横浜のバラの名所・横浜イングリッシュガーデンでは今日10日からつるバラのせん定作業に着手するらしい。
いよいよ来季シーズンに向けた地道な下準備が始まるわけで、そうか、もうそんな時期になったんだなぁと思う。
ここ2、3年は勘弁してもらっているが、かつては大アーチのせん定作業に駆り出されて寒風にさらされながら脚立の上で朝から夕方まで立ち通しで格闘したことがある。
あそこのバラは育成状況がいいのでシュートの本数が多く、しかも複雑に絡み合っているうえ、栄養状況を反映して1本1本のシュートが10m近くまで延びている。
せん定作業はこれらをすべて解きほどき、葉っぱをそぎ落として丸裸にするところから始まるのだが、これがこうして書くほど容易い作業ではない。
絡み合ったシュートをほどこうとすると、シュートの先は必ずと言っていいほど暴れる。
その暴れた先っぽが頬に触れでもすればトゲが肌をひっかき、一筋の血がスゥ~ッと流れる。
皮手袋をはめて作業するのだが、アーチに結束する段になると紐が結びにくくなるので片方の手袋を外して作業を進めると時間が経つにつれて手指や甲は血だらけになってしまう。
おまけに2m近い脚立の上で作業するわけで暴れるシュートをよけようとしたりすれば脚立から転げ落ちる危険性だってあるのだから、おいそれと逃げるわけにいかず、頬で受け止めることになる。
こんな作業を寒風吹きすさぶ脚立の上でバランスを取りながら4~5時間もやっていると、身体は疲れ芯から冷えてくる。
高くて不安定な脚立に上っての作業だから、まさか体の内部から暖を取る気付け薬を舐めながらってわけにもいかず、腰痛持ちのロージンには決していい環境とは言いかねる。
数年前、手伝い作業3日目の朝、起きて顔を洗おうとしてかがんだ瞬間、腰に一撃を食らって動けなくなり、以来、脚立の上に上がってやる大アーチのせん定作業はご遠慮申し上げているところなのだ。
もともと腰痛の気があったところで連日、寒風にさらしたものだから当然の帰結と言えば帰結なのだ。
せん定作業の手伝いが出来ているころはちゃんとした楽しみがあった。
作業終了後、何人かと連れ立って横浜駅西口の狸小路に立ち寄って豚の足や耳、尻尾などをつまみに薬缶で温めた焼酎をあおって「今日の仕事はつらかったぁ~ あとは焼酎あおるだけぇ~ ♪」と山谷ブルースを頭の中で流しながら疲れを癒したものだ。
いつの頃からか、様々なことを懐かしがる年ごろになってしまった…
わが家にもつるバラが7本ある。
このうち真面目にせん定作業に取り組んだ方がいいバラが4本ある。
1日1~2時間ならへっちゃらだろう。そもそも寒風吹きすさぶ環境には植わっていないし、よしんば寒い日で、風でも吹いてきたらその途端に止めちゃえばいいんだから。
無理しないでボチボチやろうと思う。
こういう作業って言うのは他の事は何も頭に思い浮かばず、そのことだけに没頭できるのがいい。
ということは没我の境地に一歩近づくわけで、坐禅で求めるところにも一脈通じるところがあると言えるし、作務みたいなものなのだ。
例え1~2時間程度の作業であっても終了後の‶しきたり〟であり‶けじめ〟である焼酎は、きちんとあおらなければいけないと思っている。
冬場は何より体の中から温めることが一つの有効な手立てなのだから。
となると作業時間は午後ということになるか…
今日は雲の優勢な日らしいから、お日様が出てくるようなら考えよう。
(見出し写真は2階から見た玄関アプローチのアーチに絡めた「伽羅奢」。本来1季咲きで初夏にしか咲かないが、今年の異常気象で「ローゼンドルフシュパリースホープ」ともども、今の時期も咲いている。せっかく咲いているのだが、これらの花と葉をすべてそぎ落とすところから作業は始めなければならない。ここまで咲かせてしまって来期に影響が出ないといいが…。まっ、年内からじっくり洋上を始めれば来年の初夏までには体力を取り戻すだろう)