まだ陽が十分な高さに上がる前から、身体を包み込んでくる辺りの空気の緊張度合いというようなものがこれまでとは違っていた。
おまけに、天気予報は最高気温が16~17℃と4月上旬並みの高さまで上がりそうだと言っている。
朝ごはんを終えてベランダのパンジーとアネモネ、そして少しばかりの野菜に水をあげていると、背中に照り付ける太陽の光はジリジリさを感じさせるくらいに‶熱い〟。
そして思う…
「もしかしたら今日あたり聞けるかもしれない ♪ 」
それで十分に陽が高く上ったころ合いを見定めて家を出たのだ。
ほぼ11時だった。
前日までのダウンジャケットの代わりに身軽な薄いウインドブレーカーに変えたのは‶おまじない〟でも何でもなくて、それくらい暖かかったという証拠でもある。
近所の池と森の公園を手始めに聞き耳を立てながら、ゆっくりゆっくり、キョロキョロしながら歩く。
耳に届く小鳥の鳴き声がこれまでより種類が増えたように感じられたのは、幸先の良いことのように思えた。
森がにぎやかになり始めている…そんな風に感じたのだった。
道端に木々の塊が残り、藪が茂る場所を選んでぶらぶらぶらぶら。
やがて広町緑地という、宅地開発の波から奇跡的に残った広大な緑地に入り込んでゆっくりゆっくり聞き耳を立てながら歩いていると…
道沿いの小さな流れに沿って続く笹薮の中から「チチチチチッ」「チャッチャッ チャッチャッ」という小さな鳴き声が漏れてきた。
「ん? ウグイスの地鳴きの声じゃないか」…そう思って上の歯の裏側に舌の先を当て、それでチャッチャッという音を真似て出してみたのだ。
すると茂みの笹が揺れ、逃げ去ったかと思ったらそうではなくて、同じ範囲を飛び回っている様子である。
さらに今度は茂みの中の動きに別の動きも加わって、どうやらもう1羽がやって来たらしい。
想像だが、ボクのチャッチャッに反応してくれたのはたぶんメスで、次にやってきたのはたぶん彼氏なんじゃないか。
「おのれ、俺様の彼女にちょっかい出すのはどこのどいつだ!」って感じで、威嚇にやってきたんだと思う。
でも、メスの方はすぐには飛んでいかないで、如何にもボクが出す聞きなれない鳴き声もどきに興味がありそうに振る舞ってくれたのだ。
その証拠に、藪の中に隠れて姿を見せなかった「彼女」がチラッとだけど姿を現してくれたのだ。
あれは完全に「わたしはここよ」という感じだった ♪
そして我に返る。
目の辺りに見覚えのある1本のまっすぐ横に伸びる線がボクの目に留まる。
体は薄茶色というか薄いオリーブ色の混じったような色合いである。
間違いない、やっぱりウグイスじゃん ♪
結局、初音はお預けだった。
でも、警戒心が強く滅多に姿を現さないウグイスの「お姿」を間近に見られたのだから大収穫である。
去年は鳴き声しか聞いていない。その前の年も…
今日は昨日よりさらに気温は上がって17℃か18℃位になりそうだという。
お~い、オスの諸君諸兄、他のオスが彼女にちょっかいを出さないように、いよいよ縄張り宣言の「ホォ~ホケキョ~」の出番じゃないのぉ~。
もたもたしてると彼女も縄張りも奪われちまうぞ!
道端に小さな流れがあり、その奥に藪が続く小路
春の日差しが枯野に「目覚めたらどうかね」と言わんばかりに降り注ぐ
様々な鳥の鳴き声が聞こえてくるのだが…
見出し写真はボクの誘い?に乗って姿を現したウグイス嬢 ♪
動きが速いので写っているか半信半疑だったが、iphoneを望遠にして手当たり次第にシャッターを押し、20枚近く撮ったうちのたった1枚の画面左上にチラッとだけ写っていた