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平方録

う~ん 誰が作ったんだろう

葉をすっかり落としたカツラの木の枝に小さな鳥の巣があるのを見つけた。
わが家の狭い庭のほぼ中央に11本くらいの株立ちで植わっているが鳥の巣を見つけたのは始めてである。
直径7~8cmの小さい巣だが、細かい枝を組み合わせてとても繊細、かつ上手に作ってある。
特に下辺部分の曲線が野生の物とはとても思えない優雅なカーブを描いていて、見惚れてしまう。

この洒落た住まいの住人は一体どこの誰だったのだろう。
多分春から初夏にかけての季節には子育てをしたのだろうと思うのだが、こちらはバラの花のツボミに穴をあけてツボミを台無しにしてしまうバラの天敵・バラゾウムシ退治に気を取られていたからだろうか、カツラの木のすぐそばでも‶監視作業〟をしていたけれど、巣があることさえ気付かずにいた。
気付いていたら楽しみが倍加したのにと、ちょっぴり残念である。

この巣の住人はシジュウカラじゃないかと思う。
数年前にカツラの木に手作りの巣箱を掛けたことがあった。
すると間もなくシジュウカラのつがいがやって来て巣箱を気に入って住み着いたのだ。
しかし、シジュウカラ夫婦が出入りを始めるとほどなくしてスズメのつがいがやって来てシジュウカラを追い払い、巣を占拠してしまった。
それでシジュウカラの代わりに子育てをするのならともかく、追い出した後はさっさと姿をくらましてしまったのだから、何をかいわんやなのだ。
あの時以来、ボクはスズメに敵意とまでは行かないものの、それに近い感情を抱き続けている。

あの時のシジュウカラが戻ってきていたんだろうか。
きっとそうに違いない…。なんと粘り強い夫婦であることか。
ヒナは何羽巣立ったのだろう。
この瀟洒な住まいはそのままにしておくから来年もきっと戻って来てくれるよな…そう願わずにはいられない。

野生の子育てと言えば、わが家の北西角の書斎の窓のすぐ脇に大きく茂っていたナンキンハゼの木にキジバトが住み着いて子育てをしたことがあった。
5~6年前のことで「デゥーデゥー ポッポー」という鳴き声をうるさいと感じたことがあったからキジバトに間違いないと思う。
書斎の机の前に座り本を読んでいたりすると、ふとした弾みにボクが顔を横に向けて窓の外を見ると巣にじっと座って卵を温めている親の真ん丸な目と視線がかち合ってしまって、お互いがどぎまぎしたことがちょくちょくあった。

巣は窓ガラスから1mほどしか離れていないから、書斎に座っているボクとの距離も推して知るべしで、ホントに近かったのだ。
初夏ともなれば窓は開け放つのだが、さすがに気を遣って窓は開けず、そのうち、あまりにこちらを気にかけるそぶりを見かねてブラインドを下ろしてボクの姿が相手に見えないようにまでする始末だった。
薫風を閉ざされたボクはとんだとばっちりに戸惑ったが、野生のお母さんの健気さに敬意を表したのだった。

嵐の時など、ブラインドを指で押しのけてそっと巣をのぞくとお母さんは雨に打たれながらもじっと座り続けている姿が目に入って、ちょっと胸を揺さぶられる思いを感じたものだった。
あの時が最後で、ハトのお母さんはやっぱり落ち着かなかったんだと思う。翌年からは姿を見せなかったが、お陰でボクの方は書斎に薫風を思いっきり取り込めるようになったのである。

生き物が命をつないでいく様を間近にすることが出来るのは稀なことだと思う。
相手の目ざわりにならない範囲でそっと観察したいとも思う。
来春はカツラの木に少し注意を払おうかと思う。
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