎌倉山から

稲村ケ崎から


同じく稲村ケ崎から(見出し写真も)
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