平方録

30数年経ってもナゾめいた所だぜ

わが家からそう遠くないところの見晴らしのよさそうな山の上に、世俗から全く遮断されたような印象の病院がそびえていた。

もともと人家の密集する地域ではなく、大きな家が木々に囲まれて点在しているようなところで、しかし最近はこの一角に建売住宅などが数件建てられて洗濯物が干されたりするのを見ると人が暮らしているのを感じるが、目がそう感じるだけで昼間近づいてもシーンとしたままである。
そんなわけだから、書き割りのごとく舞台装置として生活を感じさせているだけで、実際の人の動きが目に入るという訳でもなく静まり返っているのだ。
もちろん人とすれ違うこともない。

人家が集まっているところでさえそうなのだが、道は両側を木々に覆われた中を伸びていて、しかも曲がりくねっているから先は全く見通せない。
娘たちがまだ小学生だったころだから30数年も前のことになるが、1度だけ物珍しさも手伝ってくねった道をたどっていったことがある。
何せ木々に覆われた道は昼なお暗き…を彷彿させているからちょっとドキドキする気分で進んでいったのだ。

たかが7、8分の距離だったと思うのだが、突如開けた視界の先にレンガ造りの古びた4階建て(3階建てだったかもしれない)の要塞のような建物が出現したんである。
山の上だから遮るものも、比較になるような構造物もなく、辺りを睥睨するようにそびえている…と言っても誇張ではないような、どこかヨーロッパのいわく因縁のありそうな館か得体のしれない修道院のようでもあり、近づくのもおぞましい雰囲気だったのだ。
しかも窓枠には鉄格子がはめ込まれていて…

曲がりくねってたどってきた道は行き止まりで、もうその先に道はない。
たどり着いた病院にも人の気配はなく、シーンと静まり返っていたのだ。
しかし、静まり返った建物の鉄格子の窓枠の奥にこちらを見ているトロンとした目が並んでいるのかと思った瞬間、恐ろしくなって門前から逃げるように戻ってきたのだ。

この病院の診療科目は単一で、一度この病と「診断」されてしまうと多分一生涯鉄格子の中に閉じ込められてしまったような時代の話である。
後に内科も診療科目に加えられたようだったが、変な診断でも下されたらそれこそ一大事だから、診察を受ける人がいたのかどうか怪しいものだと思っている。
そういう一種独特な雰囲気を持ったところだったのだが、30数年ぶりに近づいてみたのは、どこかに抜ける細い道でもあるんじゃないか、獣道であってもどこかに通じているのであれば、それをたどってみたいと思ったんである。

うっそうと茂る木々の中を曲がりくねった道は以前と変わっていない。
しかし鉄格子付きの窓枠がはまったレンガ造りの建物は跡形もなく消えていて、跡には平屋の白く塗られた事務棟とその裏手に回り込んでみてわかったのだが、2階建てのプレハブ造りのような華奢に見える病棟が立っているだけである。
窓に白いカーテンが下がっていたが、鉄格子はなかった。
あの異様さと不気味さが消え去ってしまった後の「そぐわない」感は唖然とするばかりである。

時代は変わったのだ。何しろ人権意識というものが強く叫ばれる時代である。
と言っても、これを制限しちまおうゼと目論んでいる一派が今選挙で声をからしていて、それ自体恐ろしいことなのだが、有権者の多くがなかなか気づいてくれないのが歯がゆい。
制限されちまった後では、いかに泣き叫ぼうが悲しもうが時すでに遅しなのだ。

唖然とした思いで眺めていたら最寄り駅とを結ぶ来院者用のシャトルバスが戻ってきたので運転手に聞いてみた。
この先に抜けられる道はあるのかと。
返ってきた答えは全く要領を得ないもので、30数年たってもやっぱりあそこは謎めいているのだ。
どう考えたって、やっぱりヘンだよ!



今朝5:24の東の空はきれいだった


この秋、相模湾のシラス漁は不漁が続いているが、なぜかデパ地下でゲットしてきたのだ


散歩の途中に見つけたキツリフネソウ


こちらはよく言見かけるツリフネソウ


白いタデが咲き


タデを含めて5、6種が花園をなしている


地下水がわき出しているのだが、水質に問題があって飲めないのだ
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